結構マジでやってます。

ノベルバユーザー458883

90話 方向音痴を極めた人。

網野さんに着いて行き、俺達は学園の外に来た。


「これから2人には魔力の使い方について重点的に訓練を行う。」
「ん〜外は気持ちがいいの〜」
「夏なのにここは涼しいね〜」
「2人とも始めてもいいか?」
「は〜い。私はいつでもいいよ。」
「おっとすまんの。続けてくれ。」
「まだ何もしてませんし、始まってもいないですけどね。」
「…始めるからな。」
「網野さん。まずは何からしますか?」


網野さんは朝から訓練モードだが、学園長と先輩はマイペース。
このままほっといてもあれなんで、俺は会話を進める事にした。


「手っ取り早く行くには戦う事なんだが。」
「戦うってまた熊さんとですか?」
「まぁそう思って学園長にも来てもらった。」
「ん?わしが居ると何かあるのか?」
「討伐の話とか話を知ってそうだと思ったので…。」
「それなら騎士部隊に聞く方が早いの。」
「案内お願いしても良いですか?」
「うむ。ワシが先頭行く。和歌か翔が最後尾任せたい。いいかの?」
「なら、俺が後ろ行きますよ。」
「そうか。ならば翔よ。網野殿が変な方向に行かないか気をつけて見てくれ。」
「着いて行くくらい出来ます!」
「そう言って過去に迷子になったのは誰じゃ?」
「っぐ…。」


前は最後尾を網野さんが走り、気が付けば居なくなっていたらしい。
方向音痴とは知っていたが、まさかそこまでと俺は思っていた。
そう、この瞬間まで…。


「はぁはぁ…やっと追いついた。」
「翔か…。」
「翔か…じゃないですよ!なぜあそこで曲がるんですか!?」
「…魔物の気配がして少し前を見ていなくてだな。私は前を走っていたつもりなんだが。」
「ここまで極めるとは思ってませんでした。」
「…すまん。」


ここは森に中で、今は俺と網野さんしかいない。
そこまで速く走っていなかったが、網野さんが突然脇道に逸れたと思ったら走る速度が変わった。
前に学園長と先輩の背中が見えなくなって、追い付く為に速度を上げたらしい。
まぁ2人の位置は地図で確認出来るから、追い付くのは問題ないんだが。


「俺が前走って、網野さん1人になると…うー…あ。良い手がある!」
「どうした?」
「網野さん、ちょっと走り難いですがしばらく俺に合わせて下さい。」
「へ?」


そう言って俺は網野さんの手をとる。


「はにゃ!?!?」
「これなら離れませんよね。」
「う、うぅ…。」
「ん?走りづらいのであれば、抱いて移動でも良いですけど?」
「!!い、いえ。こ、これで。は、走りますぅ…。」
「顔赤いですが、少し休んでから行きますか?」
「だ、大丈夫。い、行きましょう。」


まだ赤いけど網野さんが大丈夫って言っているし行くか。
地図を開いて2人が移動していないには分かってる。
きっと目的地に着いたか、待っていてくれてるのだろう。
思ったほど離れていないので、すぐ追いつけるだろう。


「お、翔達が来たみたいだぞ。」
「お待たせしました。」
「いや。そんなに待っていないが…網野殿は大丈夫か?」
「きりんちゃん顔真っ赤だよ〜。」
「っ!?」
「あ、すいません。少し速かったですか?」
「い、いえ。」
「違うよ翔くん。きりんちゃんは…むぐ。」
「わ、和歌ぁ!?」


学園長と先輩に合流出来て、目的地まで後少しの所で待ってくれていたみたいだ。
先輩が網野さんを見て何か言おうとしたが、隣に居た網野さんは凄い速度で先輩の隣に行って口を塞いだ。
2人は何かコソコソ話しているがここからでは聞こえないな。
そんな中で学園長は俺に近づいて来る。


「翔もなかなかに大胆だの。」
「え?何がですか?」
「何を言う。網野殿のあの態度は、翔の事…むぐ。」
「て、テトラさん!」
「むぐぐ。…ぷは!分かった何も言わんよ。」
「2人ともどうしたんですか?網野さんが何かあったんですか?」


俺が2人に何があったか聞くと、学園長は驚いた顔をする。


「翔まさか!?…いや。ワシからは何も言えん。」
「翔くん…きりんちゃんガンバだよ。」
「う、うぅ…。」


女同士で何か伝わるものがあるんだろうと、俺は深く突っ込まずただ考え込むだけだった。



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