オルトロス・ノエル

つかっちゃ

素質鑑定の儀

一年が経った。

俺は今日この日の為に4歳から3年間、全力で取り組んできた。
使えない魔法もいつかは使えるだろうと魔力を練るのも、体を鍛えるのも一日たりともやらなかった日は無い。

最近では森で魔獣と戦う事も始めて、全身傷だらけだ。屋敷の治療師にも最低限しか直してもらえないのでまだまだヒリヒリするが、それだけだ。命に別状があるわけでも無し、問題ない。


しかし今日は一応貴族として向かうので全身の傷を全て無くし、いつもなら絶対に着れないような服を着させられ、父アランとジュディ、俺と数人の使用人で鑑定をしてくれる教会まで馬車で向かった。
馬車の中でジュディに

「ノエルは僕の踏み台なんだから、踏み台らしく醜態晒すのよろしくね♪」

と笑顔で言われた時は少しイラッとしたが、実際ジュディの方が優れているし単純に返答するのが面倒くさかったのでスルーを決めた。



屋敷からおよそ30分程馬車に揺られていると目的の教会に着いた。
純白の壁に女神を模したステンドグラスの光の反射が印象的な綺麗な教会だ。王都に近い事もありかなりの広さを持つ。  

馬車から降りると数人のシスターが微笑みつつ出迎えてくれた。アランとジュディには心からの歓迎の意を感じ取れるが俺の方に向ける微笑みは、目の奥は冷めきっており一ミリたりとも歓迎してはいないようだった。

シスター達に奥の方へ案内されると、院長らしき人物が待っていた。


「ヴァンスター伯爵様、ようこそお出でくださいました」
「ジェイコブか。今日はよろしく頼む」
「はい。お任せください」


と、院長ジェイコブがシスターに目配せすると、奥の方から鑑定士が5人現れた。



素質鑑定の儀とは、名前の通りその人間の生まれ持つ素質を鑑定する儀式の事で、基本5歳から7歳の間に殆どの人が行う恒例行事だ。
その為に鑑定という希少なスキルを有する人に頼み見てもらうのだが、一人だけだと誤差が生じてしまうので最低3人つける事を義務とされている。

鑑定士達がいそいそと魔法の準備をし始めた。
相手の素質を覗き見るという特殊なスキル故にそれまでに掛かる準備が大事なのだ。
しかしそこは貴族の為に掻き集めた鑑定のプロ。一分ほどで準備を完了させた。


「それでは素質鑑定の儀を行います。まずは────」
「ノエル、お前からだ」
「…はい、父上」


────やっぱり俺はジュディの踏み台か。

などと心の中で一人苦笑して、言われた通りに前に出た。
鑑定士達は俺を見ても特に何も反応などない事からこの周辺の場所にいる鑑定士では無いようだ。

これなら公平な鑑定が受けられるな、そう思って大人しく立っているとあっという間に鑑定が終わった。



その鑑定が終わった鑑定士達は全員が揃って困惑してヒソヒソと会議を始めた。何故なら────




「ノエルさんの鑑定結果です。全会一致で────────何も表示されませんでした」

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