帝国愛歌-龍の目醒める時-
終焉①
バッシャアァァァンッ‼
「きゃあぁぁっ!」
派手な水音をたててその場に落ちたトパレイズは、訳も分からないまま悲鳴を上げた。いきなり落下して、全身水浸しになって。大人しくその場に座っている者がいるのなら一度会って見たいものだ。
彼女から僅かに遅れ、再び水音がする。けれどパシャン、と軽い音だけで、水柱は上がらない。水面に触れる爪先が、小さな波紋を生むだけだ。
「無事、到着♪」
自分だけ水に濡れる事なく、ライラは言う。
「あ、あんた・・・」
どっぷりと川に浸かったトパレイズは、後ろ手に手を突き、ぴくぴくと眉を揺らしている。
「ここぞとばかりに恨みを晴らしてるでしょうっ⁉」
「まっさかぁ」
口許を手で押さえ、ちらりとこちらを見る横目が笑ってさえいなければそれも信じただろう。
「まぁ、いいじゃない。『水も滴るいい女』よ、トパレイズ?」
くすくすと楽しそうに笑って、ライラは岸を指した。
「行ってらっしゃい」
ぐいっと腕を引かれて立ち上がり、背中を押されて歩き出す。
岸へと。
足にまとわりつく水がもどかしくて、何度転びそうになったかわからない。けれど、ただ真っ直ぐに。
あの花の咲き乱れる野原に、焦がれて焦がれて止まない人がいる。
それだけで。
《ト・・・レイズ・・・》
「・・・っ!」
もう、泣き叫びそうだった。聞こえる声はあの頃と全く変わらず、ただ愛を込めて名を呼んでくれる。
流れる涙を必死に堪え、トパレイズは走った。
「・・・っ!・・・バニスッ‼」
「黄架、還り方はもうわかるわね?」
嬉しそうに、でも少し寂しそうにトパレイズを見つめる黄架は、その声で我に返った。隣に視線を移してみれば、真剣な表情でライラがこちらを見上げていた。
否─────真剣と言うよりは、何かを覚悟した時のような、諦めではないけれどそんな潔さ。
「紫龍の・・・」
「黄架」
言いかけた黄架を鋭く遮り、少しだけ微笑む。
「ライラと呼んでくれて結構よ。それに、私への配慮も結構。あなたはトパレイズと無事に還る事だけを考えなさい」
しかし!と言い募る黄架を、ライラは視線だけで黙らせる。彼女の瞳にはそれだけの力があった。
元々龍の巫女としての力も瞳にあり、さらに皇妃として皇帝と共に国を治めてきた彼女だ。いざという時には高圧的な視線で、人々に有無を言わせないやり方だって身に付いている。
「・・・はい」
そう言うしかない事を、黄架はわかっていた。
紫色の光に包まれた小さな珠が、朧気に人の姿を形取る。
「バニス・・・?」
信じられないとでも言うように、トパレイズは恐る恐る手を伸ばした。
これは夢か、はたまた幻か。彼が死んでからもう三ヶ月近く経つ。いくら何でも、此処にいられるはずがない。
この黄泉の世界は、死者と生者の中間に位置する世界だ。死した魂が天国に行くか地獄に行くか、それが決まるまでの停留所と言っても過言ではない。
短くて一週間、長くても一月というのがこの世界の滞在可能期間だ。
それが何故。
《皇妃陛下のおかげだよ》
トパレイズが触れた部分から、徐々に輪郭がはっきりしていく。
《僕は、本当は一週間で此処を去る筈だった。だけど、どうしても一つだけ心残りがあったんだ》
やり残した事がたった一つだけ。どうしようもない事だと思いながら、それでも諦めきれずに、バニスはその手を取った。
願いを叶えてくれると言った、ライラの手を。
《陛下は、それが禁忌を犯す事だと知っていて手を貸してくれた。だから、僕は君に言える》
やり残した事、それは。
《世界で一番、誰よりも君を愛してる》
