覚醒屋の源九郎 第一部

流川おるたな

昼寝

「思い通りに事が運ばずに延々とムシャクシャする日々が続いてた。宛てもなくふらふらと旅をしていたある日のこと、ダークエルフの治める国にたどり着き、疲れもあって野原で昼寝をしてただけなんだが...そこにちょっかいを出して来る奴等が現れた」
 ダークエルフ達は黙ってというか、我慢して話を聴いている。
 どうでもいいがアンズーも言葉が分かるのだろうか?
 太公望が話を続けるよう悟空に手と目で促す。
「ダークエルフの属性はどちらかというと悪で攻撃的だろ。直ぐに出て行けとケンカ越しに言われたら、当時のオレは溜まりに溜まった怒りを暴発させるしか選択肢が無かったんだよ。まぁここの連中の中にも当時の暴れっぷりを観た奴が居るかも知れんが...こいつら変に仲間意識が強いもんだから、どれだけの人数をぶっ飛ばしても次から次に新しい奴が現れて攻撃されたよ。気付いたらラスボスの王が目の前に立ってやがった」
 ジオンの隣に居る少し老け顔の者が口を開く。
「猿、覚えていないと思うがワシはカルンという名で、その時最初に声を掛けた者だ。貴様が昼寝をしている間に何が起こっていたか知らんだろ?」
「100年以上経ってるんだぜ。お前の顔は覚えてないし、昼寝してて何が起こったのかも知らん」
 悟空は記憶力の良い方では無いが、流石に100年という年月は余りにも長い。悟空で無くても記憶に残っていないのは致し方ない事であろう。
「そうか少々残念だ。貴様と違いワシは鮮明に覚えているからな。では何が起こったのか説明してやるからよく聞け」
「いやオレ様の話も終わってないし、別に聞きたくも無いが聞かんとダメか?」
 面倒臭そうにして悟空は太公望に確認する。
「そうじゃな〜もしお前に完全に非があるようなら、わしとしても色々考えなければならんからのう」
 太公望は元始天尊に急遽呼び出され、孫悟空を引き連れて精霊妖精界と人間界の危機を救うよう命じられ今に至っている。
 何故、燃灯道人(ねんとうどうじん)や楊戩(ようぜん)のような戦闘力と知力の高い二人では無く、人格的に問題のある孫悟空を同行させたのかが分かって来た気のする太公望であった。
 カルンがしかめ面で話し出す。
「貴様は昼寝をしている間に寝相というか夢遊病というか、爆睡しながら動いてたんだよ。それも覚悟しやがれ元始天尊!と寝言を吐きながら如意棒を伸ばし周りにいた者達を容赦なく吹き飛ばし、運悪く撲殺される者までいた」
 カルンの説明を全て訊いた訳ではないが、これは悟空に弁解の余地は無いかも知れないと太公望は思うのであった。

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