少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

155話 呼び捨てはいけないらしいよ。

 街から飛び上がり一気に上空までリナが飛ぶ。


『いつまでそうしている?我に攻撃当てたら承知しないぞ?』
「は、はいぃ!」
「あ、復活した。」
「じゃ、僕らも準備しようか。」


 悠長に喋っているが、遠くの方に近づいてくる人影が見える。


『む?あれが相手でいいのか?』
「はい。魔王軍は一度全軍下げて、街中の門の警護に力を入れてもらってますので。」
『だそうだ。2人とも準備はどうだ?』
「私はいつでも〜ストックも作りつつ投げるから。」
「僕も大丈夫だよ。タイミングはマレット君に任せる。」
「はい!」


 そして目でも確認できるくらい近づいてきた。


「メイクさんお願いします。」
「分かった〜どんな感じかまずは1つずつね。」
「了解。僕もそれくらいが助かる。」
『我はどうすればいいのだ?』
「リナはなるべくこのままを保って欲しい。大きく動くと狙いうのが難しくなる。」
『努力しよう。』
「リナ様は僕が全力で守ります!」
『うむ。頼んだぞ。』


―チャキ……フィィィィン……。


 メイクが投げた。遠くまで飛ばせるものって何かと思ってたけど。


「お皿?」
「ちょっと違うよ。見た目はお皿に見えるけど。空気の抵抗なくす為に真ん中は開けて、遠くに飛ばすように鉄製で重さを増やしたの。」


 丸くてお皿の真ん中を開けて、鉄製ってチャクラムか?それを何も言わずに作るって、想像力も柔軟性も流石の生産者だと感心した。


「あれに当てるのか。しかも速いし、結構遠くまで行くね。」
「ソラヤなら大丈夫でしょ?」
「そう言われたら外す訳にはいかないよね。」


―ガチャ…ズゥゥゥン!


 リナから十分距離を取った事を確認してから、僕は聖魔弾を撃ち込む。


―キラッ、ドォォーン!!


 見事命中させた聖魔弾は、遠くから見えていた人達を巻き込み大爆発をした。


「えぇぇぇ!!」
『うお!想像以上だな。』
「ね?危ないでしょ?」
「そうですね……。」
『だが派手と言う意味では最高だな。』
「でしょ?」
「ソラヤ。私が投げたの以外はダメだからね?」


 メイクに再度釘を刺された。大丈夫だよ。今まで一度も僕自身で自爆したことはない!


 とは言わず行く末を見守る。


「煙で良く見えませんね……。」
「晴れさせる?上手く当たればだけど。被害もないし大丈夫な方法があるよ。」
「ん〜あれなら街に被害は無いからいいかな〜?でも100までだからね?」
「100ね。了解。」
「え?話が見えないんだけど。大丈夫なの?」
『メイクが大丈夫と言っているんだ。大丈夫だろう……多分な。』
「ふ、不安だ!?」


 心配そうに聞いてくるマレット君。リナはメイクが大丈夫だろうと言うから信じているようだ。おかしい、僕も大丈夫と言ったはずなのに。


―ガチャ。


「MPは100で。出来れば何か動いたものに当てたいな。」


 煙が渦巻く中に、ちらっと光が見えた気がした。


「みえる!そこだ!」


―ズゥゥゥン…ブォォォ!!


これ、一度言ってみたかったんだよね。


「あれは防御魔法でしょうか?」
「ですね。ソラヤ君の攻撃で壊れない防護魔法か……。」
「それじゃソラヤの攻撃が弱いって聞こえるけど?」
「別に僕はそんなつもりじゃ!?」
「ソラヤは凄いんだから!ソラヤあの魔法壊しちゃって!」
「僕の好きにやっていいの?」
「いい!私が許す!」


 何か知らないけど許可がおりたぞ?


