覚醒屋の源九郎 第一部

流川おるたな

開業前祝い

 小判を現金にした日から2週間後、なかなかの物件を見つけて引っ越した。
 以前の借主は司法書士事務所でもっと良い事務所に移転したらしい。1階が事務所、2階が自宅という造りになっており、ほぼほぼ改装無しで開業出来る上に、築年数等からみて家賃もリーズナブルだった。
 「源九郎人生相談所」の看板も掲げてある。
 電話を取り付け、デスクなどの備品や事務用品なども揃えた。
 広告に関してはホームページを開設し、新聞広告も1回入れた。キャッチコピーは「貴方の人生が変わるかも!?」。
 明日からいよいよ人生初の自営業始動!不安とワクワクでいっぱいの俺。
 んで、今夜は開業前祝いで泉音が夕食をご馳走してくれるということで、何と我が新居にやってくる!
 まぁ当然エルフのルカリもセットなわけで、こちらもミーコがいるから二人きりという設定は成立しないのだが、部屋に女性が遊びに来ること自体が数年ぶり。
 不快感を与えないよう徹底的に部屋を綺麗にした。泉音は18時に到着予定だったが、早々と受け入れ準備完了した俺はTVをつけ、なぜかソファに不動の正座中。
ミーコも俺の横でちょこんと同姿勢。
「泉音は何作ってくれるのかな?楽しみ〜」
「喜べ、肉料理って言ってたぞ」
泉音から肉料理と訊いて、安物だけどワインも用意してある。未成年では無いから大丈夫だろう。あれ?
「妖精って酒は呑めるのか?」
「種族によるけど大抵は大好物だよ。ちなみにあちしも呑めるよ〜」
妖精だから未成年とか関係ないのか...
時間があるので日頃疑問に思っていたことを訊いてみる。
「あのさ、エルフってケット・シーよりランク付けで高い位置なのか?」
「ランク付けだとA級に近いB級って事になってる。ちなみに魔法が得意な種族だよ」
「ケット・シーは何が得意なんだ?」
「他の人に化けることと身体能力の高さが売り、あとマスコット的な存在でもある!エヘン!」
「まぁミーコを見てればわかるけどな」
こんな話しをポツポツしながら予定時刻10分前まで過ごした。
 (ピンポーン)待ってましたの呼び出し音。2階の自宅は外階段から直接通じているので事務所は通らない。部屋のドアを開けた。
「こんばんは、お待たせ〜!」
ルカリだ。後ろにちゃんと泉音も来ている。
「2人ともいらっしゃい!」
「らっしゃーい!」
ミーコも異種だが同じ妖精と話せる機会を楽しみにしていたらしい。ルカリが異常なほど可愛がってくれるから尚更だ。
「お腹減ってるだろうから、もう料理しちゃうね」
長い黒髪を青のリボンでサッとまとめて、よく分からないマスコットキャラ入りのエプロンを付ける泉音。
 二フラムの光くらい眩しいぜ!
 念のためだが、この物語はファンタジーである。

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