生きている時、きちんと言えた事がなかった言葉だ。
トパレイズは何も言えず、溢れる涙を止める事さえ出来ずにしゃくり上げる。
《トパレイズ》
ポンと肩に置いた手の輪郭が、陽炎のようにゆらゆらと揺れた。
「バニスッ⁉」
驚いて名を呼ぶと、バニスはゆっくりと首を振った。
《元々、僕はもう此処にいてはいけない者なんだ。次の世界へ行く時間なんだよ》
頭ではわかった。此処にいる事が、バニスにとって良くない事だと言う事もわかっている。
けれど、心は別だ。頭では理解しても、心が叫びを上げる。
離れたくない、と。
「此処を越えてしまったら、バニスは私の事など綺麗さっぱり忘れてしまうわ!そして生まれ変わって、別の人に『愛してる』と言うのよ!そんなの、私は絶対嫌っ!」
何を言っているのか、もう自分でもわからなかった。まるで子供のようなわがままを言って、何とか彼をつなぎ止めようと必死だった。
《トパレイズ》
宥めるように名を呼んでも、トパレイズは頑なに首を振り続ける。
言い知れない不安が彼女の中にある事は、彼にもわかった。けれど、もう彼には何もしてやる事が出来ない。
ただ。
《僕は君を守る事が出来て、本当に嬉しかった。お金も権力もなくて、喧嘩も出来なくて。それでも、僕は君を守った。君は生きている。それがどれだけ嬉しかったか、多分君にはわからないだろうけれど・・・》
苦しみは余計に広がったけれど。それは単なる自己満足に過ぎないのだろうけれど。
愛する者を守る事が出来たと知って、本望だと思える程に嬉しかったのだ。
《君が生きていてくれる事が、僕の幸せ。例え僕が総てを忘れて生まれ変わっても、君がどこかに生きていて、僕と再び巡り会ったのなら》
どんなに姿形が変わろうと、その魂だけは間違えない。
《僕達はもう一度、愛し合えるよ》
「バニ─────」
ザンッ‼
息が止まる。心臓さえも、凍えつきそうな光景だった。
「いやあぁぁぁぁっ‼」
かつての恐怖が甦る。慌てて駆け戻ったその場所に転がる、彼の首。
「バニスッ!バニスッ!バニスッ‼」
「トパレイズッ‼」
風船が割れるような衝撃が頬を襲い、トパレイズは初めて自分が誰かに支えられているのだと知った。
放心状態でその人を見上げるトパレイズの耳に、言葉が届く。
「しっかりしなさい!惑わされては駄目!バニスは無事だから‼」
「あ・・・?」
トパレイズを支える腕とは反対側の手の平に、小さな珠が乗っている。
「バニス・・・?」
その声に答えるように珠が光ると、トパレイズは完全にガクリと膝を付いてしまった。安心した為だろう。
「黄架」
ライラは静かにその名を呼ぶと、トパレイズの体を預けた。
「ラ、イラ・・・?」
黄架に抱き上げられたトパレイズは、彼女の体の向こう側にいる何かを見た。否、正確には目が合った。
それは、確実に自分達を狙っている。
「何、あれ・・・?」
カタカタと体が震える。それ程までに禍々しい気配を、そいつは持っていた。
「恋人達の最後の逢瀬ぐらい、静観していてもいいんじゃなくて?」
手の平に乗せていたバニスである珠を自分の背後に浮かせ、ライラは握った拳を左の手の平に押し当てた。
「嫌われるわよ?」
スラッ、とまるで鞘から引き抜かれるかのように、ライラの手の平から剣が現れた。
鼻先だけで嗤い、皮肉気に告げる。
「ま、最初から嫌われ者だけどねぇ?」
真っ黒な黒い衣を頭からすっぽりと被ったそいつは、大きな鎌を持つ手に力を込めた。
顔どころか体格さえもよくわからないそいつを、人はこう呼ぶ。
「し、死神・・・?」
その大きな鎌を振り下ろし、人の命の灯を消し去る闇に属する神の一種。
