オルトロス・ノエル
サンドロス学園、そして学長
「────ここが、サンドロス学園か。…………デケェな」
どこまで見渡しても端が見えない。圧倒的敷地を誇る王国最大級の学園を目に、ノエルは立ちすくんでいた。
******************
家を追われてこれからする事も特に決めていなかった俺は、紹介状を手に入れてからの行動は早かった。
さっさと荷物をまとめ、と言えるほどの荷物も無く私物は自作の木剣のみなので、それを手に山へ入ると少し大きめの魔獣を狩り、冒険者ギルドに売り払った。
そしてもともと貯めていたなけなしのお金で服を揃えると、近くの透き通った清流で全身の汚れを落とし、決闘の時にできた怪我を薬草で消毒し包帯を巻き、服を着た。
決闘の時に片方だけ魔法で飛ばされ、左だけ長くなっている髪の毛も切るのが面倒なので編んで纏めた。
そうしてある程度の見た目を整えると、学園のある王都中央部に向かった。
やはりと言うか何というか。
服などを買い揃えるときに店の店員から受けた視線は冷たいものだった。
まだ服を買わせてくれたあの店はマシか。
なにせ服を買うだけに4店舗も回ったのだ。最初の3店はそもそも店にすら入れてもらえなかった。
元伯爵の息子だったばかりにすぐに勘当されたのが伝わったらしい。下手に施しを加えて伯爵家に変に思われるリスクを避けたいのだろう。
それが関係してなのか馬車すらも利用ができなかったので仕方なく徒歩で向かい、夜は盗賊に気をつけつつ野宿もした。
一週間もすればサンドロス学園の周辺にまでやってこれた。
ここまでくるといくら元伯爵の息子と言っても名と容姿は知られていなかった。
まああの誇り高き宮廷魔法師団長である元父親が不出来な息子の事など言いふらす訳が無いのだが。
入学するまでのあと一週間は宿で宿泊する事にした。もちろんお金が足りないので日中は魔獣狩りに勤しんだ。
******************
一週間後。
入学式当日なので少し早めな時間に学園を訪れた。その敷地のあまりの大きさに校門近くで立ち竦んだが、いざ中に入ろうとした途端。
『────やあ!来てくれたのだね!その場に留まってくれると助かるよ!』
あの森の中で聞こえた声が脳内に響いた────と思った瞬間、周囲の景色が変わっていて、アンティークな家具の映えているシックな部屋に来ていた。
突然の事に身構えたが、それは視界に入ってきた女性によって緊張は解けた。
「いきなりでごめんね、ここって校門から結構遠いから魔法で送らせてもらったんだ」
「……はぁ……?」 
これまで度々ジュディの魔法を見てきてはいたがそんな魔法見たこと無い。
「まずは自己紹介だね、私はこの学園の長を勤めているケイティさ。よろしくね」
まさかこの紹介状をくれた本人だとは。
学長と言う割にかなり若く見える。腰まで伸びる艶のある黒髪とその美貌が相まって、ただ椅子に座って肩肘を立てているだけで絵画のような美しさを感じる。
「俺はノエルです。ご招待ありがとうございます」
「ふふ、君の様な才能の卵を呼び込めて光栄だよ」
「それのことなんですけど、俺本当に魔法なんて使えません。学長には申し訳ありませんが、この名門校で出来る事なんて何もありません」
これは半分本音だ。
紹介状を貰ったとは言え魔法は本当に使えない。
もう半分の“やることもなかったし半分暇つぶし程度に来ただけ”とは言う必要もないだろう。
「ああ、それの事ね。こうして改めて目の前にして分かったよ」
「分かりましたか?俺には魔法なんて」
「だから違うってば。君の体内の魔力、多すぎて変に詰まっている様だね」
「────はい?」
魔力が詰まるとは一体どういう事なんだ?
