覚醒屋の源九郎 第一部

流川おるたな

なんだかなこの人生

 プロローグより遡ること1年。
 からの1年前、20年以上勤めていた会社が突然倒産してしまった。
 原因は考えるまでもなく明らかで、「コロネ」と呼ばれる新しい感染病が起こした経済の冷え込みによる経営破綻である。
 定年退職するまで何となく働き、退職後の余生も何となく過ごすつもりだったのだが...
 朧気な想像しかしていなかった俺は、一瞬で職を失うというトラブルに上手く対処する事が出来ずにいた。
 この1年で何度面接を受け、何度「ご縁がなかった」と通知を受けた事だろう。15回までは覚えているが、それ以降数えて覚えるのは止めてしまった。
 なかなか仕事に就く事が出来ず、社会への敗北感や疎外感やらを勝手に感じてしまい、ストレスが溜まりに溜まりご乱心モードに凸ってしまう寸前の俺である。
 「はぁ〜、ふぅ〜」
 夕暮れ時の川原の土手に座り込み、川の流れをぼ〜っと眺めながらタバコを一本。
 そして思う事は「もう人生の潮時かな」などであり、完全にネガティヴ思考のスパイラル状態だ。
 そんな感じで暫く俯いていたのだが、視界に入らずとも強烈な光がを脳に感じて顔を顔をゆっくり上げると...
 直径1mほどの光の玉が、俺の目前3mほどで上下にユラユラと揺れながら浮いているではないか!
「おほーっ!これは定石通りだとちょっと抜けた美しすぎる女神様が現れるアレですなぁ〜っ!」
 寸前までドン底だった俺の心は秒で、否!秒もかからない速度で高揚感MAXに達したのである。
 光の玉は俺の頭上10mほどの高さまで浮上したかと思うと、その刹那、足元の地面にズボッと突っ込み見えなくなった。
 その地点から女の子の声が聴こえて来る。
「タイガ〜...アッパ〜...」
???、俺の思考が完全に停止した瞬間、
「カットーーーッ!!」
「ふべっ」
地面から飛び出した何者かに、意識を失うかと思うくらいのパンチを下顎に貰い受け、情けない声を上げた後、ガクブルな膝をストンと地面に落とし、次いで両手も地面に着け土下座状態になってしまっていた。
 そんな中、めちゃくちゃ元気な声で呼び掛けられる。
「初めまして〜!ケット・シーのミーコです〜今後ともよろしく〜」
 俺の思考は完全に停まった...

 

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