嫁ぎ先の旦那様に溺愛されています。

なつめ猫

生徒指導室(2)




 美穂と一緒に生徒指導室前まで来たところで扉をノックする。
 すると、すぐに入りなさいという声が廊下まで聞こえて響いてきたので扉を開けて生徒指導室に入ると担任と、もう一人が室内では待っていた。

「え? 総司さん、どうして此処に……」

 そう、そこに居たのは私の雇用主でもある高槻総司さん、その人。
 ただ、私の疑問が解消される前にパイプ椅子に座るように生徒指導の先生に促されたので、椅子に座る。
 一応、高槻さんと女性の生徒指導の山田先生を交互に見るけど、穏やかに談笑をしているような様子は見受けられない。

「やれやれ。話しをしたいからと出向いてみれば、私の婚約者も呼び出すとは些か過剰すぎではありませんか?」
「何を言っているのですか! 宮内さんは、まだ学生の身分なのです! 何かが起きてからでは遅いのです!」

 唐突に始まる話。
 
「何かとは何でしょうか?」
「男女が同じ屋根の下で暮らしていることです! それに……」
「なるほど、男女の仲が問題だと……。そういうことですか?」
「――え。ええ……そうよ」
「それなら問題はありません。日本の法律上、女性は16歳以上で結婚できる事になっていますし、何より私と宮内さんは婚約を結んでいますので、部外者の貴女が口を挟む事ではないかと?」
「――ッ! 規律という物があります! ここは学び舎なのです!」
「それと、法律に何の関係が? 貴女の自己満足の為に個人の権利を尊重しない理由にはなりませんが?」
「自己満足……? 何を馬鹿なことを! ここは神聖な場所なのです! 生徒が間違った方向へ進もうとしているのなら正す必要があります!」
「やれやれ――」

 山田先生の力説に、呆れた表情をする高槻さん。
 
「何がおかしいのですか!」
「還暦を超えても世間知らずだと思って頭が痛くなったところだ」
「何ですって!? 宮内さんを停学処分にしてもいいのよ!」
「やれるものならやってみろ。すぐに弁護士を通して、お前と教育委員会を訴える。それと、憲法で定めている個人の権利を侵害したとして、ニュースサイトでも取り上げてもらうが問題ないな?」
「べんご……訴え……。そ、そんな脅しをして!」
「事実を言っただけだ。それと貴様の――、俺の婚約者を停学処分にするというのも脅しの部類に入るからな」

 そう彼は告げるとICレコーダーを取りだして、先ほど山田先生が私を脅す為に話した内容を何度もリピートさせる。

「さて、どちらが問題なのか裁判で白黒つけるとしようか?」

 違いの話合いは、そこで終わった。
それから、すぐに生徒指導室から解放され――、現在は車に美穂と私は乗っている。

「すごい車ね。莉緒ったらうらやましい!」
「そ、そう……?」

 私と高槻さんの本当の関係を知ったら、そうも言っていられないと思うけど。
 車で美穂を送り届けたあと、神社に戻る。
 高槻さんは、何事もないように母屋に戻ったあとは仕事を再開。
 私と言えば家事を行い、夕食を作る。
 夕食の用意が出来たところで、囲炉裏のある部屋で二人して食事を摂る事になった。

「今日は、余計な手間をかけさせたな」

 食事をしていたところで、そう話し始めたのは高槻さんから。

「――いえ。遠からず、こうなると思っていましたから」
「そうか。問題は、あの山田という女に目を付けられたくらいか。これから大変になると思うが、頑張れよ。特に勉強とかな」
「そうですね」

 先生に目を付けられたと言う事は内申点は酷いことになりそう。                  





コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品