少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

159話 守る者と戦う者。

あれから私達は強くなる為に戦った。戦って、戦って、戦い続けた。


「たくさん入ってきていた経験値も、だんだん入りづらくなって来たね。」
「この辺も狩り尽くしたしな。おそらく我々のLvが上がったからだろう。」


ローゼの言う通りかも知れない。あの日から街と山を行き来して、もう一ヶ月になる。


「たまに出てくるレア度高い子はいいけどね。私達がLv34でナイト姉は48もあるもんね。」
「この辺りじゃもう退屈かしら。」


そして敵を狩り尽くして、復活するまで休憩となる。


「ねぇ豪。向こうで何か煙が上がっていない?」
「あっちは街か?しかし木が邪魔でよく分からないな。」
「私がちょっと登って見てくるわ。」
「ありがとうナイト。」


登ると言うより空を飛んでいるナイト。最近は空中で止まることもできるようになった。


「んしょと。やっぱり街ね。しかも範囲が広いかも知れないわ。」
「心配だね。どうするブルームちゃん?」
「ここで待つのもなんだし。帰りましょう。」
「そうね。準備するわ。」


私は少し嫌な予感がして急いで街へと帰る。


……。


そこは火の海となっていた。何がどうして?


―バキン!


音がして空を見上げると誰かが落ちてくる。


「ぐが!?っく!」
「お姉ちゃん?」
「シーちゃん!無事だっ、がふぅ。」
「エイママ回復を!?」


回復して落ち着いた様子の本当のお姉ちゃん。今は王都の騎士団の隊長さんをしている。


「空での戦闘は慣れないからきつかったわ。」
「空でのって。一体何があったの?」
「上を見てみなさい。」


言われて上を見上げると、何かが飛んで行った。


「何か飛んでた?」
「そう奴らは……来るわ!離れて!」


―ゴォォォォ!


「たぁぁぁ!てやぁぁぁ!!」


飛んできた光る何かを剣で切り裂くお姉ちゃん。


「やだわ〜人間は野蛮ね〜。」


私の前に現れたのは。人の顔をした、白い羽根を背中に生やした天使だった。


「これがなかなか強くて困っているの。」
「エイママ。」
「えぇ。」


―リィィィィ…


「天使族でLv50あるわ。光魔法もLv6あるから気をつけて。」
「ほほ。中々Lv高めですね。」
「ふーん。光魔法が6ねぇ。ちょっと頑張ってるかしら。」
「ナイトが言うと皮肉に聞こえるな。」
「あら。ローゼ。私は褒めているのよ?」
「そうか。なら良いが。油断はしてくれるなよ。」


Lvと気をつける点を即座にエイママが教えてくれる。それを聞いてクロイもナイトも感心するだけ。それにいつもの様にローゼが注意する。


「貴方達はいつも冷静ね。そう、Lv50か。どうりで疲れるわけね。」
「あら、ノインが弱音なんて。らしくないわね。」
「弱音も言いたくなるわよ。もう何匹倒したか。」
「倒してるならいいじゃない。」
「少し疲れたの〜。」
「しょうがないわね。お姉さんが相手をしてあげるわ。」


不敵に笑う天使の前にナイトが立つ。


「あら、私はそこらの天使と違うわよ。」
「そこらでも何でもいいわ。最近は退屈してたの。楽しませて頂戴。」
「ふふ。可哀想な子。貴方はここで終わりなのに。」


―ギリィ……。


「ぐぁ!?は、離せぇ……!」
「嫌だわ。Lv50はなんなの?弱すぎるわ。」
「ぎ、ぎざまぁ……。」
「それじゃ、さようなら。」


―ドゴッ!!


「がは…………。」


ナイト姉に瞬殺された天使を見て、ノイン姉が引く。


「容赦とか手加減って知っているの?」
「殺さなきゃいいでしょう?」
「え?そう言うもの?」
「殺していいならもっと早く終わるけど?」


魔物に対してはもっと容赦がないのは私は知っている。初見での戦闘なのに、魔法は一切使わず物理攻撃のみでボコボコにしていた。


「それでノイン姉。この天使達は何?」
「分からないわ。突然攻撃してきたのよ。避難は副隊長や兵士達が行い、根本を数減らせばいいかと何名かは天使討伐してるわ。」


殲滅か避難の誘導、私達はどうすればいいか。


「私達はどうした方がいい?」
「各個撃破を出来るならお願いしたいわ。うちの兵士達じゃ役不足でね。」
「分かった。ノイン姉は一緒に行く?」
「私はパーティ向きの戦いじゃないから。一人で動かせてもらうわ。シーちゃん!くれぐれも無理はしないように!エイリさん回復ありがとう!それじゃ!」


慌ただしく走り出すノイン姉。置いてかれた私達は状況を確認する為にも、一度ギルドへ向かう事にした。


「ブルームさん!」
「状況は?」
「あ、大変なの!力を貸して欲しいの。」


いつも情報をくれる受付嬢。簡潔に状況を教えてくれる。


被害が大きい所は全部で3カ所。
1つ目は正面入り口。ここは仮面のギルドと複数の冒険者で止めているとの事。
2つ目は住宅街。空から来る天使を部隊長達が迎撃している。
3つ目は王城。王様の意向で住民を優先と、警備が一番薄い。


「それなら1つだけね。皆んなお城に行くよ!」
「ごめん。あとで応援を送るから!」
「分かった!」


皆んなと王城へと走る。その途中見えているのは燃えた街に逃げる住民。指示を出す兵士に戦う者。


「そんなに急いでどこへ行くのかしら?」
「ローゼ、少し止めて。ナイト姉!」
「任せろ。」


―シュルゥ……パシ!


「きゃ!何?これ。」
「「てやぁ!!」」


―バキバキ。


「ごふっ……。」
「次行くよ。」


飛び出してきた天使をローゼが鞭で止め、意識を奪う為にナイト姉と挟み撃ちで一撃。再び走り出す。


「ほほ。あれは痛いですね。」
「痛いですまんと思うが。」
「いいのよ。街を壊す悪い人だし。」


最後尾を守ってくれる3人の声が聞こえてくる。最近耳が良くなったか、周りの声が聞こえる気がする。敵の声も聞こえて便利だからいいんだけど……。


「あれは仮面のギルドか。格好いいな!」
「あぁ。颯爽と現れて敵を殲滅。痺れるぜ!」
「やっぱり11番のブルームちゃんがいいぜ。」
「ばっか。12番のローゼさんだろ!あの鞭で叱られたいぜ。」
「うわぁ、お前引くわ。」


街がこんな状況なのに、お気楽なもんだと思う。結果的に聞かなくていい事も聞こえてくるから、邪魔だと思うときもある。


そうこうしているうちに王城に着いた。


「大混戦だね。皆んな逸れないように。中央突破するよ!」
「最近ブルームがソラヤに似てきたと思うんだ。」
「ふふ。ブルームはソラヤをずぅ〜っと見てるからね。」
「こんな時にローゼもナイト姉も何言ってるの!」
「「別にぃ〜」」
「もう!ほら行くよ!」


突っ走らないように、時々ガス抜きをしてくれる2人。


大丈夫、今の私はちゃんと見えている。


ソラヤが帰るまで、みんなは私が守るんだから!

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