けれどそいつは。
「違う」
背にトパレイズ達を庇い、じりじりと近付いてくるそいつから距離を取りながら説明してやる。
「死神と言えど神は神。一度死んで─────そりゃあルール違反はしたけれど─────きちんと死の世界に向かう魂を襲いはしない。しかも、龍王と黄泉の番人である黄龍に認められているのよ?」
本物の死神ならば、定められた者の魂以外は狩らない。
「こいつはこの忘却の川でさえも消去しきれない程の欲望を持った、人間の成れの果て。死神にも、魔にもなれずに、無力な魂を貪り続けるモノ」
力の源は、人間の魂。元は同じだった生き物の命を、死してまで生きると言う欲望に埋もれ、喰い続ける。
死神の姿を模しているのは、それでも神に近付きたかったからか。少しでも清い存在に還りたいと思ったからなのか、恐らくは本人でさえもわからない。
「魂、ヨコセ」
耳に不快な、ザラザラとした声。声帯も既に壊れてしまっているようだ。
「いくら魂を取り込もうと、あんたはもう現世に還る事の叶わない身。それにこの魂は、私が絶対に守ると決めたの。だから、ねぇ?」
自らの身に宿る龍の魔力で生み出した剣を構え、ライラは言う。
「諦めなさい、魂狩鬼」
カタカタと魂狩鬼の持つ鎌が鳴った。
「タマシイ・・・」
カーブを描いた刃が高々と持ち上げられ、ライラ達に向けられる。
「寄コセェッ‼」
ゴウッ!と唸りを上げ、魂狩鬼が飛び掛かって来た。ライラは両手で構えた剣でそれを受けるが、湾曲した鎌はライラの剣を越え、頬を切り裂く。
互いの武器がぶつかった衝撃で、魂狩鬼の顔を覆っていた衣が後ろに落ちた。
「ひっ⁉」
現れた顔に息を呑む。
殆ど白骨化した頭蓋骨に所々皮膚が残り、それは紛れもなく神にも魔にもなりきれなかった人間の姿だった。
「きゃあぁぁっ!」
派手な水音をたててその場に落ちたトパレイズは、訳も分からないまま悲鳴を上げた。いきなり落下して、全身水浸しになって。大人しくその場に座っている者がいるのなら一度会って見たいものだ。
彼女から僅かに遅れ、再び水音がする。けれどパシャン、と軽い音だけで、水柱は上がらない。水面に触れる爪先が、小さな波紋を生むだけだ。
「無事、到着♪」
自分だけ水に濡れる事なく、ライラは言う。
「あ、あんた・・・」
どっぷりと川に浸かったトパレイズは、後ろ手に手を突き、ぴくぴくと眉を揺らしている。
「ここぞとばかりに恨みを晴らしてるでしょうっ⁉」
「まっさかぁ」
口許を手で押さえ、ちらりとこちらを見る横目が笑ってさえいなければそれも信じただろう。
「まぁ、いいじゃない。『水も滴るいい女』よ、トパレイズ?」
くすくすと楽しそうに笑って、ライラは岸を指した。
「行ってらっしゃい」
ぐいっと腕を引かれて立ち上がり、背中を押されて歩き出す。
岸へと。
足にまとわりつく水がもどかしくて、何度転びそうになったかわからない。けれど、ただ真っ直ぐに。
あの花の咲き乱れる野原に、焦がれて焦がれて止まない人がいる。
それだけで。
《ト・・・レイズ・・・》
「・・・っ!」
もう、泣き叫びそうだった。聞こえる声はあの頃と全く変わらず、ただ愛を込めて名を呼んでくれる。
流れる涙を必死に堪え、トパレイズは走った。
「・・・っ!・・・バニスッ‼」
「黄架、還り方はもうわかるわね?」
嬉しそうに、でも少し寂しそうにトパレイズを見つめる黄架は、その声で我に返った。隣に視線を移してみれば、真剣な表情でライラがこちらを見上げていた。
否─────真剣と言うよりは、何かを覚悟した時のような、諦めではないけれどそんな潔さ。
「紫龍の・・・」
「黄架」
