少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

162話 守るべき存在③

 お城に戻ってきた。


「マレット君!またお願い!」
「は、はい!」


 目の前に現れた黒い渦に飛び込む。


「よっと。ありがとうマレット君。ただいま。」
「いえ、これくらい大丈夫です。天使達は大丈夫でした?」
「うん。何の問題もなかったよ。さっきのビームも無かったし。」
「あの規模ですから、おそらく協力魔法を使ったんだと思いますよ。」
「あーそれで無かったのか。納得。」


 マレット君に言われてしっくりきた。リナの咆哮にびびってたし、協力するどころじゃ無かったか。そして、黒い渦からメイクが出てくる。


「よいしょっと。マレット君、ありがとう。」
「いえいえ。メイクさんもお疲れ様です。」
「メイク?パーティの欄に載っていた子か。」
「ん?パーティ欄?」
「ほほ。それはわたくしが説明しましょう。」


 クロイが事情を説明してくれた。僕がいなくなりどこに行っていたか、無事も分からない時。ふとメニュー欄のパーティ枠にメイクが増えていた事。僕のLvも上がって安否を確認したと言う事を。


「あー魔界に居てもこれ見れたんだ。」
「そうですぞ。ソラヤの無事が分かるまでブルームは―。」
「わぁー!わぁー!いいの、言わなくて!」
「ブルーム泣いて泣いて、大変だったんだから。」
「ナイト姉!?」
「そっか。ごめんね、心配かけたよ。」
「いいの!ソラヤが無事なら!改めて……おかえりソラヤ。」
「うん。ただいま。」


 皆んなが無事で良かった。今はこれだけで嬉しい。


「それでこの可愛い女の子がメイクさん?」
「か、か、可愛いなんて!とんでも無いです!あなたの方が100倍可愛いですよ!」
「そんな否定しなくても。あ、私はシー・ブルーム。よろしくね。」
「メイクです!よろしくお願いしますぅ!」


 手を出して握手を求めるシー。その手を両手で掴み、ぶんぶん振るメイク。テンパり過ぎだろうって思うけど、あまり人と接して来なかったから、勝手が分からないんだと思う。同世代の女の子って会ってないし。


『我も……話に!』


―ボォォン!


 煙に包まれながら、空から降りてくるリナ。


―ビターン。


 目の前に居た2人が、僕に振り返り手を近づけたのが最後に見えた光景。そして僕の前が真っ暗になる。


「少し痛かった。」
「「ソラヤごめん!!」」


 シーとメイクが謝ってくる。リナが降りてきたタイミングだったし。何となく想像はできる。


「もしかしてリナが?」
「ギリ服は着ているけど。見せられないよ。リナ早く服を整えて!」
『仕方なかろう。空中で着替えて着地は難易度が高かったのだ。』
「ぐは。」


 マレット君の声だけが遅れて聞こえてきた。


「マレットのえっち。」
「そんなフリージュ姉様!?不可抗力ですよ!」
「ほほ。羨ましい限りですな。」
「クロイは黙っていろ。締め上げるぞ?」
「ほほ。」


 クロイはきっとローゼに何かされてるな。前にもこんな光景があったようなぁ。何だっけ。


『良し、バッチリだ。改めて、龍族のリナ・スウィーラだ。縁あってソラヤと旅をする事にした。よろしく頼む。』


 何事も無かったようにリナが皆んなに挨拶をする。そして僕の拘束も解かれた。マレット君は鼻血で、クロイは目元に鞭の後。父さんは特に後はない。こう言う時の母さんは対応が早い。


「やぁソラヤ殿。久しぶりだ。」
「国王様?何故ここに?」
「ここは元々私の部屋だった。仮面の者達に助けて貰ったのだ。」
「あ〜よく無事でしたね。」


 天井がほぼないこの見晴らしのいい部屋。今では部屋だったかどうか分からないくらいボロボロである。


「アインツとアハトが守ってくれたのでな。」
「「は!有難きお言葉!」」
「硬いな。まぁよい。早速で悪いのだが、一緒に街を見にきてくれるか?」
「あ、そうだ。まだ街には天使達いるかもしれませんね。分かりました。皆んないいよね?」


