異世界になったこの世界を取り戻す

文戸玲

助っ人参上⑥~時を超えて~

「そこまで言うならしょうがない。一緒にいてやる。ただし,おれはどうしようもない状況になったら足手まといをかばいながら戦うことよりも,自分の命を最優先する。自分の命を捨ててまで誰かを守ろうとはしない。そんな冒険ごっこのつもりはない。分かったな?」

 ジャンは笑って頷き,バオウの肩に手を回した。

「そんじゃ,よろしくな。あと,ジャンさんじゃなくて,ジャンでいいぞ。おれもバオウって呼ばせてもらうな」
「いや,ジャンさんに勝つまでは変に距離感は詰めない。だから,そう馴れ馴れしくしないでくれ」

 バオウの顔が赤らんでいる。仲間と呼べる人が出来て嬉しいこともあるかもしれないが、別の所に理由があるのは明らかだった。

「バオウはジャンに憧れているんだもんね。だから気安く呼び捨てできないよね!」
「何を言ってやがるソラ! 別に憧れてなど・・・・・・,それにてめえ,ジャンさんは歴代でも断トツの成績を残して学校を首席で卒業したんだぞ。ちょっとは年長者を敬えんのか!」
「なるほどね~。かわいいところあるじゃん。よし,じゃあこの旅でみっちり稽古つけてやるよ。パワーだけじゃ越えられない壁ってものがあるからな。それに,お前センスあるよ。このままにしておくのはもったいない」

 バオウの顔が熟れすぎたトマトのようになった。よろしくお願いします,と言って軽く頭を下げた。
 出口まで案内してくれ,とジャンはバオウに言った。そんな様子を見ながら笑みがこぼれる。でも,一つだけやっておきたいことがあった。

「待って。ヒューゴたちを供養してから行こう」

 この言葉にみんな頷いた。ミュウを肩口に忍ばせ,手頃な場所を探していると後ろから声がした。

「待たれよ」

 気配がまるでしなかった。警戒しながら振り向くと,そこには金髪の綺麗な女の人がいた。アトラス様,とジャンは呟いた。その目は完全に恋する瞳だった。

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