覚醒屋の源九郎 第一部

流川おるたな

アザーム王ダリク

「おほ〜!本当に美味そうなもんばっかだな!」
 悟空がヨダレを垂れながらはしゃぐ。
「クソ猿、そんな品性のカケラも無いダークエルフはこの世に存在しない。少しは謹んでくれないか?」
 ミリシャが真冬の氷の様な冷たい視線を送る。
「全くうるさい女だな。これで良いか?」
 ヨダレをナプキンで拭いてキリッとした顔を作る。
「ああ、ずっとそうしておいてくれ。ま、猿には無理だろうけどな」
「てめえ...」
 何か言い返すかと思いきや、不快な顔をしただけで珍しく黙り込む悟空。
 太公望から大きな鶏肉の焼き物を思いっきり口の中へ突っ込まれていたのである。
「もう喋らんでいいから早く食べろ。わしもいただくぞ」
 その言葉を皮切りに三人は食べ始めた。
 ミリシャの食べ方も上品とは言い難かったが、太公望と悟空のガムシャラな食べ方に比べれば上品にさえ見えた。
「美味い!美味いぞ〜これは!仙桃など足元にも及ばんのう」
「美味いとしか言えんが本当に美味いな!今までこんなん食った覚えはない!」
「そうだろそうだろ!この店の味は天下一品だ!」
 休む間もなく食べ続け、テーブルを埋め尽くしていた料理は僅か10分足らずで三人の胃袋の中へ入ってしまった。
「ふい〜食った食った。ミリシャよ、おぬしの言った言葉は間違い無かったぞ」
「ハハッ、満足したみたいだな」
 暫く満腹感で満たされゆっくりしていると、店の入り口にジオンが立っている事に太公望が気付く。
 ジオンも太公望に気付き、テーブルに歩み寄って来た。
「謁見する許可が下りたぞ。王は早急にお前と会いたいそうだ」
「では早速会いに行くとするかのう。悟空、巾着袋の中に戻れ」
「あいよ」
 悟空はテーブルの下へ潜ると変化を解いて小さくなり、素早く巾着袋の中に入った。
 ミリシャが会計を済ませ、4人はアザーム城へ向かう。
 城門前へ着き門兵にジオンが告げる。
「謁見の間へ行きたい。門を開けよ」
「ハッ!ジオン様了解いたしました!」
 顔パスである事と、門兵の態度からしてジオンがそれなりの地位に就いていると把握できた。
 程なく門が開き中へ入ると薄暗い大広間となっている。中央正面に2階へ続く一直線の階段があり、その先にある扉のある部屋が謁見の間となっていた。
 謁見の間の扉を二人のダークエルフの兵士が開き、王の御前へと辿り着く。
 玉座には威風堂々としたアザーム王ダリクの姿があった。
「ダリク様、太公望を連れて来ました」
「ご苦労であったジオン、ミリシャよ。下がってよいぞ」
「ありがたきお言葉!」
 ジオンとミリシャは太公望の後方へ下がる。
「お初にお目にかかる太公望と申します」
 太公望は臆せず挨拶した。
「ジオン達からある程度話しは聞いているが、先にワシからいくつか質問させて貰うぞ太公望殿」

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