オルトロス・ノエル

つかっちゃ

注目、そして魔力量

俺の魔力測定に関する噂は瞬く間に学園に広まった。
何せ伝説の勇者と同じ15個、しかも前例の無い台座までもが変化したのだ。

世界を救った勇者の絶大な魔力すら測りきったその台座に置ける信頼は厚く、俺が何らかの仕掛けを施したのでは?という嫌疑もかけられなかった。
しかし周りからは、まるで珍獣を眺める様な視線やどこか懐疑的な視線などに晒されて居心地が悪いったらありゃしない。

今は休み時間だったので外の空気を吸いたくなり中庭に居たのだが、纏わり付くような視線のお陰で全くリフレッシュしなかった。


「ご機嫌いかがですか、有名人さん?」
「………イスナーンか」

 ベンチに腰掛け果実水をチビチビと飲んでいた俺の後ろから声をかけてきたのは、今朝ぶりのイスナーンだった。
騎士然とした雰囲気の中に、どこか茶化すような空気を醸し出しつつ隣に腰掛けてきた。

「………どうもこうも無い。もとから招待枠で“招待者”として変な視線があったと言うのに、今回の件で更に悪化した。居心地が悪過ぎる」

遠目からチラチラしてくるくらいならはっきり俺の所にくればいいのに、今こうしている間にも廊下の影から女子生徒数人の視線を感じる。

「ははは!それはご愁傷様。でも仕方ないだろう?彼の勇者ですら台座が光ったなんて文献は残ってないし、少なくとも魔石が15個も光った時点で同等って言うことが証明されてしまっている」
「はぁ……確かに前に学長からもそう言われたが、俺は魔法がまだ使えない事は変わらない。ただ魔力が多いってだけでここまで的になるか普通?」
「魔法が使えないっていうのは時間の問題だろう。なんでここまで騒ぎになってるか、実はもう一つ理由がある」

イスナーンは一旦間を開けると話した。


「君の魔力が無属性だからさ」
「……ああ、そういえば無属性は学長しか使い手が居なかったんだったな」
「そう。学園長はその魔法のセンスと頭脳から今では賢者と言われるほど革新的なアイデアをこれまで世に送り出してきた」


彼曰く、学園長はここ250年以上変わっていないらしい。自身の体の時間を遅くし老化を抑える魔法で、これまで何世代と優秀な魔法使いを世に送り出し、自身でもその長い時間を使い、これまでの魔法式の改良、世界初の魔導具の開発、そのノウハウも世に広めたと言う。

「そんな学園長と同じ属性の魔法使いが、しかも魔力が勇者と同等レベルと来た。誰だって興味を持つさ」
「……はぁ……面倒くせぇ」
「まあ、暫くすれば熱りも冷めるだろう。ノエルの話題も絶えないがもう一人、同じクラスに規格外が居ただろう?そっちにも話題の矛先が向くだろう」
「………シモンか」
「そう。君のお陰で話題にまだ上がってないけど、彼も学園長と同等の魔力量を持ってる。君の噂が冷めるのも時間の問題さ」


シモンとは関わりなんてほぼゼロに等しいのだが時々彼の視線を感じる。
直近の事ならそれこそ魔力測定の時だ。
シモンは自分の魔力が学長レベルで、俺の魔力が更に多いのを見越していたかのような態度で接してきていたし、実際にその魔力量を測定された時にも一人だけまるでそんな事は知っているとばかりに飄々としていた。

「………分からない奴だよな」
「分からない奴?」
「シモンの事だ」
「確かに、彼ほど謎めいた生徒は見かけないな。まぁその内彼もノエル同様にすぐに注目の的になるさ」
「あ〜、さっさとシモンにスポットライトが向いてくれ…」

俺は力なく項垂れると、隣に座るイスナーンは快活に笑った。





******************





次の日。

俺とシモンは学園長室に呼ばれていた。

「───まさかシルバーから二人も金の卵が発掘されるとはねぇ」

ケイティ学長は朝のコーヒーを片手に先日の魔力測定の結果を見ていた。あの測定器、実は学長室の隣にある“立入禁止”と書いてある部屋の魔導具と繋がっていて、学長自ら手がけた複写機なる物と連携されていてその結果が数値となって出て来るそうだ。


コーヒーを1杯飲み干すと、学長はまず一枚紙を見せてきた。
その紙はただの紙ではなく、中心部を除いて細かい魔法陣がびっちり書かれていた。

「これは?」
「ある一般人の魔力量結果さ」

その紙には【121】という3桁の数字が書かれていた。

「その121という数値、これが世間一般で言う平均魔力量なんだ。そして次」

今度は【400】と書かれた紙を見せた。

「こっちはこの学院のゴールドクラスの平均魔力量」
「一般人の3.3倍ですね」
「うん。この学院はね、一応国内一の教育機関でもあるし優秀な生徒ばかりなんだ。だから平均して魔力量3.3倍という脅威の数値が出てる」

そしてまた紙を見せた。今度は一気に増えた。

「1340ですね」
「この測定値は今の3年生の主席の生徒の魔力量さ。あの装置の魔石で言えば9個光らせる量ね」

次に見せられた数値は更に跳ね上がった。

「……7468」
「これは私の魔力量。一応この国でも、世界的に見てもトップレベルなのさ。そしてこれがキミらの魔力量」

それぞれに渡された魔力量を見て俺は、

「これ機械壊れてるんじゃないですか??」
「…私も目を疑ったわ」


シモンの持つ紙には11000。


そして俺の持っている紙には。


「……流石に75000はおかしいでしょ」
「あ、因みに勇者は35000あったらしいわよ」


絶句するしかなかった。

「オルトロス・ノエル」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く