覚醒屋の源九郎 第一部

流川おるたな

グレムリン

 料理があらかた食べられた頃、コーラを飲んでいたはずのミーコはワインにハマってしまい酔っているように見える。
 ルカリの方はどれだけいった後かは知らんけど、ワインから焼酎にスイッチしていた。服が肌けているのが悩ましい、こちらはほぼ泥酔状態である事は間違いなく、ケラケラ笑いながらよりをかけてミーコと戯れている。
 泉音だが、いつもしっかりした性格を印象づける目はとろ〜んとしていて...紛れもなく可愛い。
 掛時計の針はPM.10:00に達しようとしていた。
 泉音とルカリをここに泊まらせたい気持ちは富士山のように山々だが、今日のところは色々な意味で遅れになる前に家まで送ることにしよう。実は俺も少し酔いが回ってるし...
「はい!みんな注目!」
意識はまだしっかりしているかも、みんなこっちを見てくれた。
「宴もたけなわであるけれど、そろそろお開きにしよう!」
「あ〜い」「は〜い」「そうだね〜」
素直でよろしい。
 全員で簡単に後片付けをしたあと、家は近くなので泉音とルカリを送り届ける。
この物件に決めた理由はこれもあったわけだが。
 呑み過ぎたせいか泉音の足が進まない。「仕方がないな〜」嘯きながら泉音を背負って歩く。妖精の二人もフラフラしながら浮いていたが、浮いていれば転ぶことも無いだろう。放っとく。
 空を見上げると珍しく満天の星空。泉音が会話出来る状態であれば...
「星が綺麗だね」
泉音が耳元で囁くように言った。
「なんだ起きてたのか、すっかり眠ってると思ってたよ」
「今夜は楽しかったな〜、またいつか飲み会でもしようね」
「いつでも歓迎だ」
心の中では明日もでも構わんよ!である。
「そうそう、さっき思い出せなかった事なんだけど...この間、大学を出て買い物のために隣町まで行った時に、グレムリンみたいなのを見かけたんだよね」
「グレムリンって、スピルバーグの古い映画に出てくるやつか?」
「あんなにグロくはないんだけど、ルカリやミーコと比べるとやっぱり少し不気味だったかも」
「俺たちみたいに人間と契約したのかな?」
「見てたのは少しの間だけで確信はないんだけど、たぶん近くにいた高校生の男の子だったかな〜ぐらい」
「なるほど、ありがとう教えてくれて」
「ううん、その手の情報はお互い共有した方が良いと思って」
「だよな、俺も何か見つけたり知った時には泉音に伝えるよ」
 泉音の家、つまり小判を買い取ってもらたった質屋に着いた。小判を1,800万もの現金で支払った泉音の祖父ちゃん。よく考えたらとんでもない金持ちかも知れない。
「背負ってくれてありがとう、今夜は楽しかった。おやすみ源九郎」
「俺も楽しかったよ、ルカリもまたな、おやすみ」
二人は外灯の灯る店の中へと入っていった。
「ミーコ、俺らも風呂入って寝るか。よし来い肩車してやる」
「あ〜いあんがと♡」
帰り道、肩車されたミーコは俺の頭にしがみついて眠っていた。可愛いなこいつ。
 忘れていたが、いよいよ明日は開業初日なのである!しかし、来るかなお客さん。

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