覚醒屋の源九郎 第一部

流川おるたな

竜の鱗

 ヴァルカンの周囲ではダークエルフを始め、アンズー、ナイトゴーント、パックの各種属も参加し、正にアザーム王国国民総動員で戦闘を繰り広げていた。
 ダークエルフは魔法、アンズーは雷撃、
ナイトゴーンは針攻撃、パックはこん棒で直接攻撃といった具合いで攻めはているが、ヴァルカンに効いている感じが全くしない。
 これは全てのドラゴンに共通している事だが、身体を覆う強靭な防御力持つ竜の鱗にある。
 普通のドラゴンの鱗でも下手な攻撃では弾き返されるほどの硬度があるのだ。
 それがエンシェント・ドラゴンともなると想像を絶する硬度になる。
 加えて六災竜は魔法が使えた。もちろん属性による得て不得手はあるが、火属性の火竜ヴァルカンなら火属性最強クラスの魔法を使える。
 口から吐く炎の威力も相当なものだ。既に半壊した城下町はヴァルカンの吐く炎によるところが大きい。
「これは予想を遥かに超える大物じゃのう」
 太公望が冷や汗を掻いている。
「ああ、オレもここまで大きいやつとやり合うのは初めてだ」
 悟空でさえヴァルカンの姿を見て恐怖心を感じているようだ。
「ほう、おぬしでも臆す相手がおるんじゃのう?」
「オレだって相手を見れば、強さがどれほどのものかある程度分かるさ。で、何か対策は考えてるのか?」
 相手が自分より強大である場合は、真っ向勝負をしても勝てる確率はかなり低くなる。ここは太公望の計略による奇襲的攻撃に期待したいところなのだ。
「情報が欲しい...觔斗雲で奴の頭上をグルグル回ってくれぬか?」
「よし来た!」
 素早く觔斗雲を呼び寄せ二人はヴァルカンの頭上へと向かう。
 アザーム軍は果敢に攻撃を続けてはいるが、中途半端な攻撃ではダメージを与えるは出来ない。逆に次々と犠牲者が出る一方であった。
「悟空よ奴の鱗が無い部分を探すのじゃ」
「ああ、分かった」
 最初の注文通りヴァルカンの頭上を中心に周囲をを飛び回る。
 直ぐに太公望がある事に気付く。
「ちっ、こやつ小さな声で魔法の詠唱をしておる。やばい魔法が来るやも知れん一旦離れるぞ!」
 二人はヴァルカンに近いアザーム軍兵士達へ向かって叫ぶ。
「全員引けーーーっ!とんでもない魔法が来るぞーーーっ!」
「とにかく此処から急ぎ離れるのじゃ!」
 声が余り届いていないのか、必死に叫ぶも兵士達の反応が鈍く動きが遅い。
 回避するには到底間に合いそうにない。
「悟空、上を見よ。魔法が具現化しつつある」
「マジか!?どうする?」
「わしが今から宝貝を上に投げる。その宝貝事態を全力の神通力で巨大化させるのじゃ」
「ああ任せろ」
 太公望は宝貝を巾着袋から取り出し、魔法が具現化している方向へ真っ直ぐ投げる。
 すかさず悟空は右手の人差し指どう中指を額に当て、投げられた宝貝に神通力をかけた。

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