覚醒屋の源九郎 第一部

流川おるたな

マッサージ

 キャンプから帰った日の翌日の朝。
 目が覚め、ベッドから起き上がろうとする!?身体に激痛が走る!これはあれだ筋肉痛だ。
 ちょっとした日常動作をしようとしただけで全身の筋肉が悲鳴を上げる。ギャーッ!グォワーッ!こ、これが界王拳10倍の代償かーってな感じだ。
 修行で鍛えた分の痛みだろうけれど、ここまでの筋肉痛は生涯を通しての初体験。
 あまりの痛みに仕事になりそうもない。
 痛みを堪え、スマホで付近のマッサージ店を検索する。あった!事務所から3kmくらいあるが自転車で行けば何とかなるだろう。
 俺は早々に自転車でマッサージ店へ向け出発した。
 ペダルをこぐ度に太腿と脹脛に容赦なく激痛が走る。
 そんな苦しんで歪む表情を見てミーコは笑っていた。
「頑張った証だからしょうがないね〜」
「ま、まあな。修行のあとでガラントとの一戦もあったから尚更痛むんだろうよ」
 身体能力UPで人間離れした俺の肉体にも限界はあるのである。だけどこれが回復した暁には以前よりもっと身体は動いてくれる筈だ。そういうご褒美がなければ修行など無意味ではないか。
 マッサージ店に入り受付けを済ませて待合室で待つこと30分。
 店員の女性が俺を呼ぶ。
「仙道さん、仙道源九郎さーん」
 ひっさびさにフルネームで呼ばれた。「仙道さん」と名字で呼ばれた時に一瞬反応出来なかったほど、いや、作者も忘れて過去の文章を確認したほどである。
「そちらのベッドにうつ伏せになってお待ち下さい」
 案内する店員さんは女性だったが、マッサージをしてくれるのは...
「お待たせしました仙道さん、マッサージ師の神坂です。よろしくお願い致します」
「あっ、よろしくお願いします」
 女性だ!よかった〜。実はマッサージを同性にしてもらうと何だか落ち着かないのである。顔は見えていないが、声からしてちょっぴり大人な美人さんを勝手に想像してしまう。
「全身の筋肉痛と伺ってます。全身を隈なく揉み解そうと思いますが、それでよろしいでしょうか?」
「それでお願いします」
 さあ後はお姉さんの好きにしてくれたまえとは口が裂けても言えない俺であった。理由は簡単、変態と思われるに違いないからである。
 いよいよマッサージの始まりだ。
「うぉおお痛いっすーーーっ!」
 お姉さんに太腿を軽く押されただけで悲鳴を上げてしまった。いかん、洒落にならんくらい筋肉は疲労している。
「暫くは激しい痛みが伴います。頑張って我慢してください」
「わ、分かりました」
 大の大人がマッサージで悲鳴を上げるのはやはり恥ずかしい。次こそはグッと堪えてみようか。

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