オルトロス・ノエル

つかっちゃ

勇者と俺の魔法。そして決意

「無属性、ですか?」
「そう。ただ君の魔法はかなり特殊なようで、私の判定間違いじゃ無ければ何故か最初に使える魔法がいきなり最上級レベル、もしかしたら以上の難易度の魔法になっている」
「最初から最上級………?そんなことってあり得るんですか」
「初めから最上級とは私も初めて見るケースだ。でも現に君がそうなっているように見えるね」


無属性魔法。
どの属性にも属さないため“無”の名を冠している魔法。
そもそも無属性魔法の適性がある人自体が珍しく、解析も未だ全体の43%しか進んでいないと言われている魔法が、俺にはあるらしい。

ただ、どういう訳か魔法解除の為の最初の魔法が最上級クラス。

普通、下級の魔法を練習して使えるようになると、その後もその属性がどんどん解除されていく。鍛錬を積み重ね、下級から中級、上級、そして最後に最上級。
一般の魔法使いは精々が中級止まり、才能があるものは上級まで使える。最上級ともなれば歴史に名を残すだろう。

あの時の決闘の時にジュディが使用した分身を作る魔法と剣を握り潰した魔法、あれも恐らく最上級魔法だろう。本人曰く、最上級の魔法はかなり頑張ったと言っていた。
あの天才ですら“かなり”と言った事から最上級は本当に使用が難しいのが伺える。


そうやって魔法について考えていると、学長のさっきの発言が気になった。

「……そういえば、さっき俺の魔力が詰まっていると言っていましたが。これでも俺は一日と欠かさず魔力は練ってきて今じゃかなり体内循環が滑らかにできるようになりました。自分じゃ詰まっている感覚が無いのですが?」

学長はそれを聞くと苦笑いをしながら口を開いた。

「それは単純に君の魔力の総量が多すぎるからさ。一応これでも国内じゃ一番強い自負もあるし魔力も多い自信があったんだけどな…今の君には私の魔力の5倍以上の魔力が備わっている」
「………はっ?」

5倍だとか多すぎるだとか俺にはよく分からない。それが顔に出ていたのか学長が新たに説明した。


「分かりやすく言うと、平均的な魔法使いの魔力が1だとすると。そうだね、君の弟君が800。私が5000。君は25000を超えている、そのくらいの魔力さ」
「……いやいや、ありえない」
「でも現にそうなのさ。多分だけど最初の魔法が最上級クラスっていうのが関係してるのかも。それと毎日魔力を練る訓練だね」


魔力を練ると魔力総量が上がりやすくなり、尚且つ魔法発動も滑らかになる。しかし魔力を練る訓練といえば殆どの人が鑑定の儀までには終えている。なぜなら魔法が使える位に、魔力が扱えるようになるのが早いからだ。魔法が使えるようになれば、やはりそういう目にみえる力を鍛えたくなる。


だけど、そうか。
俺には魔法の才能があったのか。なら、なんで。

「………なんで、あの時の鑑定で何も出なかったんだ」
「もしかして素質鑑定の儀かな。多分だけど、君の高レベル過ぎる魔法に対して鑑定の魔法がレベルが低くて、その程度を測れなかったんだと思う」

そういうと、学長は椅子を降りて近くの本棚からある一冊の本を取り出した。表紙は古ぼけていて何が書かれているのかさっぱりわからないその本を、徐に開くとそれをこちらに向けて渡してきた。

「それは勇者の生い立ちについてかなり詳しく乗っている本でね。当時の勇者と最も親しかった友人の貴族の使用人が後世に残そうと書き記したものらしい。右の項の上から7行目を見てほしい」

なんでここで勇者が?と思ったが言われた通りそこに目を落とした。





────勇者様はなんと鑑定の儀にて“才能無し”と判定されたらしい。後からそれに関わった鑑定士たちを問い詰めると、何も見えなかったとの事。当時勇者様は確かに魔法が使えずに剣一筋に生きていたともご主人様から伺いました。しかし血の滲む努力によって圧倒的な魔法の才を発現させ────────




「見たかい?まるで君の生い立ちにそっくりなのじゃないかい?」
「………」
「初めから強すぎる力の素質を秘める者は、それを使いこなすという高い高い壁がそびえたっている物なの。もしかしたらこれまでにも凄い力を秘めた子どもたちが居たかもしれない。その全員が“まだまだできる”と信じて鍛え続けた人がもっと居たのなら、君のような人生を辿る子が減るかもしれない」

「でも、皆が皆そうじゃない。目に見えて分かる素質なら努力しようと思うだろう。目に見えないからこそ諦めちゃうんだ。だけど君は違った。自分は強くなれると信じてこれまでやってきたのだろう。そんな君の鍛錬の手助けをしたいと思って招待したのさ」
「…………俺は、まだまだ努力しないといけないのですね」
「そう。それは辛く険しい茨の道かもしれない。それをもし絶対に諦めないと決意してくれるなら、学園が誠心誠意、君たち入学生をバックアップしよう!」


入学するか決めあぐねている俺に、学長はゆっくり手を差し伸べてくれた。
ここまでさせておいてぐだぐたしてる方がどうかしている。

「学長。決めました」
「ほう、その決意を聞かせてもらえるかい?」

学長は少しだけ悪そうな顔でニヤリと笑った。

「俺はこの学園で、魔法を絶対に使いこなしてみせます。勿論体術、剣術も。俺みたいな人が増えないように、弱い立場の人たちを守れるくらい強くなります」

俺の様に一切使えないというのは稀な例でも、やはり一定数魔法が使えない人というとはいる。使えないと言っても発動そのものはできるが、威力がほぼ0に等しいという例が大多数だ。そしてそういう人はただ人並みに魔法が使えないというだけで迫害されることも少なくない。

俺は、そんな人達の希望になって上げられたら良いと思う。

「よく言った!!それじゃあ改めて────────ようこそ、サンドロス学園へ!!」

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