異世界になったこの世界を取り戻す

文戸玲

時空を超えて⑧~村を求めて~



 じりじりと日差しが照りつける砂地を歩くこと数時間,手頃な筒に入れた水分もとうとう尽きてしまった。

「あっぢ~~。だめかもしんない・・・・・・」
「弱音を吐くな。置いていくぞ」

 冷たく言い放ちながらバオウは切って作った自分の筒を差し出してきた。そのてからはぽちゃん,と天使の吹いた楽器のような軽くてポップな音がする。

「バオウ~,恩に着るよ」

 差し出された手から筒を受け取ってはふたを開け,垂直にして迷うことなく一気に飲み干した。

「ばかかお前は! 全部飲むやつがいるか! いったいてめえはどういう神経をしてやがる!!」
「え? くれたんじゃなかったの!?」

 バオウが般若のような顔をして飛びかかってきた。ひょいっ,とそれをかわすとさらに追いかけてくる。待てこの野郎,と追いかけまわしてくるバオウに「疲れるからやめようよ」と言うと「誰のせいだと思ってやがる」と角まではやして追い回してくる。
 このまま地獄まで追い回されるのかと不安になっていると,ジャンが手を振ってこちらに合図を送っている。

「おーい,ごくろうさん。続きは宿でやろうぜ」

 「宿!?」とバオウと声をそろえてジャンの指さす方を見ると,村が見えてきた。ジャンはミュウに水を飲ましてやりながら,「まあ,あと少し仲良くやろうぜ。それともかけっこで村まで行くか? 負けたやつは晩飯抜きとかなんか賭けてさ」

 バオウと顔を合わせた。同時に二人のお腹がぐーっと鳴った。みんなで笑い合いながら歩を進めた。

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