異世界になったこの世界を取り戻す

文戸玲

決意とともに⑪~ジャンと共に~


 身体がふわふわする。夢の世界にいるようだ。

「ここはどこだ?」

 ジャンがすぐそばにいた。ミュウも肩に捕まっている。それだけで気持ちが安らぐような気持ちだった。
 ジャンはそう言ったけど,不思議なことに初めて来たような間隔がしない。火山の中に入りこんだような岩壁に囲まれ,ところどころ川のような溝があるかと思えばそこには溶岩が流れている。でも,この空間にはそのっけしきから
想像するような不快な暑さは感じられなかった。きっと,ここが都合の良い作られた世界だからだろう。その世界を作ったのは誰か。それは考えるまでもなくアトラスだ。だとしたら,自分たちにとっては都合の良いことで物事が収まるはずはない。
 ジャンに目をやると,言うまでも無く警戒を怠ることなく周りを見渡していた。途端に生き物の咆哮がした。空気を揺らすほどのその叫び声から,相当な大きさであることが想像できた。

「これがおそらく最後の戦いだ。死ぬなよ。生きて,おれたちの世界を繋げ」

 当たり前だろ,と返事を返した直後,ジャンは飛び出した。何か作戦があるのかと思いきや,そうでもないらしい。片腕のまま釜を抱え,不思議な冷気をまとって声のする方へ向かった。
 こちらから探す必要は無く,声の主はすぐに姿を現した。それは,的にするにはあまりに大きく,絶望させるには十分な風貌だった。


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