少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

185話 天界での初陣。

 朝になり僕らは出発する。


「では、ちょっといってきますね。」
「気をつけて…………いってらっしゃい。」
「うん。いってきます。」


 昨日はおかえりを言って、今日はサリエルさんがいってらっしゃいと言ってくれた。やる事やったらまたこの門を通るし、僕もいってきますと返した。


 そして門を出る。


 草原に花畑があったりと、まさに思い描く天使の住む場所。


「綺麗な場所だね。メイクは懐かしいとかになるのかな?」
「別に記憶もないし。どちらかと言うと洞窟みたいな暗い所の方が落ち着く。」


 人それぞれなんだろう。まぁそれはいい。


「出てすぐの教会って言っていたけど、きっとあれだろうね。もっと小さいイメージだったよ。」
「そうです?大天使と言うくらいですし、逆に小さいと思うくらいです。」
「そんなもんか。まぁいいや。柵も何もないし、正面突破?」
「それもそうですが。その途中に見えるあれは襲って来ませんかね?」


 クロイと話していて僕も気になった。


「ホーリー・キマイラ。レア度BでLv70だよ。」
「ありがとう母さん……70?」
「うん。70。」
「強くない?襲って来ないならいいけど。もし襲って来る奴ならこっちから先制したいけど。」


 広がる草原に所々に花畑があるくらいで、隠れて進むような所はない。


「あれがもしも襲って来るとしたら、この場所こんなに綺麗かな?」
「ふむ。ですが、ここに住む天使は襲わないとかでしたら分かりませんぞ?」
「それ怖いね。仮に近づいて戦闘になったとして、僕でLv50だから勝てるかな?」
「ソラヤがそれでもわたくし達の倍ありますし。」
「ん〜一度戦闘したいね。あれは教会に近いから、少し離れた所にいるやつ狙ってさ。」


 初めて来る場所だし。一応気をつけた方がいいって事で、門から離れ過ぎず辺りを散策する。


「あれなんかどうかな?少し距離あるし。母さん、あれはLvいくつある?」
「どれどれ…………どれ?」
「あれだよ。指差してる方。」
「いるような、いないような。遠すぎて分からないよ。」


 遠いかな?僕は見えてて狙撃出来る距離なんだけど。皆んなに聞いても見えたのはリナだけだった。


『目が良すぎるな。我でも辛うじて見えるくらいだぞ?』
「そんなに?この距離なら狙撃出来るし、いいと思ったんだけど。」
『ソラヤの武器でここから狙ったとして。音で近くのあれが来そうだが?』
「……もう少し近づこうか。」
『ソラヤ……お主その後ろに隠した武器は何だ?』


 さて行こうか。皆んなが少し笑い、リナとローゼが溜息をつく。この花畑と草原の平和すぎる感じに気が緩んでしまう。


「見えた。ホーリー・キマイラ。レア度BでLv70。さっきのと一緒だね。」
「さっきのと距離はある?じゃ、1発……。」


―ガシ!


「ソラヤ。ここでその弾を込めた意味は?」
「そんな怖い顔でどうしたのメイク。純粋に一番ダメージあるかなって。」
「主に地形にね!撃つなら風魔弾で頭狙って。」
「いいの?あれ一撃で倒せるか分からないけど?」
「一撃にこだわるのは何?いいからやるの。」
「分かった。」


 そう言って3発の風魔弾を貰った。


「一つはホラゾンに。1発目は100で、次弾は溜められるだけ。」
「了解。」


 今まで戦って来たからか、メイクの指示は的確って思える。でもあくまで僕に対してのみ。


「ゴウは女神スキル無しで。前からソラヤを守って下さい。」
「任せろ。」
「エイリはゴウ受けた瞬間から回復を。」
「分かったよ〜。」
「マレットさんは、状態異常や魔法の防壁は出来ますか?」
「はい。お任せ下さい。全員を囲むものでいいですか?」
「前面厚い防壁とドーム状の防壁と言えば、どちらがすぐ切り替えられますか?」
「前面から広範囲にするのは早く出来るかと。」
「なら前面で構えていて下さい。」


 さすがローゼ。マレット君の事もよく分かっている。分からない内容は聞いているし、これはもうまかせてもいいな。僕は前の獲物に集中しよう。


「私が鞭で翼を抑えます。クロイは足を凍らせて下さい。」
「ほほ。畏まりました。」
「ブルームとナイトは横から腹部を狙って。」
「うん!分かった。」
「ええ。いいわよ。」


 そして少し考え込むローゼ。残るはリナとメイクへの指示。


「メイクさんはソラヤの監視と、余裕があれば爆破以外の投擲をお願い。あくまでもソラヤを抑える事が優先で。」
「もちろん。」
「そんな指示ある?」
「重要だ。クロイに関しては私が見張る。」
「ほっほ。」


 僕を見張るのが指示ってどうしたものか。何も言わずにぶっ放したり……しないはず。


「そしてリナさんには正面からの攻撃とフォローをお願いしたいわ。」
『我にも役割があるのだな?』
「はい。盾や防壁で耐えた後。正面から相手を抑えるか攻撃で。その際は横からの攻撃を殺さないようお願いしたい。可能でしょうか?」
『無論だ。それと我にも皆と変わらぬ接し方で構わぬ。ソラヤの友は我の友である。』
「分かりまし…ええ。分かったわ。」


 尻尾を振り満足そうなリナだった。僕には分かる。友達が増えて嬉しいんだと。


「ソラヤ。そろそろいけるか?」
「あ。うん、いつでも。」
「事態が変われば追って指示を出します。」
「じゃ、初陣は頂く……よ。」


―ズゥゥゥン!……ガガ、ガン!


 頭に命中はしたけど、堅すぎるか少しずれて弾かれた。


「硬いな〜少しずらされた。」


―ガチャ。


「すぅ……はぁ……。」
「次もある。柔らかそうな所を狙おう。」
「うん。」


 迫ってくるキマイラ。だけど僕は慌てる事なく魔力を込める。前はメイクと2人だったから焦る事もあった。だけど今は違う、仲間が…家族がいてくれる!そして柔らかそうな所と言えばあそこしかない。


「3…2…1…そこだ!」


―ズゥゥゥン!……ザシュ!


『キェェェ!?』


 右目に命中した。貫通こそ出来なかったが、片方の視覚は奪えた。しかし勢いは止まらない。僕に向かって大きな爪が迫る。


―ギン!


「ぐぐ!」
治癒ヒール!」
「その目だからか?踏み込みが少し甘い。」


―シュルゥゥ、スパン!
―ピキ……パキィィン!


「ブルーム!」
「行くわぁぁ!!」
「「とりゃぁ!!」」


―ドゴ、ズゥゥン!


『キィ、ガァ!』


 翼を広げるようとローゼの鞭を引っ張るキマイラ。


「っぐ!私の力だけでは!?」


―パシ。


『我が支えよう。』
「前面の攻撃は?」
『我はこれが最適だとフォーローしたまで。』


―ズゥゥン!ザシュ!


『キェェェ!!??』


 僕は父さんの盾の間から、ホラゾンに溜めていた風魔弾でもう片方の目に当てた。

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