少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

195話 大概な兄弟。

 魔力1,000の氷魔弾を打ち込んだ結果。ミカエルごとそこから後ろの壁全体を氷が覆う。


「……寒い。」
「部屋半分くらい氷だからね。」
『恐ろしい威力だな。』
「「ソラヤだし。」」
「シーもナイトも僕だからって。」


 また動くかもしれないけど。今は皆んなの元に戻るとしよう。


「障壁壊すとか怖い。」
『マレットよ。守りだけ強化しても破られる事はあるという事だ。』
「ど、どうしよう。僕心配になってきた。」
『龍族でもごく一部しか出来んし、人ではブルームくらいしか技は使えんだろう。』
「ブルームさんのような方が増えない事を祈ります。」


 何をそんなに恐がるのか。シーがマレット君に攻撃したりはしないと思うけど。心配するなら僕だな……あの攻撃は薬を飲んで治るとは思えない。不意打ちであの技は来ない事を僕は祈ろう。


「2人とも何に祈っているの?」
「「なんでもないです。」」
「ふ〜ん。」


 マレット君とハモってシーに答える。シーも深くは突っ込んでこないから良かった。


「あの氷は暫く持つのですか?」
「多分。サリエルさんから見てどう思います?」
「魔力障壁を破っての攻撃ですからね。自力で出るにしても、魔力を行使して破るにも時間はかかりそうですが。」
『あの氷は自力だと我でも10分はかかると思うぞ。』
「じゃぁ持って10分?」
「龍族の自力ですからね。ミカエルでもそれ以上はかかるかと。」


 サリエルさんとリナが言うに、暫くは氷は割れる様子もない。かと言ってここからでる方法も分からない。


「ここを出るにはどうすればいいのかな?」
「魔力での転移ですから、それでしか出れないのかもしれません。」
「サリエルさんは出来ます?」
「力を制御されているのをなんとか出来れば。おそらくですが、この部屋の何処かにその仕組みがあると思うのです。」
「ちょっと探してみようか。」


 氷で覆われた中にあったらどうしよう。とりあえずはこの部屋にある、ミカエルが座っていた椅子以外は何もない。サリエルさんと一緒に椅子を調べてみる。


「良く見れば色々な術式が刻み込まれていますね。」
「そしたらそれを解除すればいい?」
「そうですね…………。」


 そう言って椅子を詳しく見るサリエルさん。


「全然分かりません。解析して解除するなら、壊した方が早そうです。」
「じゃ壊しましょう。誰にお願いしようかな。」


 銃で聖魔弾を撃ち込んでみるか……それだとミカエルの氷ごと巻き込みそうだな。出来れば爆発や火を使わない方法がいいな。


「クロイ〜。この椅子を爆発とか炎系以外で壊せないかな?」
「ふむ。」
「あまりミカエルの氷に触らないでやりたいんだよね。」
「それであれば一点集中のレーザーの様な攻撃がいいですな。」
「ちょっとやってみて。」
「畏まりました。それでは……光の精霊様、お願い致します。」


―キラ……フィィィィ。


 クロイの前で一度光り、光が少しずつ集まりだす。


「狙うはあの椅子で御座います。名前?ふむ……一筋の光レイ オブ ライト。」


―バァン!!


 何かが割れるというか、爆発したような音がした。そしてクロイの目の前にあった光は一直線で椅子まで伸びた。


「…………何が起こったの?」


 光が止んだ後。その通ったであろう道に椅子は無くなっていた。


「これはまた……。」
「クロイの禁止魔法がまた増えたな。」
「ほほ。ローゼは手厳しい。」
「いやいや、あの威力は無しだろう?」
「精霊様が頑張っただけですぞ?」
「そういう問題ではない。」


 一部始終を見ていたローゼからは、当然の様に禁止令が出た。


「えぇぇぇ〜!?そんなの有りなのですか?」
「サリエルさん驚き過ぎですよ。」
「これが驚かずに入れますか。貴方方人間はこうもとんでもない存在なのですか?」
「そんな事ないよ。クロイが異常なだけ。」
「ほほ。ミカエルごと氷漬けにしたソラヤも大概ですぞ?」
「お二人共が大概な存在です。」


 サリエルさんが凄く驚いていた。まぁ僕もまさかここまで凄いとは思わなかったけど。そして僕とクロイは大概な兄弟として認識されました。


「どうですか?」
「ええ。問題ないです。上までの距離を見ますので、少々お待ち下さい。」


 椅子がなくなり、サリエルさんに力が戻る。


「皆んな。一度ここを出よう。こっちに来て。」


 皆んなでここを出ようとした時。事態は急変した。


―ピシ。


「ん?今何か音がしたような?」


 氷漬けになっていたミカエルを見る。すると羽根が光り、2枚だった羽根が4枚へと増えていた。


「この力は!?早く私の近くに!」


 慌てた声のサリエルさん。


―ピシ、ピシ、ピシ。


 どんどん氷に亀裂が入る。


―ピカ!!!


 あまりの眩しさに目を閉じた。そして次に目を開けたら、見た事ある景色に。






「ここは教会の前?そうなると外に出られたのかな?」
「………………。」
「ん?サリエルさ、」
「ごはぁ!?」


 僕の目の前で血を吐き倒れるサリエルさんを慌てて受け止める。


「サリエルさん!」
「ソラ…ヤ。ご無事……で。ゴホゴホ。」


 受け止めた手が温かい……見ると血がたくさん出ている。


「母さん!スキルでサリエルさんに!」
「わ、分かった!」


―ブワッ。


「これは、傷が塞がっている?あれ程のダメージが一瞬で?」
「ふぅ〜間に合って良かったよ。」
「エイリさんが?確かソラヤの母君と……成る程、ソラヤやクロイが強い訳ですね。」
「空ちゃんもクロイもすくすく育っただけですよ。」
「育ち過ぎな気もしますが。ふふ。」


 傷は塞がり笑顔が見えるくらいには回復した。さっきの一撃は転移の瞬間と重なって何も出来なかった。守ると言ったのに悔しい。


―ゴゴゴゴゴ……。


 地面が大きく揺れ始めた。


「なんだ、なんだ?」
「神の怒りが!?」
「うわ。」


 周りの天使達が慌て始める。地面が揺れるって事は、ミカエルは地下か。ここでの戦闘は避けたい。せめて周りを避難させてから。


「ソラヤ、来ますよ。」
「っく。そんな時間もないか。」


―ズガァァン!


 地面から大きな光の柱が現れ地面に大きな穴が空く。


「貴様ら……逃がしはせん。ここで消えてもらう。」


 穴から出てきたのは、始めの見た目とはかけ離れた別人の様な天使が現れた。

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