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【書籍化決定】前世で両親に愛されなかった俺、転生先で溺愛されましたが実家は没落貴族でした! ~ハズレと評されたスキル『超器用貧乏』で全てを覆し大賢者と呼ばれるまで~

八神 凪

第百二十九話 狙われたラース


 「しかし見事な衣装ですね、あの衣装を販売する予定はありませんか?」
 「え? 販売ですか?」
 「ええ、あの衣装なら珍しいので必ず売れますし、裁縫も見事です。あなたが作ったと今おっしゃっていましたがいかがです? スキルを活かしたお仕事など」
 
 レオールがにこやかにニーナへ言うと、同じく笑顔でニーナは返す。

 「ふふ、お気持ちはありがたいですけどわたしはラース様のアイデアを裁縫をしただけですからね。デザインなどは全てラース様が考えたものなので、わたしひとりではあれほどのものは出来ません」
 「いいんですかニーナさん……?」
 「ええ、ハウゼンさん。ラース様あっての衣装でしたからねー。ラース様が作って欲しいと言えば作りますけどね」
 「はは、ニーナさんらしいな。でも、デザイナーのニーナさんも見たい気はするなあ」
 「もう、ハウゼンさんったら!
 
 ニーナとハウゼンが話始めたのでレオールはその場を離れながら、遠目に見えるラースに視線を合わせて胸中で呟く。

 「(アーヴィング家の次男、ラースか。あの衣装に合わせたダンス。恐らくあれもラース君が考えたのだろう。スキルは【器用貧乏】のハズレと聞いているけど、発想が面白いね。でこの町の取引をソリオ殿だけで終わらせるのは勿体ないな?)」

 ◆ ◇ ◆

 「お……!?」
 「どうしたラース?」
 「いや、何か悪寒がしたんだけど、なんだろう」
 「風邪? 無理しないでね?」
 「ああ、大丈夫だよマキナ。この前引いたからしばらくかからないと思うしね。それより、次の競技はなんだっけ?」

 と、俺がみんなに尋ねると鼻息を荒くしたクーデリカが俺の前に立つ。

 「お姫様抱っこだよ!」
 「あ、ああ、そうだった! それじゃ行こう」
 「うん!」

 これも去年には無かった競技だから忘れていた……。
 満面の笑みで俺の手を取るクーデリカと一緒にテントから出ようとすると、背後でぼそりと呟く声が聞こえてきた。

 「悔しいわね……」
 「うん。でもクーちゃんかノーラちゃんが一番軽いから仕方ないよ。マキナちゃんとヘレナちゃんはスタイルいいからね」
 「それは嬉しいけど、ねえ。くっ……」
 「頑張ってねー!」

 マキナが恨めしそうに言うのを尻目にノーラが手を振り送ってくれ、俺とクーデリカは苦笑しながら競走用のトラックに変えられたフィールドへと出ていく。

 「ごめんね、マキナちゃん」
 「やっぱりクーデリカが軽いからこれは仕方ないよ。ノーラは最近よく食べるから、きちんと体形を維持していたクーデリカが偉かったかな?」
 「ありがとうラース君!」
 「う、うん」

 俺の手を握って笑みを絶やさないクーデリカの顔を見て俺はチクリと胸が痛む。なんでだ……? 俺が不思議な感覚に陥っていると、ベルナ先生の実況が聞こえてきた。 

 [これも今年から増えた競技だということですが、ロザリア先生?]
 [そうですね。競技の内容については色々話し合いが行われるのですが、冒険者稼業をしている時、お仕事をしている同僚など、ケガをした人を抱えることもあるでしょう。落とさずにゴールまで運ぶのは実戦でも役に立つと思ったからです]
 [なるほどぉ。でもどうして競技名がお姫様抱っこなんでしょう?]
 [もちろん可愛いからです。これは私が決めました。私は可愛いものが好きなので]

 ロザリア先生は淡々とそんなことを言い、抱っこしているデッドリーベアとかいう魔物の赤ちゃんを優しく撫でた。

 [可愛いですねぇ♪ では、皆さん位置についてくださいねぇ。あ、ルールですけど、途中で落としたら失格の0ポイント。そして魔法はダメですから気を付けてくださいねぇ? よしよし♪]
 「ああー! オラも撫でたいー!! ベルナ先生ずるいのー!」
 「こら、止めろって! あそこに吊るされているバスレー先生みたいになるぞ!」

