Time Synchronicity

藍乃音

EP4.置き去りの想い

シャンディーに着くと、すでにいつもの席に莉緒が座っていた。

「やっと来た!大希!遅い!」

莉緒の期限は悪そうだ。
連絡を受けてからそこまで時間が掛かってないようだが、先に自分が着いていることに腹を立てる人種なのだ。

「そうかな?仕事終わってから直行したんだけどな。莉緒が早すぎるんじゃないか?」

事実をありのままに伝えたが、これが良くなかった。

「ねぇ、時間見た?メッセージ送ってからかなり時間が経ってるけど?大希は4時間もトイレにもいかないんですか?」

「いや、トイレには行くけど電話なんて職員室の机に置きっぱなしだからな。返信するのにも無理があるよ。」

「あー!また始まった!そうやっていつも・・・えっ?」

ヒートアップしてきた莉緒はどんどん声を大きくしていったが、大希をジッと見た瞬間に何かに気づいた表情になった。

「どうした?俺の顔になんか付いてるか?」

「ん?いや、なんでもないの。それよりご飯!頼も?」

「わかったよ。」

さっきの言い争いは嘘のように鎮火され、何事もなく食事を終えた。

「ねぇ大希、帰ったらメッセージ送るから見て?」

「なんだよ急に・・・今言えばいいじゃん」

「いや、今じゃないほうがいい気がするの。私もどう伝えたらいいか考えたいし」

「なんか気になるな・・・」

「いいから!じゃあね!」

そう言うと伝票を持って急いで店を出てしまった。
支払いに関しては交互に払うということが決まっていたので特に気にも留めなかったし、一度こうすると決めたら絶対に曲げない性格だったので後を追うこともしなかった。

「久しぶりに会ったけど変わらないな。こっちの世界では相変わらず毎日会っているんだろうけど。」

遠距離恋愛などで久しぶりに会った感覚とは全く異なっていた。
莉緒のことは完全に区切りをつけていたのだ。
しかし、再び会うとなると妙な感覚に陥る。

「昔の俺はあの莉緒が好きだったんだな。本当に不思議な感じがするな。」

懐かしさを感じつつ、最後の言葉が気になっていた。

「後でメッセージを送るって行ってたけどなんだろう・・・」

莉緒の目は全て見透かしたような目だった。
ただし、何を言っても行動を変えることのない莉緒相手には、メッセージを待つしかなかった。

「再会して突然これだもんな。何も考える暇さえ与えてくれないな。」

そう言いながら、大希も帰路につくのであった。

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