「ふんふん〜よっと。」
『あーあ。我は知らんぞ。』
「え!?」
『ソラヤの容赦ない攻撃は我を凍らせ動きを封じ、腹に一撃で風穴開ける程だぞ?』
「龍に対してそんな事が出来る人族がいるの?」
「『ここに。』」


 メイクとリナに指を刺された。何々?ごめん考え事して、聞いていなかった。


「んじゃ、さくっと行きますか。リナゆっくり前進して。マレット君はリナを守ってね。」
『了解だ。』
「え?あ、はい。」
『何ぞその気の抜けた返事は。我に傷つけたらブレスを魔王城にぶち込むぞ?』
「頑張ります!!」
『それで良い。』


 物騒な話が聞こえてきたけど、あれはマレット君に緊張感持たせる為の冗談だろう……きっと、たぶん大丈夫。


―ガチャ……。


「魔法防御を貫通して、相手に当てる。あの魔法内で発動出来れば……2発か。」
「ソラヤ君が何か言ってるけど。」
「集中してるから大丈夫。2発で終わるって。」
『ドキドキだな。』


―ズゥゥゥン、チュゥゥン!


「ぐぅ!ぁ!」
「MP300で貫通か、ちょっと強すぎたな。まぁいいか……次で終わり。」


―ガチャ……キラッ、ドォォーン!!


「こんなもんかな。」
「な、何をしたの?」
「あの防御魔法味方も守る為に、球になってたじゃん。」
「そうですね。それが広範囲守る効率が良いですから。」
「一点突破には弱いはず。だよね?」
「確かにソラヤ君の言う通り、広範囲がカバー出来る分、点での攻撃は得意じゃないけど。」
「そこを相手の魔法ごと、肩口に撃ち込む狙いで風魔弾で穴を開ける。守る事に自信があったか、あの魔法を解除しなかったから。聖魔弾を撃ち込んだ。」


 そしてその結果が。


 遠目でも分かる落ちて行く天使達。


「あのまま落ちて平気かな?」
『あれだけの攻撃をしといてその心配か?そもそも生きているのか?』
「街に落ちて家は大丈夫かな〜?」
「え?そっちの心配ですか?」


 リナの背に乗っている僕らは、まったり行く末を見守る。




 すると天使達が落ちて行った所から何か光るのを見た。


「ん?マレット君攻撃くるよ。前に障壁よろしく。」
「わわ!!」


 目の前に黒い壁が現れるのと同時に。


―ダダダダ!!


「ギリギリだったね〜」
『メイクは呑気だな。しかしソラヤはよく気がついたな。』
「危険察知とかのスキルのお陰だよ。」
「び、びっくりしました。」


 そして何者かがこっちに凄い速さで近づいて来る。


「どうする?撃ち落そうか?」
『我も少し戦いたいぞ。』
「それなら様子を見てみますか。会話が出来れば少し情報が欲しいですし。」


 そして近づいてくる天使は、遠距離攻撃もなく近づいてくる。


「私は大天使ミカエル様に仕えるミサである。」
「大天使ミカエル……。」


 目の前に現れた天使がミカエルの名前を出すと、名前を聞いたメイクが驚く。


「ミカエルってあの七大天使?メイク知ってるの?」
「え?知らないよ。ミカエル、ミカエル……やっぱ知らないや。」
「貴様ら!大天使ミカエル様を呼び捨てとは何事か!」
「そんなの知らないよ。別に天使を崇拝する訳でもないし。」
「そーだ、そーだ。」
「愚かな!」


 怒り出した天使は光る剣を片手に斬りかかってきた。


―ギン!


『失礼はそちらであろう?宣告もなしに進軍したと聞いたが?』


 天使の一振りを爪で弾くリナ。


「そんなもの我ら天使には不要だ。」
『何とも身勝手な。』
「あぁ会話のチャンスが……。」


 会話を試みようとする前に、こうなってしまって申し訳ない!別に悪気があった訳じゃないけど、つい言ってしまった事を反省する。


「マレット君ごめん。」
「いいですよ。頭固そうだし、生かして倒してくれれば。」
『問題ない。別に殺生が趣味ではない。』
「龍如きが私を殺さず捉えると?笑わせるな!」
『む!良いだろう……軽く遊んでやる。』


 あ、リナの機嫌が少し悪くなった。殺さずって言ってたけど大丈夫かな?少しだけ天使に同情して手をそっと合わせた。

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