覚醒屋の源九郎 第一部

流川おるたな

異文化

 ルカリはきっと料理が苦手なのだろう。ミーコと戯れあいながらTVを観ている。
「俺、手伝うよ」
「主役には座ってて欲しいんだけど...妖精達があれじゃね〜、お願いしよっかなぁ」
「任せて!自炊で鍛えた包丁捌きをお見せしましょう!」
「じゃあ、そこのカボチャとジャガイモとサツマイモの皮剥きして一口サイズにカットお願い!」
「任せろ!」
実は料理するの好きなんだよね俺。
 でも改めて思うが、女性が料理する姿ってやっぱいいな〜って...しみじみ。
 ついこの間まで一人で職もなく、人生の瀬戸際だったのが嘘のような現状。この幸せがずっと続かないことは分かっているが、だこらこそ今は楽しい時間を大切にしよう!
「あ、そうだ源九郎!ここにホットプレートある?」
「滅多に使わないけど確かあったはず...おーいミーコ!そこの押し入れからホットプレート探して綺麗にしといてくれ〜」
「えぇ〜!?今はちび○子ちゃん観てるんだけどもぉ」
こ、こいつは普通の子供のリアクションすな!気持ちが分からんでもないが、
「手伝わんのなら、夕食抜きな〜」
「直ぐに取り掛かります〜!」
料理によりちび○子ちゃんは瞬殺された。
「はい!ホットプレートチーズフォンデュの下準備完。ホットプレートをみんなで囲んで野菜も食べましょう!」
早速1品ですな!
 泉音の手際は素晴らしい。
「普段から料理してるのか?」
「私は両親を小さい時に事故で亡くしてね。お祖父ちゃんと二人暮になってからは、ほとんど毎日やってるんだ〜」
「そうなんだ。なんかゴメン」
「んーと、ああ、両親のことはだいぶ前の話だし、会話の流れで私が話したんだから源九郎が悪く思うことないよ〜」
「う、うん」
ご両親がどういった事故で亡くなったのか気にはなったが、ここは空気を読むべきだろう。
「ミーコ〜そっちの準備は出来たか?っておい!」
ミーコとルカリがキョトンとした表情でこちらを見る。
 押し入れから出した物が山積みになって溢れている惨状。ルカリも一緒になって探してくれているようだが、小さい箱や袋の物まで出してめちゃくちゃだ。
「ヒットブレードが見つからないよ〜」
なんだそのRPGの武器っぽい名称は。
「ホットプレートな」
俺は致命的な事に気付く。
「悪い、お前達がホットプレートがどんな大きさと形状なのかを伝えてなかったな」
棲む世界が違うのだから、文化も当然違う。見たこともなく想像もつかなければ探すことは容易ではない。
 妖精って慣れてくると、人間と接するのとあんまり変わらない感じがするから、何でも分かるって錯覚に陥るんだよなぁ。
「ホットプレートはこれだよ」
山積みの箱群の中にあった物を拾い上げミーコに渡す。
「後はよろしく!」
「あい」「はーい」
二人は心良く返事してくれた。

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