「まあそれについては後で。まずは、そうだね。これを持って」
そう言ってケイティ学長が手渡してきたのは、複雑な紋様を刻んである透明な石だった。
「よし、それじゃあ少し気持ちが悪くなるかもしれないけど我慢しててね。魔力をこっちで引き出すから」
そして学長は徐に俺の腕を掴むと、一瞬だけ体内を弄られた感覚が、と思えば俺の手からその透明な石を取った。
石に特に変化はない。
「あの?一体何を」
「今のこれは君の魔法の属性を見たのさ。特別な手法を用いて属性を含む魔力のみを抽出して純粋な魔力だけ残した魔石でね」
「何も変化が見られなかったようですが。やっぱり俺には魔法は使えないようです。分かっていただけましたか?」
「いいや。魔力は感じた。君の魔法は私と同じ様だね」
「学長と同じ魔法?」
「────────無属性、さ」
どこまで見渡しても端が見えない。圧倒的敷地を誇る王国最大級の学園を目に、ノエルは立ちすくんでいた。
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家を追われてこれからする事も特に決めていなかった俺は、紹介状を手に入れてからの行動は早かった。
さっさと荷物をまとめ、と言えるほどの荷物も無く私物は自作の木剣のみなので、それを手に山へ入ると少し大きめの魔獣を狩り、冒険者ギルドに売り払った。
そしてもともと貯めていたなけなしのお金で服を揃えると、近くの透き通った清流で全身の汚れを落とし、決闘の時にできた怪我を薬草で消毒し包帯を巻き、服を着た。
決闘の時に片方だけ魔法で飛ばされ、左だけ長くなっている髪の毛も切るのが面倒なので編んで纏めた。
そうしてある程度の見た目を整えると、学園のある王都中央部に向かった。
やはりと言うか何というか。
服などを買い揃えるときに店の店員から受けた視線は冷たいものだった。
まだ服を買わせてくれたあの店はマシか。
なにせ服を買うだけに4店舗も回ったのだ。最初の3店はそもそも店にすら入れてもらえなかった。
元伯爵の息子だったばかりにすぐに勘当されたのが伝わったらしい。下手に施しを加えて伯爵家に変に思われるリスクを避けたいのだろう。
それが関係してなのか馬車すらも利用ができなかったので仕方なく徒歩で向かい、夜は盗賊に気をつけつつ野宿もした。
一週間もすればサンドロス学園の周辺にまでやってこれた。
ここまでくるといくら元伯爵の息子と言っても名と容姿は知られていなかった。
まああの誇り高き宮廷魔法師団長である元父親が不出来な息子の事など言いふらす訳が無いのだが。
入学するまでのあと一週間は宿で宿泊する事にした。もちろんお金が足りないので日中は魔獣狩りに勤しんだ。
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一週間後。
入学式当日なので少し早めな時間に学園を訪れた。その敷地のあまりの大きさに校門近くで立ち竦んだが、いざ中に入ろうとした途端。
『────やあ!来てくれたのだね!その場に留まってくれると助かるよ!』
あの森の中で聞こえた声が脳内に響いた────と思った瞬間、周囲の景色が変わっていて、アンティークな家具の映えているシックな部屋に来ていた。
突然の事に身構えたが、それは視界に入ってきた女性によって緊張は解けた。
「いきなりでごめんね、ここって校門から結構遠いから魔法で送らせてもらったんだ」
「……はぁ……?」 
これまで度々ジュディの魔法を見てきてはいたがそんな魔法見たこと無い。
「まずは自己紹介だね、私はこの学園の長を勤めているケイティさ。よろしくね」
まさかこの紹介状をくれた本人だとは。
学長と言う割にかなり若く見える。腰まで伸びる艶のある黒髪とその美貌が相まって、ただ椅子に座って肩肘を立てているだけで絵画のような美しさを感じる。
「俺はノエルです。ご招待ありがとうございます」
「ふふ、君の様な才能の卵を呼び込めて光栄だよ」
「それのことなんですけど、俺本当に魔法なんて使えません。学長には申し訳ありませんが、この名門校で出来る事なんて何もありません」
これは半分本音だ。
紹介状を貰ったとは言え魔法は本当に使えない。
もう半分の“やることもなかったし半分暇つぶし程度に来ただけ”とは言う必要もないだろう。
「ああ、それの事ね。こうして改めて目の前にして分かったよ」
「分かりましたか?俺には魔法なんて」
「だから違うってば。君の体内の魔力、多すぎて変に詰まっている様だね」
「────はい?」
魔力が詰まるとは一体どういう事なんだ?
「まあそれについては後で。まずは、そうだね。これを持って」
そう言ってケイティ学長が手渡してきたのは、複雑な紋様を刻んである透明な石だった。
「よし、それじゃあ少し気持ちが悪くなるかもしれないけど我慢しててね。魔力をこっちで引き出すから」
そして学長は徐に俺の腕を掴むと、一瞬だけ体内を弄られた感覚が、と思えば俺の手からその透明な石を取った。
石に特に変化はない。
「あの?一体何を」
「今のこれは君の魔法の属性を見たのさ。特別な手法を用いて属性を含む魔力のみを抽出して純粋な魔力だけ残した魔石でね」
「何も変化が見られなかったようですが。やっぱり俺には魔法は使えないようです。分かっていただけましたか?」
「いいや。魔力は感じた。君の魔法は私と同じ様だね」
「学長と同じ魔法?」
「────────無属性、さ」
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