言いかけた黄架を鋭く遮り、少しだけ微笑む。
「ライラと呼んでくれて結構よ。それに、私への配慮も結構。あなたはトパレイズと無事に還る事だけを考えなさい」
しかし!と言い募る黄架を、ライラは視線だけで黙らせる。彼女の瞳にはそれだけの力があった。
元々龍の巫女としての力も瞳にあり、さらに皇妃として皇帝と共に国を治めてきた彼女だ。いざという時には高圧的な視線で、人々に有無を言わせないやり方だって身に付いている。
「・・・はい」
そう言うしかない事を、黄架はわかっていた。
紫色の光に包まれた小さな珠が、朧気に人の姿を形取る。
「バニス・・・?」
信じられないとでも言うように、トパレイズは恐る恐る手を伸ばした。
これは夢か、はたまた幻か。彼が死んでからもう三ヶ月近く経つ。いくら何でも、此処にいられるはずがない。
この黄泉の世界は、死者と生者の中間に位置する世界だ。死した魂が天国に行くか地獄に行くか、それが決まるまでの停留所と言っても過言ではない。
短くて一週間、長くても一月というのがこの世界の滞在可能期間だ。
それが何故。
《皇妃陛下のおかげだよ》
トパレイズが触れた部分から、徐々に輪郭がはっきりしていく。
《僕は、本当は一週間で此処を去る筈だった。だけど、どうしても一つだけ心残りがあったんだ》
やり残した事がたった一つだけ。どうしようもない事だと思いながら、それでも諦めきれずに、バニスはその手を取った。
願いを叶えてくれると言った、ライラの手を。
《陛下は、それが禁忌を犯す事だと知っていて手を貸してくれた。だから、僕は君に言える》
やり残した事、それは。
《世界で一番、誰よりも君を愛してる》
生きている時、きちんと言えた事がなかった言葉だ。
トパレイズは何も言えず、溢れる涙を止める事さえ出来ずにしゃくり上げる。
《トパレイズ》
ポンと肩に置いた手の輪郭が、陽炎のようにゆらゆらと揺れた。
「バニスッ⁉」
驚いて名を呼ぶと、バニスはゆっくりと首を振った。
《元々、僕はもう此処にいてはいけない者なんだ。次の世界へ行く時間なんだよ》
頭ではわかった。此処にいる事が、バニスにとって良くない事だと言う事もわかっている。
けれど、心は別だ。頭では理解しても、心が叫びを上げる。
離れたくない、と。
「此処を越えてしまったら、バニスは私の事など綺麗さっぱり忘れてしまうわ!そして生まれ変わって、別の人に『愛してる』と言うのよ!そんなの、私は絶対嫌っ!」
何を言っているのか、もう自分でもわからなかった。まるで子供のようなわがままを言って、何とか彼をつなぎ止めようと必死だった。
《トパレイズ》
宥めるように名を呼んでも、トパレイズは頑なに首を振り続ける。
言い知れない不安が彼女の中にある事は、彼にもわかった。けれど、もう彼には何もしてやる事が出来ない。
ただ。
《僕は君を守る事が出来て、本当に嬉しかった。お金も権力もなくて、喧嘩も出来なくて。それでも、僕は君を守った。君は生きている。それがどれだけ嬉しかったか、多分君にはわからないだろうけれど・・・》
苦しみは余計に広がったけれど。それは単なる自己満足に過ぎないのだろうけれど。
愛する者を守る事が出来たと知って、本望だと思える程に嬉しかったのだ。
《君が生きていてくれる事が、僕の幸せ。例え僕が総てを忘れて生まれ変わっても、君がどこかに生きていて、僕と再び巡り会ったのなら》
どんなに姿形が変わろうと、その魂だけは間違えない。
《僕達はもう一度、愛し合えるよ》
「バニ─────」
ザンッ‼
息が止まる。心臓さえも、凍えつきそうな光景だった。
「いやあぁぁぁぁっ‼」
