嫁ぎ先の旦那様に溺愛されています。

なつめ猫

高槻家の親戚(2)




「親戚の方ですか? それって、神社をゴミの処理場にしようと考えている?」
「ああ、そうだ」
「もっと早く言ってくれないと困ります。――でも、仕方ないですね。何時頃に来られるんですか?」
「昼には高槻神社に来るはずだ」
「お昼に!?」

 それは急すぎる。
 学校に行っていたら、高槻さんの親戚の方を歓待する準備時間が取れない。

「一応、境内を見たあとに支社に案内する事になっている。そのあとに食事会の時間を取る予定だ。一応、これを読んでおけ」
「えっと……食事会のマナー?」
「莉緒も食事会に、俺の許嫁という立場で参加することになる。そこだけは肝に銘じておいてくれ」
「……食事会って、フランス料理みたいな?」
「日本料亭を予定しているから、特に問題はない。お前の教養も見られることになると思うが……、黙って座っていれば俺がフォローするから極力話すな。いいな?」
「分かりました」

 高槻さんに渡された本をカバンに入れる。
だけど――、

「総司さん、それなら今日は学校に通わずに用意をしておいた方がいいと思いますけど……」
「親戚の連中は、莉緒が学生だと言う事は既に知っているだろう。なのに学校を休ませて対応などさせたら、そこを突かれる可能性がある。なるべく学校には通っておいてくれ」
「そうですか」

 色々と面倒な親戚だと言う事は薄々だけど分かった。
 
「それと、学校が終わったあとは何時も通り櫟原に迎えに行かせるが、食事会に向けてドレスコードも用意しておくから、そのつもりでな」
「ドレスコードですか?」
「ああ。それより、そろそろ行かないと遅刻する。学校に行ってこい」
「はい」

 頷き車から降りる。

「それと体調が悪かったら早退するようにな」
「もう体調は戻りましたので大丈夫です」

 やけに私の体調を心配してくれるけど、それはきっと親戚の手前上、私を大事にしないといけないという配慮からなのかも知れない。
 だって、櫟原さんが言っていた高槻さんが私を大事に思っているという言葉。
 それって、そういう事だと思うから。

 昇降口に辿りつき、上履きに履き替えたあと教室に入る。
 すでに大和や美穂が登校していて席について会話をしていた。

「おはよう、美穂」

 挨拶をしたところで、彼女は一瞬――、大和との会話を辞めて私へ視線を向けてきたけど……、すぐに私から目線を外し――、まるで私が居ないような素振りで大和と話し始めた。





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