少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

179話 最後の出番。

 最後は僕の番が来た。
 戦いの場はメイクがある程度作ってくれた。


 爆発による地形の変化は隠れるための岩場を作り、自分を映し出すような氷山は相手を撹乱させるにはもってこい。


 メイクはきっとそこまで考えてこの場を作ってくれた。これを活かさないわけにはいかない。


「ふぅ……やってみたい事全部できました。」
「メイクちゃん凄いね。」
「と言ってもソラヤの真似事です。銃と言うのは扱えそうも無いので、ナイフに属性と起爆の術式が上手くいきました。」
「あれって私でも出来るかな?特に爆発するのはいいなって思った。」
「ブルームちゃんは近接だから……。」
「やっぱり無理かな。」
「いえ、効果を自分より前だけにすれば。いい事思いつきました!」


 物騒な話し合いが聞こえてきた。それを聞いていたローゼはその話に入って、開発時から安全性を考慮してくれる。不安だけど、何とかなりそう…多分。


「さて、準備はいいか?」
「あ、ちょっと一つだけ武器を取ってきても良いですか?」
「さっき使っていたもの以外にあるのか?」
「せっかくなので、僕もやってみたい事があるんです。」




 シーとローゼと話すメイクを呼ぶ。


「何〜?」
「頼んでいたやつ出来てる?」
「あるけど。普通のやつだけだよ?さっきの考慮して色々付け加えようと。」
「その改造する前に使ってみたいんだ。」
「良いけど……はい。」
「ありがとう。」


 メイクから預かった物を腰に装備する。


「もう平気か?もう一つの武器ってそれか?」
「はい。普通のやつですけど。」
「普通ねぇ……あの子が作ってソラヤくんが使うのだろう?ワクワクするな。」
「そんな特殊な加工はしてませんよ。たぶん。」


 何もしてないよね?振り返ってメイクを見る。その立てた親指に何の意味があるのか。


「考えても始まらないし、始めちゃいましょう。」
「そうね。今回はソラヤくんが剣を持つなら私も使おう。」


―バキ。ズズズ……。


 何にもない空間に手を入れ剣が出てくる。その禍々しい感じの剣を使うんですか?


「さぁ。どこからでもかかって来なさい!」
「それじゃ、遠慮なく。」


―ガチャ、ズゥゥン!
―ギン!


「その武器も使うのだな……おや?」


 牽制で撃った銃弾を難なく弾く王妃様。その隙に氷の山に身を隠す。さてと、勇者になって上がったスキルだけどどこまで通じるかな。


……。


―ギン!


「上手く気配を消しているが、私には通じんぞ?」
「わざわざ教えてくれてありがとうございます。」


―ギンギン!


 剣もいい感じだ。メイクにお願いしたのは重すぎず、それでいて丈夫であればいいって言っておいた。王妃様も本気ではないと思うけど、欠けたり折れたりって心配は今の所ない。


―ギンギンギン!


「どうした?そんなものではないだろう?」
「えぇ。少し強度の心配がありまして。どうやら問題ないようです。」


―ギンギン!ギンギン!ギギン!


「少し速くなったが、受けられんほどじゃないな。」
「そんだけ大きい剣振り回す王妃様が凄いだけですよ。」
「そうか?」


―ズゥン!
―ギン!パキ。


「む?凍った?しかしこれくらいなら…。」


―ボォゥ。


 剣が赤く光り凍った剣を溶かす。やっぱりあの赤いオーラみたいなのは火属性か。


―ズゥン!ズゥン!ヒュン!
―ギンギン!ギン!


「器用な攻撃ではあるが、剣も片手で扱うから軽いぞ?」
「いいんです。これくらいは想像の範囲です。」


 じゃ、ちょっとだけ好きに暴れてみるか。


―ズゥン!
―ギン!


「む?重い。」


―ズゥン!ズゥン!ズゥン!


 重魔弾を撃ち込んで、少しずつ距離をとる。重くなったはずだけど剣速は変わらず。ホラゾンのハンドガンじゃそこまで弾速も高くないし。
 そして氷の山に隠れていつもの武器を構える。


「魔力は100。いけ!」


―ズゥゥン!バリ、ビュン!


「っと!?」


―ガチャ、ズゥゥン!バリ、ビュン!


「わわ!」


―ガチャ、ズゥゥン!バリ、ビュン!


「今度はこっちか!」


 氷の山越しに風魔弾を撃ち込む。始めは100で撃ったが、その後は連続で撃てる限界値50で。
 更にスキル【空間管理】と【気配Lv10】を使い、受けずに避けてるのは確認出来ている。さっきのハンドガンと比べ弾速は倍以上だからか、受けずに躱しているんだろう。そして次打ち込むのは……。


―ガチャ、ズゥゥン!


「その攻撃は見切っ……」


―バリバリ!


「っく。ちょっと痺れたわよ。」


 これでいい。今の王妃様は受けるか避けるかの選択肢が出来た。そしてら次の弾は……。


―ガチャ、ズゥゥン!


「その速さは慣れまし…」


―キラ、ドゴォォン!


「そう。受けると思いました。」
「…………面白いわぁ。人間にしておくには勿体無い。」


 赤と黒の煙が勢いよく飛び出す様に見える。魔力なのか闘気なのか分からないそれは、周りの氷の山を溶かしていく。


「さぁ残り5分を切ったわよ。とことん戦いましょう。」


 僕は開けてはいけないモノを開けてしまったのだろうか。


「僕のスタイルとは違うんだけど。そんなギラギラで向かって来るなら真正面から受けるしかないよね。」


 銃をアイテムに戻して、剣を構える。


「女神に愛され、龍神と肩を並べ、人間界の勇者として……青海アオミ 空矢ソラヤ参ります。」
「こい!お前の全てを蹴散らしてやろう!」


 魔神対勇者のラストバトルが始まる……。

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