かつての恐怖が甦る。慌てて駆け戻ったその場所に転がる、彼の首。
「バニスッ!バニスッ!バニスッ‼」
「トパレイズッ‼」
風船が割れるような衝撃が頬を襲い、トパレイズは初めて自分が誰かに支えられているのだと知った。
放心状態でその人を見上げるトパレイズの耳に、言葉が届く。
「しっかりしなさい!惑わされては駄目!バニスは無事だから‼」
「あ・・・?」
トパレイズを支える腕とは反対側の手の平に、小さな珠が乗っている。
「バニス・・・?」
その声に答えるように珠が光ると、トパレイズは完全にガクリと膝を付いてしまった。安心した為だろう。
「黄架」
ライラは静かにその名を呼ぶと、トパレイズの体を預けた。
「ラ、イラ・・・?」
黄架に抱き上げられたトパレイズは、彼女の体の向こう側にいる何かを見た。否、正確には目が合った。
それは、確実に自分達を狙っている。
「何、あれ・・・?」
カタカタと体が震える。それ程までに禍々しい気配を、そいつは持っていた。
「恋人達の最後の逢瀬ぐらい、静観していてもいいんじゃなくて?」
手の平に乗せていたバニスである珠を自分の背後に浮かせ、ライラは握った拳を左の手の平に押し当てた。
「嫌われるわよ?」
スラッ、とまるで鞘から引き抜かれるかのように、ライラの手の平から剣が現れた。
鼻先だけで嗤い、皮肉気に告げる。
「ま、最初から嫌われ者だけどねぇ?」
真っ黒な黒い衣を頭からすっぽりと被ったそいつは、大きな鎌を持つ手に力を込めた。
顔どころか体格さえもよくわからないそいつを、人はこう呼ぶ。
「し、死神・・・?」
その大きな鎌を振り下ろし、人の命の灯を消し去る闇に属する神の一種。
けれどそいつは。
「違う」
背にトパレイズ達を庇い、じりじりと近付いてくるそいつから距離を取りながら説明してやる。
「死神と言えど神は神。一度死んで─────そりゃあルール違反はしたけれど─────きちんと死の世界に向かう魂を襲いはしない。しかも、龍王と黄泉の番人である黄龍に認められているのよ?」
本物の死神ならば、定められた者の魂以外は狩らない。
「こいつはこの忘却の川でさえも消去しきれない程の欲望を持った、人間の成れの果て。死神にも、魔にもなれずに、無力な魂を貪り続けるモノ」
力の源は、人間の魂。元は同じだった生き物の命を、死してまで生きると言う欲望に埋もれ、喰い続ける。
死神の姿を模しているのは、それでも神に近付きたかったからか。少しでも清い存在に還りたいと思ったからなのか、恐らくは本人でさえもわからない。
「魂、ヨコセ」
耳に不快な、ザラザラとした声。声帯も既に壊れてしまっているようだ。
「いくら魂を取り込もうと、あんたはもう現世に還る事の叶わない身。それにこの魂は、私が絶対に守ると決めたの。だから、ねぇ?」
自らの身に宿る龍の魔力で生み出した剣を構え、ライラは言う。
「諦めなさい、魂狩鬼」
カタカタと魂狩鬼の持つ鎌が鳴った。
「タマシイ・・・」
カーブを描いた刃が高々と持ち上げられ、ライラ達に向けられる。
「寄コセェッ‼」
ゴウッ!と唸りを上げ、魂狩鬼が飛び掛かって来た。ライラは両手で構えた剣でそれを受けるが、湾曲した鎌はライラの剣を越え、頬を切り裂く。
互いの武器がぶつかった衝撃で、魂狩鬼の顔を覆っていた衣が後ろに落ちた。
「ひっ⁉」
現れた顔に息を呑む。
殆ど白骨化した頭蓋骨に所々皮膚が残り、それは紛れもなく神にも魔にもなりきれなかった人間の姿だった。
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