少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

154話 いざ戦場へ!

 さっき知り合ったばかりだけど、真面目な顔で地図を広げたマレット君。これが魔王城周辺と町の地図か……欲しいな。


「ここが現在僕らのいる場所で、敵軍は南側から進軍してきます。」
「ここから南って言うと原初の森から?」
「方向としては原初の森か人間界側から来ているとしか。」


 む?これ、もしも人間界からだったらどうするんだ?魔界は魔王とかいるけど、人間側って勇者いるのか?
 シー達大丈夫かな?


『どうしたソラヤ?』
「あ、いや。人間界だったらと考えて、仲間達が大丈夫かなって。」
「あ、そうだね。こっちはマレット君と魔王パパが居るから、なんとかなっているけど。」
「魔王パパ…魔王…パパ……。」


 メイクがポッと言った言葉が引っかかったか、何度かその言葉を繰り返す現魔王のブラッドさん。


「あれ?なんかまずい事言っちゃった?」
「すまんな。娘が行方不明で思い出しただけだ。」
「え?行方不明?」
「あぁ……突然居なくなってな。目撃者の話では黒い渦に飲み込まれたと言っていたから、転移の魔法を覚えて遊びに行ったのだろうと。しかしもう半年も前の話だ。とっとと王位を継承して、俺は娘を探しに行きたい。」
「……。」


 この王様は何を言っているのか。後半は周りが引きつるほど本音が漏れている。


「話を遮ってすまない。マレット続けてくれ。」
「……はい。では戦闘に関してですが、なるべく目立つ戦いをしたいのです。」
「目立つ戦い?」
「はい。魔王軍にも、民にも僕が戦う姿を見せておきたいのです。」
「なんか、マレット君が凄いやる気に満ち溢れている。」
「それは民の為ですから。決してこれが一番楽だとか、最速で終わらせて部屋に帰りたいとか思ってません。これを期に魔王になりずっと椅子に座っていたい。」
「……。」


 ん?今なんか凄い事を口走ってるけど。ブラッドさんは穴の空いた天井を眺めため息をついている。


「フリージュ大丈夫か……。」


 聞いていないからセーフなのか?いや、話を聞いていたバトラスさんは大きな溜息をついている。これはどっちに対してか…ってどっちもだな。


「それでソラヤ君。ソラヤ君が使っていた武器は派手な攻撃はありますか?ありますよね?」
「派手と言うか、危ないのはありますけど。」


 横にいるメイクに視線を持っていく。それに気がついたメイク。


「ん〜あれ使うの?でもなぁ街に当てたら大惨事だよ?」
「そ、そんなにですか?」
「いや、ある程度の高くリナに飛んでもらえれば、街は大丈夫だと思う。」
「相手が下にいて、攻撃を避けたら?」
「む。そうだなぁ……。」


 遠隔で爆発できれば良いんだけど。聖魔弾は着弾して効果出るからな。


「街には結界があるんですよね?それに当てればいいのでは?」
「街に結界はありますが。あまり強い攻撃を当て続けると、この周りの土地にダメージがあるかもです。」
「それはダメ。町の人が外に行けなくなっちゃう。」
「そ、そんなですか!?」
「やってみないと分からないけど。やってみる?」
「街の人に迷惑かけて目立ちたくは……。」


 でしょうね。技の威力を知っているメイクが想像しているのは、きっと僕と同じはずだ。それがダメなら何かに当てて爆発させるしかないか?


