オルトロス・ノエル

つかっちゃ

生活一変

この日は自己紹介をしてお開きとなった。
人によっては友人作りに励む者、勉強の予習を始める者など様々だった。

しかし俺は特に何かやる事も無いので、一旦学生寮に向かう事にした。学長には「あぁ、君の身の周りの物はこっちで買い揃えて学生寮に置いておいたから!」と言われたが、あの人はなぜこんなにも親切なのだろうか?

兎に角、学生寮に向かって運動のしやすい服に着替えてその後はトレーニングをしようと思う。



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「ここが………俺の部屋……?」

自分の部屋を探し出すのに15分以上掛かってしまった。広すぎるのが悪いのだ。

無駄に豪華な学生寮に入ると正面カウンターに立っている受付に名前を言うと、部屋の番号を教えてもらったのだが如何せん部屋が多すぎる。

多すぎてちょっとした迷宮の様で順番に辿っていくのだが、明らかに奥過ぎる場所に向かっているのだ。
歩き続けて行き着く一番奥の通路にようやく俺の部屋の番号を見つけたのだが、扉からして他の部屋と比べ重厚感が違う。一体どうしたというのか。


もしかして間違った場所なのかともう一度確認するがやはり言われた部屋だった。少しの畏怖を抱きつつ扉に手を伸ばし思い切って開いてみると、真正面には大きな窓があり寮の向こう側に広がっていた綺麗な湖を一望できた。
足を踏み入れると左側には広々としたキッチンがあり、そのすぐ近くに大理石のテーブルが設置されていた。
右側には小洒落た螺旋階段が続き、そこを登り二階に向かうと巨大なベッドがあった。光を取り入れるように吹き抜け窓が設置されていて、そこからは夜には星空も見えるようになっていた。

「……これ、ただの学生相手には豪華すぎないか?」

学長が言っていた通り生活用品もしっかり取り揃えてあったのだが、家具や食器、衣服にも相当なお金を掛けているようだった。

ここまでされると流石に怖くなり一度学長室に向かうと留守にしていたのだが、前に森の中で語りかけてきた魔法でメッセージが飛んできた。

『今はちょっと会議があってね、君の事だから私の部屋の前にいるのだろう?』
「…居ますけど。流石にあんなに豪華な物使えませんよ」
『良いんだよ。君には将来的に私なんかより有名になってもらうんだから、それに対する投資だと思ってくれればいいさ』
「学長がどの程度有名なのか俺には分かりませんけど、俺はそんな事になる事は無いですよ」
『ふふ、そうかな?まあそういう事で自由に使ってね。あ、そうそう、街に行って何か買い物をする時にはテーブルの上に置いてあるカードをお店の人に渡せばそれで買えるから、よろしくね〜』

そう言い残して脳内に感じていた学長との繋がりが消えた気がした。





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昨日は寮(?)に戻って、窓の外に広がる広い敷地で一人で剣の鍛錬もそこそこに、寮の食堂で夜食を摂ってそそくさと寝た。
夜食もやはりと言うべきか圧倒的に豪華だった。幾ら名門校、王立だとは言えこれはやり過ぎだと思った。


そして次の日を迎えた。
ベッドが余程良いものだったのか昨夜食べた牛肉のステーキが良かったのか定かではないが、これまでとは全く違う気持ちの良い目覚めだった。
2階から一階の巨大窓を見下ろすと、湖にキラキラと反射する朝日がとても眩しい。取り敢えず顔を洗うかと洗面所に向かって、鏡の前まで来ておいて、やっぱり湖で顔は洗うかと巨大窓を開き外に出た。

湖はあり得ないほど透明度が高く、自分の前は水深5m程はあるだろうに底が透けて見えていた。その綺麗な水で顔を洗う序でに飲んでみたのだが。

「………美味い…」

あの屋敷でも毎朝顔を洗ったり水分補給で庭の噴水を使っていたがあんなもの比にならない。一度飲むと体が自然と欲するような美味さだった。


これまでは伯爵家の者でありながら貧民のような生活をしていたのに学園に来て、まさかこんなに生活が一変するとは思っても見なかった。
これだけのいい環境に呼び込んでくれた学長の為にもこれまで以上に特訓に精を出し、勉学でも励み、一人前の大人になって少しでも恩を返せればと思う。


寝癖のついた長い左の髪を結い、制服に着替えると気合を入れ直し、登校するのだった。




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