少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

128話 魔界でも過保護。

僕はメイクと握手をした。


「ところで、メイクは何かしたい事とかある?」
「え?したい事……友達…もう叶ったかな。」
「ん?」


友達って聞こえたけど、ここはあえて聞こえないふりをする。
会って間もない僕の事をそう思ってくれるんだな。
メイクは良い子なんだなって思う。


「んーん。ソラヤは何かあるの?」
「うん。仲間がいるんだ。ここが魔界なら、人間界って言うのかな?」
「人間界…ソラヤは行っちゃうの?」
「うん。そのつもり。」
「そっか…。」


なんか落ち込んでる?
そう言えば一シーの時も、こんな感じだった。
あとでクロイに聞いたけど、別れる事を考えて行動するのは良くないって言っていた。
きっとメイクもそうなんだろう。


「メイクは人間界って興味ない?」
「え?行った事ないから…。」
「なら一緒に行こうよ。」
「え!…いいのかな?私は魔族だし。」
「大丈夫だよ。仲間に魔族の人いるし。」
「魔族の仲間がいるの?そっか……行ってみたいかも。」
「よし、なら決まりだね。」


これで良かったのか分からない。
メイクの事は何も知らないけど、何て言うか……直感で決めた。
これから話して知ればいいなと思う。
何からしようか。


―ぐぅ〜…。


「はわ!ご、ごめんなさいです。」
「お腹減ったね。まず食べ物と寝るとこの確保だな。メイクは今までどこに住んでたの?」
「私のお家くる?」
「おぉ!家があるの?僕が行ってもいいの?」
「誰もいないし、いいよ。」


家があるっていいね!
しばらくは資金を貯めておきたいと思ってたから助かる。
屋根があって、ちゃんと休める事はでかい。
別に宿代が浮くとか、そんな気持ちはこれっぽっちも無い!




無いんだけど………。




「ここ。」
「ここ?」
「うん。ここ。」
「そうか…ここか。」


案内してくれたのは、村のすぐ横にある森の中。
そこから少し歩いた先にあった湖側の……。


「洞窟?洞穴って言うのかな?」
「うん。前にドラゴンがいた場所なの!」
「ど、ドラゴンの住処って事?それって大丈夫なの?」
「うん。使っていいよって言ってくれた。」
「そうなんだ。」
「そうなの!」


自慢気に家?を自慢気に紹介するメイク。
入り口には大きな爪で引っ掻いた跡がある。
ドラゴンの爪痕…だよな、きっと。


「これがドラゴンの住処って言う証明みたい。」
「縄張りの主張的な?」
「龍の加護があるから、魔物は近づかないって。」
「おう、それは凄いね。」


さすがドラゴン。
魔物暗黙の了解と言うか、怖くて近づかないのかな。
何にせよ、安全であるなら家としては良いのかな。


「そうなの。たまたま会ったんだけど、ジルさんは優しいの。」
「そっか。優しい龍に………ジル?」
「うん、ジル。」
「名前?」
「多分。『我が名はジル…』何たらって言ってたし。」
「……。」


ドラゴンでジルなんとか。
これはもしかしなくても。


「ジルフォレス・ガーラって言っていたり?」
「それそれ。だからジル。」
「そうなんだ。」


ジルが言うのなら、この龍の加護の性能は問題ないだろう。
何と言っても、過保護なジルだし。


―ぐぅ…。


「はぅ!?」
「そっか、何か食べる物探さないとだね。」


とりあえず、安全な寝床は確保出来たわけだし。
次は食べ物か。
そう言えば前アイテムに入れたような。


「これ食べる? ボアの干し肉。」
「お肉!!」


キラキラした目をして、片方しかない翼がちょこちょこ動く。
数は2つあったので、一つをメイクにあげる。


メイクは一生懸命口を動かす、そして目を瞑り味わう。


「お肉…これが……美味しい…美味しいよぉ…。」
「もしかして食べた事無いの?」
「お肉は魔物狩らないとだし、果物と水しか食べた事無い。」
「そっか、良かったらこれもあげるよ。」
「!!うんん!それはソラヤが食べて!私はこれを…あぁ。」


涙を流し美味しそうに食べるメイク。
深くは聞かなかったけど、ギルドのおじさんでもあの反応だし。
きっと大変な思いをしてきたんだな。


当たり前に食べていたけど、もっと味わって食べないといけないな。


「いただきます。」


そうして僕も一口一口、味わって食べる。


「いただきます?」
「ご飯を食べる時の挨拶みたいなもんだよ。肉となったけどボアも、作った人にも感謝を込めるって事。」
「私もいただきます!」


そして2人とも黙って味わい続ける。
肉となったボアに対して、作ってくれたお母さんにも。
料理も魔物を捌いたり出来ないし、食事問題は大変そうだな。
食べ物はとても大切であると、僕はもう一度心の中で感謝をしつつ干し肉を噛む。

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