覚醒屋の源九郎 第一部

流川おるたな

神坂雫&ナーラ

 さて状況整理をせねば。
「ところで、神坂さんとナーラさんは何故この場所に?」
 問うと神坂さんとナーラさんは何やらゴニョゴニョと二人で話し始める。
 話がまとまったのか、神坂さんが答えてくれた。
「え〜っとね。買い物帰りに歩いてたらこの付近で人間と異世界者が闘ってる感じがするってナーラが教えてくれて、二人でこの路地裏に入ろうとしたんだけど、路地裏の中がさっき居たダークエルフの造った見た目は普通の路地裏なんだけど異空間の壁みたいなのがあって入れずに...」
 そうか、イバシュってやつが異空間を解いたって言ってたのは俺と聞仲が闘ってた空間の事だったのか。
 さっきは聞仲に集中し過ぎていたからか、残念ながら異空間の中だったとは1mmも気付かなかった。
 道幅が急に狭く感じたのは異空間が解けた時で、異空間の中で闘ってたからあれだけ激しい戦闘をしても人が集まって来なかったんだな。
 神坂さんが続けて話す。
「歯痒買ったけど手前でずっとそわそわしながら待ってたら、何か音がして急に異空間の壁が消えて無くなって、やっと此処までで駆けつけて来れたんだよね」
 女性なのに危険から逃げるどころか逆に飛び込むのは凄い勇気だと素直に思う。
 泉音やみくるでもそうしただろうけれど...俺のまわりは強い女性が多いな。実に頼もしい限りである。
「あれ?でも神坂さんて、俺が妖精との契約者だって知ってたんですか?」
「仙道さんがお店を出た後でナーラが教えてくれたの」
「なるほど」
 ミーコが気づいてたからナーラさんも同じように気付いて不思議はない。
 折角なので質問を続ける。
「さっき聞仲を閉じ込めたのって魔法ですか?」
「魔法に近いけど魔法とは少し違って、水の力とでもいうのかなぁ。まだちゃんと理解してないのよね」
 みくるはシルフの風の力を受け継いでた。んで、神坂さんはウンディーネから水の力を受け継いでいる。四大精霊との契約者は精霊の力を受け継ぐ傾向があるのかも知れないな。あ、でも確認は必要だけれどノームのファムとの契約者である薬師寺藍里はサイキッカーだったような...
「仙道さん、いい機会だから契約者同士という事でお友達になれないかなぁ?」
 一人で長考に入ろうとした俺に神坂さんからの唐突だけれど願ってもない申し出。
「こちらこそお願いします!改めまして仙道源九郎です。源九郎って呼んでください」
「OK、わたしは神坂雫(こうさかしずく)。雫って呼んでね源九郎。あと敬語はお互いに使用しないという事で」
 新しい出会いがあると互いの呼び方や話し方で迷ってしまうケースが多い。だから、積極的に最初からこんな風に言って貰えると非常に助かる。
 そのあと雫と照れながらも握手を交わし連絡先まで交換した。
 水の力には一部癒しの力があるらしく、俺とミーコの回復までしてくれた。
「じゃあまたね〜」
 笑顔で手を振りながら去って行く雫とナーラ。
 まだ熟睡中のミーコを背中におんぶして我が家へ帰る俺であった。

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