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【書籍化決定】前世で両親に愛されなかった俺、転生先で溺愛されましたが実家は没落貴族でした! ~ハズレと評されたスキル『超器用貧乏』で全てを覆し大賢者と呼ばれるまで~

八神 凪

第六十三話 聖騎士部


 「ふあ……」
 「眠そうだね兄さん?」
 「ん……父さんが何をしているのか邪魔にならないように見てたんだ。ラースがあれだけ頑張ったんだから僕も……ふあ……なにか頑張らないとね……」
 「いつか領主になる兄さんは頑張らないとね。できることがあれば手伝うよ」
 「うん。いや多分ラースも手伝う羽目になるかも……」

 と、最近の兄さんは夜中までなにやら頑張っているらしい。いい傾向だと俺は思う。俺が王都に行くとしても、そうじゃないとしても領主は兄さんになってもらいたいからだ。
 【超器用貧乏】があればもしかすると領主になれるかもしれないけど俺は自由に生きたい。押し付ける形になりそうだけど、もし嫌なら選挙で降りてもらえばいいしね。

 そんな感じでベルナ先生が赴任してきてからさらに学院は楽しく、クラスメイトとも仲良くやれているのは前世の俺から考えると大変な事件である。

 今日はギルドに行こうかと思い、カバンを手にしてクラスから出る。
 最近は兄さんやノーラを待つことなく移動することが多く、ギルドへ行くためリューゼやクーデリカやマキナ、それとお父さんに許しを貰ったルシエールと一緒に居ることが増えた。

 「久しぶりに一人かあ。ミズキさんが居たら一緒に何か魔物討伐を受けようかな? あ、おばあさんのところも行ってないし顔を見せようか」

 あの領主邸の戦いのとき、麻痺薬を打たれたミズキさんは三日ほど寝込んでいたらしい。俺もそのころ入院していたのでギルドで会った時、ふたりして気まずい感じになったんだよね……。
 まあそれはともかく、プランを立て学院の出口を向かう。ふとグラウンドを見ると――

 「やあ!」
 「いい踏み込みよ! でも当たり負けしないように体を使って!」
 「あう!?」

 聖騎士部であろう部活風景が目に入り足を止める。そこには先ほどまでクラスにいたマキナが頑張っていたからだ。

 「……気になる?」
 「うわあああ?! ……なんだルシエラか」
 「なんだとは何よ! ……ああもう、また怒鳴っちゃう……そ、そうじゃなくてあの子、クラスメイトでしょ? じっと見てたから気になるのかなって」

 何故かルシエラが俺の背後に立って話しかけてきたので驚いて俺は尻もちをついた。また妙な質問をしてくるなと警戒しながら答える。

 「……マキナは無理するから気にはなるかなあ。ほら、今も」
 
 俺は斜面下のグラウンドに駆け下りてマキナの前に行く。背後でルシエラが付いてくるのが気配で分かった。

 「いったぁ……」
 「大丈夫? ごめんね、ちょっと強く押し付けちゃったわね」
 「いえ、戦いならこんなことは良くあることですから……って、ラース君じゃない、どうしたの?」
 「マキナの姿が見えたからちょっと来てみたんだ<ヒーリング>」
 「あ……!」
 
 俺はすりむいて血が出ていた肘を魔法でサッと治してあげる。マキナは笑顔でスッと立ち、俺に言う。

 「ありがとう! さ、先輩続きを!」
 「フフ、ちょうどみんなの練習がワンセット終わったから休憩にしましょうか。あれ? 先生?」

 先輩と呼ばれた女の子が走ってくる男性の先生に気づき声をあげる。俺とルシエラはその場を立ち去るきっかけを失ったのでそのまま立ち尽くす。
 聖騎士部のみんなが集まり先生の話を聞いているのを遠巻きに見ていると、しばらくしてわっと歓声があがった。

 「どうしたのかしら?」
 「さあ……って、帰らないのかい?」
 「今日はルシエールが家の手伝いだから私はゆっくりでいいの。あ、こっちに来るわよ」
 
 問題はそこじゃないんだけどなと思いつつ、マキナが嬉しそうにこっちへ来るのでとりあえずスルーしてからマキナへ話を聞くことにした。

 「どうしたの? めちゃくちゃ嬉しそうだけど?」
 「聞いてよラース君! 聖騎士部って他の部活と違って他の国と対抗試合があるんだけど、その試合を出ることになったの!」
 
 ちなみに他の部活は魔法研究部や道具制作部といったものがあり、申請すれば新しく部活を設立することもできる。どうやら聖騎士部は他の国にもあるようで、これは他の国の学院と切磋琢磨させるために学院が作ったのだと思う。
 そんな聖騎士部の対抗試合に、一番年下のマキナが出るというのはなかなか凄いことなんじゃないかな。

 「どこでやるの?」
 「このオブリヴィオン学院よ! こうなったらもっと練習しないとね。試合は来週だから、良かったらお、お、応援に来てね……!」
 「ああ、みんなで必ず行くよ。それじゃ、俺も行くよ」
 「うん!」

 マキナは笑顔でみんなのところへ戻っていった。俺もギルドへ行くかと斜面を登り、学院の外へ向けて足を運ぶ。

 「……なんだい?」
 「じー……あの子、可愛いわよね?」
 
 何が言いたいのかわからないので俺は無言で歩き出す。正直、ルシエラに関わるとロクでもない目に合うのは目に見えているからだ。
 病室で俺にキスをしたらしい彼女はルシエールに相当責められたようで、兄さんが好きだと言う事実も判明した。ノーラがそれについて驚いていたり、兄さんが何とも言えない顔で困惑していたりとあの騒動が収まるまでお見舞いを禁止したくらい、関わりたくない……

 マキナは黒髪だし、日本人の俺としては気になる容姿をしているとは思うけど、それをこいつに言う必要もなくスタスタと外へ出ていく。

 「何よー、冷たくない?」
 「なんでそうなったか考えて欲しいけどね? リューゼの時と違って君自身のせいだと思うけど……」
 「? ……あの時のことなら謝ったし、お礼もしたじゃない」
 「あれで……? ルシエールはいまだにお礼と謝罪したいって言ってるけど? もうお礼とかいいし、君は俺に近づかないでくれればそれでいいよ? 兄さんが好きなんでしょ、ノーラがいるから無理だと思うけど」
 
 すると顔を真っ赤にしてルシエラが言う。

 「む、無理じゃないわよ! 領主だし、貴族だし、複数の奥さんを娶れるはずよ!」
 「兄さんがそう思ってくれれば、だけどね」

 俺がそう言うと、ルシエラは足を止め、拳を握ったままギリギリと歯ぎしりをして俺を見送った。

 はあ……もしルシエールを恋人にしたらセットでついてくるのか……それは、嫌だなあ……そんなことを考えながらおばあさんのところへ行くと『若いのに疲れた顔をしているのう』と言われてショックだった。

 前世の会社で似たようなことを言われたな、と思い出してしまうくらいに。

 まあ、ルシエラはクラスが違うし、お昼も来なくなったのでそうそう顔を合わせることもないと気持ちを切り替えることにした。

 クラスのみんなに伝えて盛り上がり、やってきたのは聖騎士部の対抗試合。他国の人間を見るのは初めてなので、俺もワクワクしながら観戦することにしたのだった。

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