覚醒屋の源九郎 第一部

流川おるたな

城下町

 街中に足を踏み入れてからミリシャが説明する。
「城下町はどんな種族でも無許可で入れるが、城には門番が居て許可がないと入城できないんだ。ジオン達も許可取りに時間が掛かるだろうから、あたいらもゆっくり歩いて行くよ」
 了解の素振りをしながら、太公望は喧騒のある街並みを観て感動していた。
「賑やかで活気のある街だのう。国としてもしっかり機能しておるのだな」
「あたい達の種族構成を聞いて無法地帯で陰湿な雰囲気を想像してたんだろ?」
「悪いがそんなところじゃった。しかしわしの予想は180度違ったわい」
 城まで一直線に続く大通りの両側には、造りはそれほど立派では無かったのだが店や宿屋も見受けられた。
 現代人間界にある電気、ガス、水道などのライフラインがあるような環境とは程遠いが、ファンタジーな世界でここまで文化が発達してれば革新的とさえ言えよう。
「これは仙人界も見習わないといかんのう文化が二、三歩先を行っておる」
「城を始めとした建築の技術や文化の知識は我々ダークエルフが築いたんだ。凄いだろ〜」
 ミリシャは得意になって話した。
 いつの間にか巾着袋の中からひょこっと顔を出して街並みを見ていた悟空が口を挟む。
「俺が昔ここを訪れた時にはもっと田舎な感じがしていたけどな。立派になったもんだぜ」
 身体が小さくなり声の音量まで小さくなっていた為か、太公望には悟空の声が届いたがミリシャには届かず気付かない様子だった。
「これこれ、あまり顔を出すで無いぞ。王に会う前にここで事を起こしては元も子もないからのう」
「ヘイヘイ」
 雑な返事をして巾着袋の中に引っ込む。
「あそこの店で飯でも食べながらジオン達を待つよ」
「丁度腹も減って来たところじゃ、どんな料理があるのか楽しみじゃのう」
 城門の20mほど手前に飲食店がある。この店は建物の造りが他と一線を画し立派に見えた。
 店内に入ると、ざっと20人ほど客席を埋めていたのだが、客の全部がダークエルフで、他の種族の姿は見えなかった。
 人間界で言うところの一流レストラン風である。
「つかぬ事を訊くが、この国の通貨はどうなっておるのかのう?」
「ここの地域では希少な宝石が発掘できる場所が多いくてな。アーザムでは様々な種類の宝石が通貨になってるよ...見てみろ」
 ミリシャが青透明色の美しい宝石をテーブルに乗せて見せた。
「ほう綺麗じゃの。しかしこんな宝石などわしらは持っておらんのじゃが大丈夫か?」
「ハハ、だろうな。もちろん今日はあたいの奢りだよ。だからしっかり王との話しをまとめてくれよ!」
「それはありがたい、安心してご馳走になるとするかのう。ところでどんな料理があるのじゃ?」
 そんな折、巾着袋の中から腹の鳴る音が微かに聴こえたのであった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品