覚醒屋の源九郎 第一部

流川おるたな

攻撃と防御

 初めて治志の悪鬼との闘いで経験した攻撃よりも、遥かに速いスピードで襲いくる連続攻撃を爪で弾いたり回避する超猫娘。
 身体能力だけ取れば、平常時の2倍以上の速さで動いているのかも知れない。
 問題は回避こそ上手くいっているが、果たして攻撃をぶつけてダメージを与える事が出来るのか。
 僅かな時間で数えきれない攻撃を繰り出している聞仲だが、なかなか仕留めきれずに少し苛立っているのが分かる。
 そんな中ミーコが唐突に何も無い空間を蹴り反動をつけ、今まで見た中で最速の攻撃を仕掛ける。
「紫電一閃爪紅!」
 一瞬ではあったが、爪が紅く染まっているように見えた。
 回避しようとした聞仲の頬が裂け血が飛ぶ。
 側に着地した刹那、脚を狙って飛びかかり横に薙ぎ払う。
 左脚を抉ることに成功し、また血がほとばしった。
 連続攻撃はまだ止まない。
 脚を攻撃した直後に地面を蹴って背中を斬りつけ、回転して後頭部にキックを浴びせ、その勢いでようやく聞仲の背中から離れた。
 ミーコが離れる直前の場所を金鞭が通り過ぎ空を切る。
 短時間で何という攻防だろう。
「やるじゃないかケット・シーの娘よ。少し驚かされたぞ」
 いやいや聞仲さん、トランス後の攻防はミーコの勝ちっぽいですよ。
 なんせ貴方は血塗れで猫娘は無傷なのだから。
「まだ強がってるなぁ聞仲〜!」
 勢いはあるが、トランスとかいう如何にも無理してる状態ありありのキャラが敵に突かれるのは...
「肩で息をしているな。そのトランス状態は身体にかなりの負荷が掛かっているんじゃないのか?」
 やはり常套句が出ましたか〜。
 早く蹴りを着けなければ、劣勢になるのは火を見るより明らか。
「へん!ご心配なく〜、次で決めてあげるよ〜」
 頼もしいぞ猫娘!
 ん、聞仲の闘気と言うか妖気の量が跳ね上がったような...背後にゴゴゴゴッと文字が見えそうなくらいの覇気を感じる。
 それが金鞭にも伝わったのか太さが増した感じが...
「忍者流、分身の術!」
 おお、そんな事も出来るのか!?ミーコが5人になった。
「やった成功〜。試してみるもんだな〜」
 こんな局面で試し技を出してしまうとはね。
 聞仲を包囲するように広がり、そのまま懐に飛び込もうとするが、金鞭の攻撃と防御が炸裂する。
 あっという間に2体が消されてしまった。
「紫電一閃爪紅ーーーッ!」
 残った3体の一斉攻撃!
 最初にあれだけダメージを与えた技だ。これは決まったと確信した瞬間。
 金鞭の恐るべき速さと破壊力で、残りの3体も簡単に粉砕され消えてしまった。
 そうこれで全部。
 あれ!?本体は!?
「はい、おしまーい!」
 何処からかミーコの声がする。
「っ!?」
 場所を特定できずにいる聞仲の真上、空中に居るではないか!
 そこから頭のてっぺんを狙って超スピードで突っ込むミーコ。
 攻撃が届かんとする直前で聞仲が気付き避けようと化物じみた反応でバックステップした瞬間。
「ザシュッ!」
 俺は背後から、心臓があると思われる背中の部分を妖刀村正で貫いた。

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