覚醒屋の源九郎 第一部

流川おるたな

閑古鳥

 ミニョルがそっぽを向きながら俺に手を差し出す。似合わない分可愛く見える。
「ミニョルもよろしくな!」
手を掴んでギュ〜ッとしてやった。
「お、おう」
ミーコも治志とにこやかに握手していた。
「ミニョル、怖がってしまってごめん!これからは仲良くしよう。よろしく!」
精神力UPの影響か、治志の人柄や雰囲気が少し変わったように感じられる。
「おう、よろしくな治志」
パートナー同士の心が打ち解けたようで実に微笑ましい。
「じゃあそろそろ帰ります。源九郎さん、この度は本当にありがとうございました!」
「大抵は事務所に居るからいつでもおいで」
 治志とミニョルは並んで会話をしながら夜道へ消えていった。
「ミーコ腹減ったな〜、今夜は牛丼にしよう!」
「源九郎の作る料理は全部美味しいからいつも楽しみなんだ〜♡」
 ヨダレが出ているのは見逃しておこう。
 こうやって波乱の開業初日が終了したのだった。
 
 “閑古鳥”とは“カッコウ”の別称らしい。
 カッコウの鳴き方ってどうだっけか!?
 開業して一週間経ったが治志が来て以来、一人のお客さんも事務所に来る事は無くずっと閑古鳥が鳴いている。資金は当面大丈夫だから焦っていないのだけれど、仕事が無いというのは個人経営者としては残念無念である。
 一昨日に治志が来て悪鬼を試してみた。今度は気絶せずに自分の意思で悪鬼を制御出来るようになったと喜んでいたが悪鬼を解いた後に疲労困憊になって大変だとも言っていた。
 因みに治志がやってる部活は剣道である事が判明。実家は剣術主体の道場を経営していて子供の頃から習っているとの事。そりゃ悪鬼の力も加わり剣撃が早いのも納得。
 そこで俺は刀の使い方を半日かけて指導してもらい、夕食をご馳走して仲を深めた。
 付け足しておくと俺のスキルが一つ増えた。遠距離攻撃が欲しかったので“攻撃魔法”を選択してファイアやブリザドのような魔法が詠唱無しで使用可能に。ハハハまた強くなってしまった。
 しかし、悪鬼戦を振り返ると身体能力底上げの必要性を感じる。勿論、日頃の鍛錬も怠ってはならないが、いつか選択肢に身体能力UPが出現したらば強化するとしよう。
 話しは仕事の話しに戻り、本日も事務所でタブレットやパソコンをいじったりして過ごしている。広告活動としてホームページだけでなく、ブログやFacebook 、Twitterなども初めた。YouTuberもおもしろそうなので現在ネタを思案中。
 窓の外を見ていると、女性が不意に事務所前の道路を右から左へ超絶なスピードで駆けていった。
 あのスピードって人間離れしている。ミーコ以上じゃないか!?俺の動体視力がなければ人間が通ったと判断できないほどの...
「こんにちはーっ!」
そのスピード女王が事務所を訪れた。

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