少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

140話 村の龍撃戦①

 急ではあったが体力温存の為、天井の無い馬車に乗って移動する。流石に全員分の馬はないみたいだ。


「ソラヤ殿、一つ確認しておきたいのだが。」
「はい。なんでしょうか?」
「初手はソラヤ殿の狙撃をお願いしたい。私は銃の性能も効果も分からんのだ。どんな事が出来るか聞いてもいいかな?」
「そうですね。」


 横にいるメイクを見る。特殊な弾丸は許可がいるのだ。


「ん?あれ使うの?」
「メイクの許可が下りれば。」
「ん〜他の人を巻き込まないのなら。」
「村の住人って避難とかしているんですかね?」
「そこは大丈夫だ。龍がいるのに残るものはいない。入れ替わりで昨日のうちに移動を済ませている。」
「なら、許可するよ。」
「ありがとう。」


 メイクの許可も貰えたので、聖魔弾と氷魔弾を含めた弾丸の説明をした。1番遠くから撃てる風魔弾は、効果的に不意打ちのアドバンテージ消しかねない事も伝える。


「爆破か氷結の効力か……脚を止められる方が前衛が近づけるか。その氷魔弾と言うのはどのくらいの規模で止められそうかね?」
「込める魔力で変わりますが、やった事があるのは全長10メートルくらいですかね。」
「それは凄いな。しかし龍にどれ程の効果があるか……全力で撃つのはどう思う?」


 全力と言われて考えてみる。前回は確かありったけ注ぎ込んでMP390くらいか。それからLvもMPも増えたし……今は2,175だと5倍くらい?


「今だとさっき言った規模の5倍程ですかね。」
「そんなにか?およそ50メートルか。」
「でもそのまま倍になるとは限りませんし。」
「うむ。なら面白そ……龍だし全力で頼もうか。」
「分かりました。」


 この騎士団長さんはワクワクした顔をして僕にお願いしてきた。正直僕も今の全力に興味はあるから、もちろん引き受けた。騎士団長さんが前後の部隊に伝令を出し、初手は僕が任された。


「見えた。あの煙の麓がドラゴンの村だ。」
「では、魔力込めます。撃つときは声かけますので、耳塞いでください。」


 木々が燃えて村の見晴らしが良くなっている。僕らが近づいている気配を感じたか、龍が顔を上げる。


『グルゥ……。』
「そのまま寝ててくれれば良かったんだがな。」
「さてとこの距離なら十分かな。行きます!」


―ズドォ……ッチュン!


『グルゥ?』
「っく。龍にはやっぱり……。」
「いえ、これからですよ。」


―バリバリ………バリィィィィィ!!!!!


「「「えぇーーー!!!」」」
「うわ……これは酷い。」
「す、凄いじゃないか!これが銃の威力か!」


 僕が撃った全力氷魔弾の結果は……。


「ソラヤ、全力も禁止ね。」
「あ、はい。」


 メイクに禁止されました。
 村に収まっていた龍を一緒に……村ごと氷漬けになった。そして撃った僕まで残り数メートルまで氷が迫っていた。


「危うく我々まで氷漬けだったな。はっはっは。」
「笑い事では無いですよ団長……。」
「試し撃ちとかしなくて良かったですね。」
「はっはっは、全くだな!」
「「「…………。」」」


 集まったパーティも何もする事なく龍を氷漬けにした。それを見た町の魔族の人達は固まって動けなくなっている。


「この後どうします?永久的に氷漬けには出来ないと思いますよ。」
「追撃するなら今だな。」


 先頭にいたい騎士団長さんが剣を軽く氷に当てる。


―コン。


「剣でこれを砕く前に、龍が動き出しそうだな。」
「それなら横に穴開けて、魔法を撃ち込むとかどうですか?」
「おぉ、出来るか?」
「やってみますよ。」


 攻撃が通るだけの穴を空ける為、龍の側面に移動。顔の前はブレスとか色々とまずいからとの事。


「んじゃ、ごくごくごく。」


 使い切ったMPを回復するのに回復薬を飲む、飲む飲…………。


「うっぷ。流石に2,000回復はキツイ。」
「ソラヤ頑張れ!」
「うん、やってくるよ。」


 今回は風魔弾に魔力を全力投入。角度は万が一の貫通したときに、周りに影響がないよう空へ。


―ズゥゥン!ガガ、ビキ!ビュゥゥ…………。


 何かが通り抜けた跡が、空を確認できる穴を開けた。


「「「えぇー……。」」」
「ん。出来たね。」
「ははは。龍すら貫いているな。ほら、魔導隊ですよ。」


 驚きも少し引かれる感じに聞こえる。そして問題なく安心している僕に、笑って魔導隊に攻撃指示を出す騎士団長さん。
 僕が打ち出した穴は、直径1メートルくらい。魔導師達が並びそれぞれの得意魔法を撃ち込んでいく。


「やっときた見せ場だ!」
「この一撃に全てをかける!」
「早くしろ!俺の番まで来なくなるだろ!」


 皆んなが皆んな張り切っている。炎の魔法は氷が溶ける可能性があるからか、何も言わなくても誰一人使っていない。口々に呪文を唱えているから、どんな魔法を使っているか分かる。風と水と闇系で、中には毒や麻痺と言った状態異常も混じっている。こういう所は流石の魔族だな〜って感心する。


 感心して見ていると、氷にヒビが入る。


「ヒビが入りましたね。そろそろ動くかもしれません。」
「後衛は下がれ!前衛出番だ!(おそらく。)準備!」


 近くにいた僕には、ボソッとおそらくとか聞こえてきた。それを聞き取っていない前衛は気合を入れ武器を構えるのだった。

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