異世界になったこの世界を取り戻す
決意とともに⑧~別れは唐突に~
光の中で,ミュウがふわふわと浮かんでいる。じいちゃん,ベル,バオウ,ジャンの身体がそれぞれ透けていく。明る過ぎる空間にはふさわしくない心に穴が空いたような気持ちが押し寄せてくる。心のどこかで,これから起こることを直感的に理解しているのだろう。
「ここでお別れのようじゃな」
朝起きてまず顔を洗う,そんな日常的なことの延長のようにじいちゃんは言った。
「お前らには迷惑をかけた。信念の元に好き勝手やらせてもらったが,なんとか正しいことをやりきれそうじゃ。ジャンが生まれてくる頃にちょうどなくなったお前達のばあさんも,ようやったと受け入れてくれるじゃろう。やっと同じ所に行ける」
「じいちゃんも,やっぱりパラレルワールでは死んでいるんだね」
「・・・・・・うちに仏壇と遺影があったのを覚えとるか? 自己研鑽も大事じゃが,たまにはご先祖様を敬えよ」
笑いながら言った。
「お前達はようやった。自慢の孫じゃ。良き友にも恵まれたな。・・・・・・それから母ちゃん。変な感じじゃが,母ちゃんと呼ばせてくれ。見てとの通り,お前の息子はようやるぞ。立派なもんじゃ。だから心配せずにおってくれ。ちっさい頃は何も出来ないどうしようもないガキじゃったがな。だから,そう殴ってやるなよ」
笑いながらベルに微笑むと,「そろそろじゃ」と言って消えていった。
あまりにも唐突過ぎる別れに思わず「あ,」とつぶやきが漏れた。「待ってくれ」とジャンはじいちゃんをつかみにいったが,その手はむなしく空を切った。
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