覚醒屋の源九郎 第一部

流川おるたな

アザーム王国

 ジオンが言うにはダークエルフの国は、ゲートのある場所から数百キロ離れているらしく、暗くなってしまう前に途中で手頃な場所を見つけ、一行は一晩の休息を共に過ご過ごす事にした。
 例の古い話の負い目を感じていたのか悟空は、自ら食糧を調達する役回りを申し出て近辺の森に入り、短い時間で5頭の牙豚(きばぶた)を狩り丸焼きにして皆んなに振る舞う。
 一行はその丸焼きの並ぶ焚火を囲み食した。
 その間、太公望はジオンとカルンから四大精霊やダークエルフの国について情報を聞き出す。
 四大精霊の国々は地理的にかなりの距離があり、それぞれの国王は曲者揃い。その国王達を説得するのは困難であろうという話しだった。
 ダークエルフの国の名は「アザーム」。
 国民は主にダークエルフ、アンズー、ナイトゴーント、パックの種族で構成されていて、小さい揉め事は多いがそれなりに上手くいっているらしい。
 よくまあそんな種族の集まりで国がまとまっているものだなと太公望は感心した。
 全員の疲れがピークに達していたのか、その晩の就寝は早かった。
 翌日の朝を迎え早々に出発する一行。
 途中休憩を取りつつ8時間ほど飛び続け、小さくだがようやくアザーム城が見えて来た。
 近づくにつれ、大きくは無いが賑やかそうな城下町も見えて来る。
 全体的な地形構図は、一番高く灰色の壁が特徴的なアザーム城を中心として周りには城壁があり、その周りに城下町、またその周りには森が広がっているといった具合である。
「此処からは地上に降りて、あたいが太公望と猿の案内役になるよ。城の門近くの飲食店で待機しておくから、ジオンとカルン達は先に行って王に許可をもらって来て」
 ミリシャがジオンにそう伝えたあと、太公望の方へ移動し同じように説明する。
 城下町と森の境界付近で太公望と悟空、ミリシャは地上に降り、他の者達はそのまま城まで飛んで行った。
「ふ〜、觔斗雲に乗っているだけであったが、これだけ長時間だと流石に疲れるのう」
 元々日頃から身体鍛えていない太公望にとってこの旅路は相当堪えたようである。
 そんな姿を見て全く疲れを見せない悟空が言う。
「ハッハッハッ修行不足が丸見えだな。オレ様のように日々鍛錬を積まなければこの先は生きていけんぞ」
 此処ぞとばかりに茶化す。
「分かってはおるのだが、サボり癖がなかなか治らん。サボり癖に効く特効薬でも在れば良いのじゃがのう」
 こういった他力本願さが無くなれば、太公望はもっと偉大な仙人になれた筈である。残念な事に本人には野望が全くない。
「さぁお猿さん、小さくなって早く腰巾着の中に隠れて頂戴。城下町は直ぐそこなのよね」
「言われんでもやるから待ってろ」
 ミリシャに言われ、少し不満顔な悟空だったが一瞬で小さくなり、太公望の腰巾着の中へ飛び込んだ。

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