異世界になったこの世界を取り戻す

文戸玲

人が支配される街⑩~慎重に~

 速い。ダメージを受けないように防ぐのが精一杯だ。無理に攻撃に転じようとすれば,カウンターをくらいそうだ。ロボットと戦うなんてもちろん初めてだが,人間との違いに圧倒されそうだ。動きが読めない。

「間合いをしっかりと取れ。二人で隙を作り出して確実に攻めるぞ。今は物理攻撃でしか攻めてこないが,いつ何が出てくるか分からん。仕留めようと思うな。絶対にやられん,という慎重さでいくぞ」

 そう言われても,ここで苦戦しているようでは・・・・・・

「こいつらは町を攻めようとしてるんだろ? それに,きっと何体もいるはずだ。たった一体に二人が苦戦していたら守れないじゃないか!」

 思い切って踏み込もうとすると,待て,とジャンに制止された。ロボットが手のひらを突き出したかと思うと,直後にデザートナイフが突き出した。止められなければ,きっと致命傷を負っていただろう。そこで勝負は決まっていたに違いない。想像すると背中に冷たいものが走った。

「いいか,おれたちは普段,人間や動物の視線、筋肉の動き、もっと言えば考えていることまでも読み取りながら対応している。こいつらからはそれが読み取れない。必要以上に慎重にならないといけない。お前の言いたいことも分かる。でも,ここで傷を負うようじゃあだめなんだ。それに,やっていたら弱点や攻略法が見つかるかも知れないだろ。お前は始めから剣が振れたのか? とにかく,おれを信じろ。あらを探して,このふざけたマシンの弱点をさらしてやる」

 剣をしまってロボットと対峙した。間合いをじりじりと詰めてくる。ジャンが近くのテーブルからナイフを取り出すと右手に放った。と同時に,投げたナイフとは反対の方向に走り出した。何かを試している。

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