少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

138話 しっかり者の妹?

 入口で少しもたついたけど、なんとか街に入る事が出来た。言われた通り仮面は外して。


「一泊食事付き1部屋……2部屋ですと銀貨6枚です。」


 僕とメイクを見て少し考え、部屋は別々に用意した計算をしてくれる。一泊銀貨6枚が高いか安いか分からない。一応この宿は兵士の人からオススメされた場所である。食事が美味しく、部屋に水浴びできるスペースがあるとか。水浴びに反応したメイクを見たので迷う事なくこの宿に行けた訳だけど。


「2部屋?1部屋でいいですよ。」
「あの、1部屋ですとベッドも一つになりますが?」
「別に良いですよ。」
「僕は分けてもいいと思うけど?」
「1部屋ならおいくらですか?」
「1泊食事付きの1部屋でありましたら、銀貨4枚になります。」
「なら、そっちで。」
「あの、僕は分けても……。」
「1部屋でお願いします。」
「ふふ。失礼致しました。それでは1泊食事付き、1部屋で受けたまります。」


 受付の女の人に笑われた。僕が部屋を分けてもいいと言っても、聞いてくれてないやり取りを見たからなのか。こっそり僕にしっかりしたパートナーですね。っと言ってきた女の人は笑顔だった。
 部屋に入るなりメイクはマントを取り、部屋いっぱいに羽を広げる。


「ん〜ふぅ……水浴びしてきていい?」
「どうぞ。」
「ありがとう。」


 到着して早々水浴びか、走って汗もかいたし僕も後で浴びよう。
 そしてやる事もないので、部屋を見て本棚を見つける。一冊手にとってみた。


「ん、これは……読めないな。」


 人が喋った言葉は分かるけど、文字としての言葉はやっぱり見ても分からない。どこかで勉強するべきか、そう言えばメイクは分かるのかな?


「文字?読めないよ。」
「そ、そうか。」


 水浴びから帰ってきたメイクに、この本が読めるか聞いてみた。結果は読めないとの事、教えてくれる人いなかったし。って言っていたのでそれ以上は聞かないでおいた。僕もさっと水浴びしてメイクと食事に行く。




「おい、聞いたか?」
「何をだ?」
「この町の西の村に龍が出たらしいぞ。」
「その村はどうなったんだ?」
「龍が暴れて大変だと聞いている。」
「なんか前にも北で龍を見たって話だよな。そんなにバンバン見かける種族だっけか?」
「分からねぇ。でも明日ギルドに合同依頼があるらしい。」
「龍の相手なんかに集まるかね?」


 何やら隣の席から龍の話が聞こえてきた。聞き耳スキルを使い情報を拾う。


「むぐ。龍が出たらしいよ。」
「はむはむ。ん?ジル?」
「噂だと暴れてるみたいだし、違うと思うけど。」
「そっか。助けに行く?」
「え?」
「ソラヤはそう言うのほっとけないかなって。」
「そうだね。一度話は聞きに行こう。」
「分かった。じゃ〜今日はたくさん食べて、早くお休みしよう。」


 メイクは変わったと思う。初めはビクビクしたり、僕の後ろに隠れているだけだった。それが今ではしっかりしたお姉さんみたい。
 きっかけは聖魔弾を管理するように頼まれた後。お金とか細かい部分も管理されるようになった。
 村で龍が暴れている話をしただけなのに、助けに行く?と僕の気持ちを先読みしてくる事もあるくらい。そんなメイクも……。


「ほら、早く寝ないと。」


 一つしかないかベッドに先に入り、翼を広げるメイク。


「あーうん。よいしょ。」
「おやすみ、ソラヤ。」
「おやすみメイク。」


 ……すぐにメイクの寝息が聞こえてくる。


 前に一緒に寝た時は、突き飛ばされたのが遠い昔のように感じる。僕を男として見ていないのか、理由は分からない。何度もこうして寝たりしているから慣れたのか。


「まぁいいか。僕も寝よう。」


 僕自身も女の子だからと気にしたりはしない。何というか妹のように感じる、実際はいないけど。明日はギルドに行って……龍の話を……すぅ。



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