117話 お家に帰ろう。

「ソラヤ〜！やっと追いついたよ。」
「シーちゃん！！」
「お姉ちゃん？」


―ゴン。


「お姉ちゃん…鎧……痛い。」
「あ！ごめん！ちょっとまってね。」


急いで鎧を脱ぎ始めるシーのお姉さん。


「ちょっと！こんな所で脱ぐんじゃないわよ。」
「だってレイラン！シーちゃんが痛いって。」
「抱きつかなきゃいいじゃない。」
「え！？そ、そんな…。」
「そんな顔してもダメよ。女性が男性の前で脱ぐなんて。」


なるほど、突然目の前が暗くなったのはシーが目隠しをしたのか。
でもなんか柔らかい感触が、それに少し苦しい。


「栄理。そんな力いっぱい抑えられると痛いんだが。」
「これくらいでいいの！」


「ほほ。ローゼ。鞭は酷くないか？」
「すまない。咄嗟だったから…。」


「全然俺は構いませ…「水よ！」ぐは！目がぁぁ！！」


お父さんはお母さんが、クロイはローゼの鞭により、エッジはレイランさんに水魔法で目を攻撃された感じが…。


「シーちゃん！そんな抱きしめて！」
「こ、こ、これは！不可抗力で！」
「羨ましい！ぐぬぬ、脱がなきゃいいのよね？我が鎧よ。休息を！解除ディスアーム！」


「え？鎧が消えた？」
「すぐ装備するのがあるんだから、すぐ外せるのもあるの！」
「そんな偉そうに…それも秘技とか？」
「もちろん。それに魔力使うから、緊急でしか使わないの。」
「……秘技なんでしょ？あなた国王に怒られるわよ？」
「多分、大丈夫！これでいいよね！」


―ギュ。


「お姉ちゃん、苦しいよ〜」
「少しくらい、いいじゃない。ソラヤくんにしてるんだし。」
「……。」


ふむ。これはシーに抱きつかれている状況なのか。
だから少し柔らかくて、苦しいのか。
身長差が……いつかもっと大きくなってみせる。
僕は密かに牛乳を飲む事を誓った……この世界で牛乳あるのか？






暫くこの状況が続き、やっと解放された。


「レイランさん…目潰しは酷いっす。」
「女性を変な目で見るからだ。」
「す、すいません。」
「日頃からだな…」


「まぁまぁ。そろそろ行きませんか？」
「そうだね。このままここに居ると、夕方までに帰れないし。」
「…そうだな。」


クロイがうまく話をそらして、会話を切る。
確かにこのままここに居ると、王都に着くのが夜になる。
夜は入れなくなるので、帰るなら早めに動きたい。


「帰りも魔物が出るかもしれないんだ、ノインも鎧を着けておけ。」
「えー。でもレイラン。もう近くに何もいないよ？」
「確かに。僕らも魔物が全然出なくて、こっちに戻って来たんですよ。」


「ソラヤさん達は、どれだけ倒してたんだ？」
「どれだけ…さぁ？ローゼ分かる？」
「数は分からんな。」
「…俺の感覚だと狩り尽くした感はあります。」
「それは言い過ぎだろエッジ。この岩山は魔物が多い事で有名なんだぞ。」
「確かにいましたね……。」


エッジが少し遠い目をしている。
レイランさんが驚くくらい居たかな？ウルフの森とそう変わらない気がしたけど。


「まぁ帰ってから聞けばいいか。一応、注意して帰るぞ。」


レイランさんを先頭に、来た道を皆んなで帰る。






結局、西門前まで魔物は出てこなかった。


「そろそろ門だね。我が鎧よ。力を！装備イクイプ！」
「便利だな。しかし何故、今着るんだ？」
「あまり人に素顔を晒さない為かな。普段歩きづらくなるし。」
「そうか。理由は我々と同じか。」
「あー仮面のクランでしょ？皆んなは着けなくていいの？」


言われて僕らは、仮面を外している事を思い出した。
今は大臣がらみで色々あるし、念の為しておくとしよう。


「2人はしないの？」
「俺はもともと面割れてますし。別に普段このまま歩いても、何にもないので。」
「私は依頼の時くらいしかしない。普段からしていると、周りが警戒をするからな。」
「大きいクランだからね。ナンバー2が街中いたら緊張するもんね。」
「これと言って、何かした記憶は無いんだが。」
「またまた〜レイランの情報も入ってくるよ。」
「ノイン。その話、今度2人の時に教えてくれ。」
「いいけど。皆んなの前じゃ…」
「2人の時に頼む！」
「あーうん。また手が空いたら屋敷にお邪魔するわね。」
「あぁ。」


すっかり仲良しなレイランさんとシーのお姉さん。
今度会う約束をするって、すっかり友達な感じがする。






「あ、皆様！任務お疲れ様です！」
「僕は別に任務って訳じゃないんだけど。」
「そうなのですか？西の岩山でここ最近グッと魔物の遭遇率が下がったと報告が。」
「そうなんだ。皆んなが遠征しやすくなるなら、それでいいよ。」
「やはりソラヤさん達の仕業ですね。さすがです。」


何かやたら有難られたけど、別に皆んなの為にって戦っていた訳じゃない。


「あまりここに固まると通行の邪魔だから、僕らは行くよ。」
「は！お疲れ様でした！」


門番の彼は朝から、この時間までずっとここにいたのだろうか？


チェックを受けて、門をくぐり皆んなで屋敷に帰る途中。




「あ！！！隊長！！！！」
「げ、副隊長！シーちゃんまたね。レイランもまた〜…。」
「こら！逃げるな！B班パターン6、展開！」
「「「おう！」」」
「んな！？君達、部隊揃って何してんの！」
「それは隊長です！」
「あぁ〜……。」




この前会った副隊長が指揮の下、シーのお姉さんが鎧の集団に捕まる。
嵐のような人だったな…。


「お姉ちゃん……何してんだか。」
「貴女も大変ね。」
「まぁ一緒に暮らしている頃は。」


レイランさんとシーが、連れてかれる様子を見守りながら並ぶ。


「さ。帰りましょう。」
「そうですね。」


くるっと反転して、屋敷への道を歩いて行く。
久しぶりの屋敷か、今日はゆっくり布団で休みたいものだ。