覚醒屋の源九郎 第一部

流川おるたな

条件

 悟空が洞窟の外に出ると、一団のほとんどは湖にぐったりとしてプカプカ浮いていた。
「何だつまらん、もう終わりか。止めを刺す必要も無しとはな」
 口笛を鳴らし觔斗雲を呼んで飛び乗り、湖に浮くダークエルフとアンズーを一体ずつ拾い上げ、湖の外に投げていった。
 全員を野原に集めると、自分の腕の毛をむしりフッと息を吹きかけると1本1本の毛が鉄の鎖となって地面に落ちた。これも神通力のなせる技である。
 その鎖で全員をササっと縛り上げたあと、遠くで岩に座り傍観していた太公望を呼んだ。
「おーいもう終わったぞ!こっちに来い!」
「うむ、今行くから待っておれ」
 そう言って悟空の下まで歩き着いた太公望は、ぐったりしているジオンの側に近寄った。
 そしてパシパシと掌で頬を叩き話しかける。
「おい、ジオン起きるが良い。お前に訊きたい事があるのじゃ」
 叩かれた本人がゆっくりと目を覚ます。
「チッ、またあの猿にやられちまったのか...何だ?俺から情報を引き出そうとしても無駄だぞ」
「お決まりのような会話は要らぬよ。では手っ取り早い法方でおぬしから情報を引き出すとするかのう」
 太公望はニヤッと笑い、悪いことを考えている顔になった。
「そんな顔をして何をしようと言うんだ?」
「な〜に、おぬしにはいくら拷問的な事をやっても無駄であろうから、おぬしが情報を話してくれるまで、そこに居る無慈悲な猿めに大事な仲間を一人一人消してもらうつもりでおるよ」
 ジオンの顔が歪む。
「猿も貴様も卑怯者だな」
「そうじゃな、確かにおぬしの言う通りわしは卑怯者じゃろうよ。だが目的のためなら手段を選んでおる暇は無いからのう」
「...分かった。ただし、条件がある」
「それも想定内じゃ。条件とやらを言ってみろ」
「情報を話した後で俺の命はどうしようと構わないが、他の連中の命は奪わぬと誓え」
 ふむ...と少し考えたあと太公望が口を開く。
「よかろう、おぬしまで含めて命までは奪わぬと誓おうではないか。では最初の質問じゃ。おぬし達は何故、人間界に行こうとしておったのじゃ?」
 一番肝心なところを直球で質問する。
 ジオンは覚悟を決め諦めたような面持ちで話し出した。
「我らの現王ダリク様のご子息であるイバシュ王子の力になるべく、ゲートを通り人間界に行こうとしたのだ」
「なるほどのう。王子のイバシュとやらはもう人間界に行っておるのじゃな。して、その王子は人間界で何をしようというのじゃ?」
「...妲己と共に人間界を支配するためだ」
「ふむ...」
 太公望は天才的な頭脳で、様々な考えを高速で巡らせ処理している。
 

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