覚醒屋の源九郎 第一部

流川おるたな

山キャンプ

 治志がUNOで10連勝を達成しようとする頃、目的の駅に到着した。駅は古臭く周りを見渡す限り自然でいっぱい。今回のキャンプは一応修行がメインなので出来る限り人気が無い田舎を選んだのだ。
 電車と他の乗客数人が見えなくなったのを確認してからミーコらと合流。
 直ぐに目的地の山へと歩き出す。
「電車の上はどうだった?」
「気持ち良かったよ〜、リアーネの風の盾で風圧も抑えてくれたから」
とミーコ。
「異世界で種族の違う者同士が話しをする機会は殆ど無いので、異種族の話しをする貴重な時間でしたね」
とルカリ。
「ミニョルも話せば愉快な人なので、異世界では考えもしなかったですけれど仲良くやっていけそうです」
とリアーネ。
「あっちでは悪者扱いだからな。だが気のいい奴も結構いるんだぜ」
とミニョル。
 電車の上で異種族同士の親睦は深まったようである。
 既に林に入り、勾配のある山道を歩く。
 泉音がちょっとしんどそうだ。文化系女子だから仕方ない。
 俺は身体能力UPのお陰で全然平気。
 治志は日頃から鍛錬しているので平気。
 みくるも体育会系で陸上やってるので平気。
 異世界者に至っては、浮いたり飛んだりしてるので全く問題なさそうだ。
 山中のどこでテントを張るかは決めていない。ただ修行に最適な場所を探しひたすら歩く。
 1時間半くらい歩くと平たい草原が見えて来た。好都合なことに近くに小川もある。
「みんな!ここにテントを張って昼食の準備をしよう!」
「ふぅ...着いてよかったぁ」
 泉音には山道が堪えたようである。
「ミーコとリアーネは悪いがここら辺を探索して来てくれないか?特に人がいないことを確認して欲しいんだ」
「OK!」
「任せてください」
 二人は快く引き受けてくれて、それぞれ上空に飛んで行く。
 俺、治志、ミニョルでテントを張り、泉音、みくる、ルカリに昼食の準備を任せた。
「キャンプって楽しいですね。源九郎さん」
 最年少の治志がそんなことを言ってくれた。
「お、治志が楽しんでくれてるのは嬉しいな〜」
 偏見かもだが最近の高校生は昔ほどアウトドアを経験してないと思い、自然を楽しめるのかなと密かに気にしていたのだ。
 面倒臭がると思っていたミニョルがテント張りを楽しそうにやっている。グレムリンってのは機械いじりが好きだからだろうか。
 テントを4つ張り終えた頃に、女性陣の調理場からカレーのいい香りがして来た。
 泉音は料理が得意なので味は保証されているだろう。逆にカレーを不味く作る方が難しいかもしれないが。
 ミーコとリアーネも帰って来た。ここら辺は人の気配は感じられないとの報告を受ける。
 全員揃い、大自然の青空の下で食べるカレーは最高だった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品