覚醒屋の源九郎 第一部

流川おるたな

帰り道

「ところで、俺達の付近を歩いていく人達の目線が結構やばめなのだが猫娘よ、もしかしてお前は他の人には見えてないのか?」
「もちのろーん!今は表見モードオフ状態だよ〜」
ふむふむ、ここまでの俺の動きや言葉は全て一人芝居として人々の目に映っていたわけか...頭のおかしなヤツ炸裂だな!?
「ミーコよ、話しの続きはウチに帰って聞こうと思うがOKか?」
「おかしな事を言うね〜、これからながぁ〜いこと寝食を共にするんだから当たり前だよぉ。早く源九郎の部屋を見てみたいな〜」
また心臓の止まるような事をさらりと言われてしまった。幸いなことに、俺はこの年齢まで未婚で現状は彼女もいない。格好良く言うならば独身貴族というヤツだ...
否っ!今は貴族の部分は完全に消えてしまって、新たに「貧民」の文字が入って「独身貧民」ではないかぁぁぁ。
「まぁ良いさ、ミーコよついて来い」
「あ〜い♡」
帰り道を歩き出した頃には、夕日が綺麗に沈みかけていた。
 ミーコは俺の横でフワフワ浮遊してついてくる。
「さっき聞きそびれたが、表見モードにオフがあるならオンもあるんだな?」
「そうだよ〜、オフの時は源九郎以外の人間には見えないし声も聞こえない。オンにするとみんなに見えて声も聞こえちゃうんだよね。あ、これは人間以外の全種族が持ってる対人間専用能力なので悪しからず〜」
本題のどういう目的があって、何故に俺を選択したのかという質問は後でゆっくり聞くとして...対面の通りすがりの人の目が心に刺さる。
「ミーコ、ここからうちに着くまでの間は沈黙でよろしく」
「OK♡」
こうしてうちに着くまでの間、俺とミーコは本当に一言も喋らず黙々とただ黙々と歩いたのである。

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