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【書籍化決定】前世で両親に愛されなかった俺、転生先で溺愛されましたが実家は没落貴族でした! ~ハズレと評されたスキル『超器用貧乏』で全てを覆し大賢者と呼ばれるまで~

八神 凪

第八話 特訓と魔女


 「だから俺は虫じゃないって!?」
 「うわ、びっくりした!?」
 「……あれ? 兄ちゃん?」

 目を覚ますと俺を起こそうとしてくれていた兄ちゃんと顔を合わせることになった。レガーロとの会話は覚えているけど、あれは夢だったということでいいんだろうか。……なんとなくもっと嫌な夢を見ていたような……
 それはともかく、スキルを授かった次の日となり、なんだかんだでワクワクだ。

 「おはよう兄ちゃん!」
 「ああ、うん。なんかうなされていたから心配してきたのに損した気分だよ……」
 「ごめんよ、そんでありがとう! 朝ご飯食べに行こうか」
 「今日は目玉焼きにソーセージがついているってニーナが言ってた!」
 「それは嬉しいなあ」

 そんな兄弟の会話をしながら俺の部屋を出て、兄ちゃんはリビング。俺は顔を洗いに洗面台に行く。そこでふと、俺は鏡を見ながらこの家について考える。

 「……そういえば、お金がないのにこの家って立派だよね。もしかしたら、父ちゃんたち昔はお金持ちだったのかもしれないなあ。で、事業に失敗して貧乏になったとか?」

 ……あり得る。
 両親は大好きだけど、どこかのほほんとしていて、人に騙されやすそうな雰囲気を醸し出しているもんねふたりとも……
 
 「この家が最後の砦なのかもしれないし、兄ちゃんと守っていかないとね」

 なんとなくそんな決意が芽生え、俺はいそいそと朝食が待つリビングへと向かう。リビングではみんなが着席し、ニーナが椅子を引いて座るよう微笑みかけてくる。

 「それじゃいただこうか!」

 父ちゃんの言葉で朝食を食べ始め、バターの香りがするロールパンに目玉焼き。そして兄ちゃんが言う通りソーセージが盛られていた。…ん? 父ちゃんと母ちゃんのソーセージは一本ずつで俺達は二本ある。もう食べたのかな? そんなことを考えていると、母ちゃんが言う。

 「ちゃんとお野菜も食べなさいよ?」
 「はーい。父ちゃんの作った野菜、美味しいから好きだよ」
 「僕もー」

 実際美味しいのでフォークが進む。昔の俺はきゅうりが嫌いだったけど、今は全然食べられる、いや、かなり好きかもしれない。

 「お、嬉しいこと言う息子たちだ! 今日も頑張って畑仕事をやりに行くぞー」
 「うふふ、デダイド様もラース様も良い子に育っていますねー」
 「そりゃそうよ、私の子だもん。ニーナは今日町へ行くんだっけ?」

 そういえばニーナはたまに町へ出かけることがあり、朝食の後は次の日まで帰ってこないこともしばしばある。
 基本的にこの家で過ごすけど、どうやらたまに実家に帰っているとのことらしかった。そこで俺はピーンと閃いた。

 「ねえニーナ。俺も町に行ったらダメかな? 父ちゃんも母ちゃんも子供だけで行くなって言うからさ。スキルを授かるときに知り合ったノルトってやつにも会いたいし、ダメかな?」
 「ダメです」
 「早!?」

 にべもなく返された。驚いていると、父ちゃんが困った顔でフォークを置いて口を開く。

 「町にはまた父ちゃんが連れて行ってやるから。というかそろそろ収穫祭の時期だから、畑を手伝ってほしいんだ。採取するだけでいいから、な? 収穫祭になったらみんなで町へ行こう! お祭りだから、きっと楽しいぞ?」
 「お祭り! うん、僕そっちがいい!」
 「うーん……仕方ないかあ……」