「それならメイクが投げたナイフに当てるのは?」
「私の投げたナイフを?30メートルも飛ぶかなぁ?それなら遠くに投げられる武器にすればいけるかも。」
「うん。それなら安心だね。」


 我ながら良い事を思いついたもんだ。


『我は何をすれば良い?』
「僕ら3人乗せて、近距離の敵を薙ぎ払ってくれれば。」
『うむ。任せよ。』
「あの。1ついいですか?」
「何?マレット君。」
「メイクさんの投げたものに当たらなかった場合はどうなりますか?」


 さっきの結界に当てたダメージを気にしているのか。そりゃ変なこと言えば気になるよね。


「外す?え?ソラヤ外れるの?」
「僕に言われても。基本は命中するけど、バトラーさんには避けられたし。分からないよ。」
「あの戦いは当てるつもりで撃ってないでしょ?なら今回は当てるつもりで撃つから大丈夫だよ。」
「メイクがそう言うならちゃんと当てるよ。」
「そうですね。外したらとか失礼でしたね。ソラヤ君ごめん。」
「いいですよ。作戦たてる人なら、いろんな事態を想定するべきです。」
「はい!ではあとはありますか?」
「じゃ、1つだけ提案があるんだけど……。」








 僕らは魔王城を歩いて出る。街は少しばたついているが、魔王城の扉が開いた事で注目を浴びている。


「第三王子、ライオス・ディ・マレット様のし出陣である!」


―ッザ!!!!


 兵士達が道を作りマレット君が先頭で歩き出す。その後ろを深くフードを被る2人組が続く。


「なんだ?なんだ?」
「なぁ。あれはマレット王子だよな?兄2人は負傷したって噂は本当なのか。」
「後ろの2人組は?バイザー様とソル様か?少し小さいような。」
「マレット王子……戦えるのか?」


 周りがガヤガヤしているが、ちらほらとマレット君に対しての噂が聞こえてくる。そして小さいとかほっといてくれ。マレット君だってそんなに大きくはない…僕よりは高いけど。


 歩く事数分で魔王城前の大きい広場にたどり着いた。


「道を開け静まれ!マレット王子のお言葉だ!」


―ッザ。


 兵士が住人を誘導して、広場には十分なスペースを作る。さてここからがお芝居の開始だ。


「皆様、初めましての方もいるでしょう。ぼ…私はライオス・ディ・マレット!この様に表舞台に出る事はなく、城を守る結界に力を注いでいた。」


 演説が始まり皆んな静かに聞いている。


「だが、今は戦わねばならぬ時。空の覇者と、この友と共に敵を討とう!皆、もう少し下がるのだ。」


 あまり長くしゃべても、人は聴いてくれないからこのくらいで良い。あとは戦いで見せれば良いのだ。


「行くぞ2人共。」
「「っは!」」


 三角に大きく広がりそれぞれ手を前に出す。


「我が窮地に救いの手を…天空より舞い降りし大いなる覇者。我と共に手を取り、この手に勝利を!!」
「「勝利を!!」」


―ズズズ……ゴゴゴゴ。


 地面に三角形が現れ、それが大きな黒い渦を発生する。そこから現れたのは龍の姿になったリナである。


『我ヲ呼ブトハ、如何ナル理由カ?』
「我は魔王が子、ライオス・ディ・マレット。其方の力を借りたい!」
『ホゥ…デハ聞コウ!大イナル力。其方ハ何二使ウノダ?』
「街を……民を守る力。」
『良キ目ダ……良イダロウ。だが忘れるな、守ル裏二アル破壊ヲ。力二溺レタ時ハ、我ガ終焉ヲ与エル。』
「肝に銘じよう。では参ろうぞ!」


 皆んなが圧巻され静まり返る。そりゃ龍が街中に現れればこうなるか。じゃ、せっかく最後に静かになったので〆よう。


「皆、行ってくる!勝利をこの手に!!!」
「「「……せーの。マレット!マレット!マレット!」」」
「…え、あ。マレット!マレット!」
「「「マレット!マレット!マレット!」」」


 兵士の人に初めに掛け声をしてもらう。すると人はそれにつられる。そして街中から聞こえるマレットコールの中、リナに乗った僕らは飛び立つ。


「やりすぎだよぉ〜。」


 見えなくなってから、顔を赤くしてうずくまるマレット君。それをを知るのは2人の友だけである。

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