 ノーラが飛び出しそうになっているのを必死で止めるAクラスのテント。俺はクーデリカを抱えて位置に着く。
 
 「お、重くない?」
 「全然平気だよ。これは貰ったかな?」

 俺が言うと、隣にいたEクラスの男子生徒が不敵に笑う。
 
 「ふっふっふ……ここはEクラスが貰うぜ!」
 「あたし達のコンビネーションを見るといいわ!」
 「いや、コンビネーションも何も君は抱えられているだけじゃないか?」
 
 すると、クーデリカもこくこくと頷いて同調してくれた。
 
 「ま、せいぜい頑張ってくれよ?」
 「にゅふふふ……」
 「なんだ……?」

 他のクラスはそ知らぬ顔で位置についており始まるのを待つ。なんだかよく分からないけど、一気に駆け抜けた方が良さそうだ。

 「始め!」

 久しぶりにティグレ先生の合図でスタートする。クーデリカは軽い、これならと思ったところで両脇にCとDクラスに挟まれた。

 「それじゃ、Aクラスはここも負けてもらうぞ」
 「ごめんよ、君たちがここまで独壇場でなければ僕達もここまではしなかったんだけどね」
 「あ!?」
 「きゃあ!?」
 
 Cクラスのホープが口を開いた直後、CとDクラスの女の子がクーデリカに手を伸ばしてきた! クーデリカを落とすつもりか!?

 「くそ、振り切るぞクーデリカ! 金剛力で追い払えるか?」
 「や、やってみる……えい!」
 「おっと」
 「うわ!?」

 クーデリカが手を払う動作をすると、両脇のふたりは即座に回避し大きく空振りをするクーデリカ。その反動で俺の体が大きく揺れ、バランスを崩す。

 「お、っとと……!」
 「ご、ごめんラース君……」
 「大丈夫、どうするか――」

 [さあ、なにやら後方は固まっていますねぇ? そんな中、外側から抜けたEクラスが一着を取りましたよ!]

 「なんだって!?」
 「油断したな……!」
 「くう……!?」
 「が、頑張ってラース君!」

 もう一着が決まった!? そう思っていると、横から体当たりを食らいよろけさせられた。クーデリカの応援で何とか持ち直すが、

 「なんの……!」
 「頑張ったがここまでだな。足元がお留守だ!」
 「それとクーちゃんもごめんね!」
 「あ!?」

 俺は踏ん張った足を引っかけられ、こけそうになる。持ち直せるかと体を動かすも、女の子二人にクーデリカを掴まれ、俺は派手に転んでしまった。

 「汚ぇぞお前等!」

 外野のリューゼが激高するが、Bクラスのイワノフは悪びれた様子もなく言い返していた。

 「ルールに妨害はダメだってのは無かったからな? 余裕こいているからこういうことになるんだ!」
 「くそ……!」
 「リューゼ、悔しいけどあいつの言うことが合っているよ……」

 ウルカも悔しそうな顔をしている。

 [ここでAクラスはクーデリカちゃんを落としたので失格となりますー。仲間が敵、敵が仲間になる。こういうことはよくありますから、気を落としてはいけませんよぅ?] 

 「ご、ごめんね……」
 「クーデリカのせいじゃない。俺が油断していたのが悪いんだ。前の競技からおかしいなとは思っていたけど、何とかなるだろうと思っていた俺の……せいだ……ごめん……」

 どこかで驕っていたのだろうと言われれば返す言葉もない。勝てると余裕でいたから周りの状況を見ていなかった。
 俺は努力をしてやっと何とかなる人間のはずだ、いつから自分は強者みたいなことを考えていた……!

 「くそ……!」
 「ラ、ラース君……」

 俺は地面を殴りながら、次々にゴールしていく他クラスを見て歯噛みをする。

 もう油断はしない。俺の出られる競技は後ひとつ、戦闘競技のみ。そこでも妨害があるかもしれないけど、確実に取ってやる……見てろよ……!

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