 僕の仲間達は皆んな頷いてくれた。


「ここに居ても、いつ崩れるか分からん。移動しながら状況を教えてほしい。」


 そして国王様に言われ門まで走る。


「そうか。仮面のギルドと部隊長達が……。ゆっくりもしてられんな。」
「国王様もしや戦う気ですか?」
「そのつもりだが?使える手を使わないのは愚策だろ?」
「国のトップが怪我をして、業務や士気に支障でる方が愚策と思います。」
「アインツはきついな〜。しょうがない、お主らが敵を1分で倒せなければ交代だ。」
「1分ってそんな無茶な……。」
「ソラヤ殿とその仲間達はやっていたぞ?」


 そこで僕らを引き合いに出すのはやめて欲しい。そして僕も戦うのはやめた方がいいと思う。怪我した日にはこのボロボロな王都を誰が指揮するの?でも相手は国王様だし、一塊の冒険者がとやかく言う事じゃない。


「もうすぐ門です。戦闘は……無いようですね。」


 門前では地面に座り休む兵士達の姿が。


「皆の者。ご苦労であった。」
「「「こ、国王様!?」」」
「よい。そのまま座っておれ。アハト、ここに残り情報をまとめよ。我は街を見てくる。」
「は。ソラヤ殿もいるし大丈夫かと思いますが。くれぐれも無茶はやめて下さい。」
「はは。分かっておる。行くぞ。」


 そして足早に行動を開始する国王様。この人フットワーク軽いな。それに動きを見るにそこそこ強くないか?あれ、もしかして人間界の王も強いのか?疑問に思っている前に上から人が降ってくる。


「クロイ。」
「ほほ。お任せを。」


―ふわ。


「わわわ。なんか浮いてるよ!?」
「危ないので空気のクッションを作りました。」
「あ、お気遣いありがとうクロイさん。」
「いえいえ。ノインさんはまだ戦闘中ですか?」
「倒したんですけど。魔力も少なくてるので、着地に使うのもったい…なくて……国王様?」


 空気のクッションで体勢を崩していたノインさんが、こちらに向き直り国王様に気がついた。


「ノインか。ご苦労だな。街の様子を聞いてもよいか?」
「は!3、4番隊が北区。5、6番隊が西区。7、8番隊が東区。9番隊とギルドの方々ので南区となっています!」
「(ソラヤ。お姉ちゃんが騎士みたいだよ?)」
「(ノインさんはあれでも9番隊の隊長さんだよ。たぶん。)」
「どうしたの?シーちゃんにソラヤ君。」
「「ナンデモナイデスヨ。」」


 しゃがみ込んでこっそり話していたはずなのに、逆に目立ってしまったか。あの人もお流石に空気は読むのか。想像では国王様の前でも、いつも通りかと思った。


「ノインは初めは酷かったものですよ。」
「ちょっとアインツ様!?」
「暴れて物を壊すは、言葉遣いも酷くてな。」
「そ、そんな事ここで今言わなくても!?」
「妹君と会える機会もそうそうないからな。」
「シーちゃん耳を塞ぐの〜!」


 何やら面白そうだけど、このまま脱線させてもしょうがないし。


「ノインさんの話は後日聞きに行くとして。」
「カケルさん!?」
「僕らは南に行ってギルマスと合流しよう。」


 ノインさんを話を流して、僕は皆んなに告げて移動を開始する。国王様もついて来ようとしたけど、兵士全員に止められここで待機する事になった。


「つまらんなぁ。ソラヤ殿!」
「はい。何でしょうか?」
「何匹か敵を討ち漏らしてもいいからな。」
「「「国王様!」」」
「冗談だ。そう怒るな。」


 この人は本気だったぞ。


「ソラヤ殿。」
「はい。」


 今度はなんだろう?


「守るべきもの……見失うな。間違えば私の様になるぞ。」
「「国王様……。」」
「?分かりました。では行ってきます。」


 何かあったのか?さっきと違って、真面目な顔で話している。どこか寂しそう。


 守るべきもの……心で言ってみる。そして僕は振り返り仲間を見る。


「さぁ皆んな行こうか!」

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