 収穫祭とかあったんだ……。この五年間一回も行ったことないから知らなかった……俺と二歳しか変わらない兄ちゃんも行ったことはなさそうだ。それほど俺達を町に近づけたくないらしい。
 でも学院には行かせたいというので、父ちゃんたちには何か考えがあるのかも?
 とりあえず今は大人しく言うことを聞いておこうかと、朝食を終えてから畑仕事を手伝った。

 一応、季節はあるようで今の気候は日本の春とあまり変わらないくらいなので昼を過ぎて動くと少し暑い。父ちゃんと兄ちゃんは家に戻り、俺は外で遊ぶからと畑の近くに居残った。
 もちろんスキルを試すために他ならない
 
 「さて……レガーロの言う通りなら、努力をすれば際限なく強くなれたりするってことだよね。まずは筋トレとダッシュで体力をつけようか! ……リューゼみたいなのに負けないよう強くなりたいし」

 とりあえず俺は今できることからやることにした。魔力も人によって総量があって、体力と同じように伸びるものだと本に書いてあった。

 「ふう……ふう……子供だからかな、二十七歳の前世とは違って体が軽く感じるなあ……」

 ジョギング、腕立て、腹筋、木の棒を剣に見立てての素振りとメニューを作ってそれをこなす。それを三日ほど続けたところ、兄ちゃんも俺が夕方まで戻ってこないのが寂しかったらしく、一緒にトレーニングをするようになった。
 
 朝は畑か母ちゃんの薬を作る材料の採集、昼から夕方はトレーニング。そんな生活がけ始まり、さらい二週間ほど続け

 「なんだ、毎日二人ともそんなに疲れて? 何やってるんだ?」
 「へへー……ないしょー……むにゃ……」
 「内緒だよねー……」
 「こらこら寝るなら部屋に戻るんだ」

 お風呂に入ってソファでゴロゴロしていると父ちゃんにそんなことを言われる。だけど、こういうときってソファみたいな場所のほうが気持ちいいんだよね。
 すると、お風呂から上がってきた母ちゃんが口をへの字にして父ちゃんに話しかける。

 「大丈夫かしら? 山の奥深くへ立ち入らないように言っておかないとね」
 「ああ。”魔女”のことかい? 俺は見たことないけど、山奥に住んでいるらしいね」
 「ええ……薬草を取りに山に入った時、一回だけ見たんだけど、不気味だったわよ」
 「ウチは山に近いから、明日は子供たちの様子を見ておくよ」

 寝ぼけ眼でそんな話を聞く俺……魔女、ねえ? 鼻の長い、真っ黒な服を着たばあちゃんを想像していると、いつの間にか俺は眠ってしまっていた。

 ――そして次の日

 「たあ!」
 「えい!」

 カンカン! と、木の棒がぶつかり合う音が畑の近くで響く。今日は父ちゃんがその辺に丸太を置いて俺達の様子を見ていた。

 「ふう……ふう……まいったよ兄ちゃん」
 「やった! 今日は勝てた!」

 俺達の模擬戦が終わり、結果は俺の負け。やっぱり二歳差は大きいみたいで、同じトレーニングをしていても体の大きさは兄ちゃんの方が大きいので当たり負けをすることが多いのだ。
 地面にへたり込んでいると、父ちゃんが俺達にタオルを頭に乗せながら口を開く。

 「ははあ、お前たち毎日こんなことをしていたのか。そりゃくたくたになるわけだ! 収穫祭の準備で忙しかったから見れなかったけど、これからは父ちゃんも一緒にいるからな」
 「ちゃんとついてこれるの父ちゃん?」
 「ははは、頑張るよデダイド」
 
 そう言って兄ちゃんの頭をタオルでがしがしする父ちゃん。俺はその光景をにこにこしながら見ていたが、ふと背中に視線を感じ振り返る。

 「……!?」

 ガサガサガサ……

 裏山に通じる道に、長い髪をした人影が立っていた。俺と多分、目が合うと人影は慌てるように草むらに逃げ込んでいった。あれが、魔女……? 暖かい気候の中、俺は少し、背筋がひんやりしていた。


 

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