少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

113話 振り回す人②

何故こうなってしまったのか?
私はさっきまで、屋敷で仕事をしていたような。
あぁ…日差しが滲みます。


「これはどこに向かっているのですか?」
「どこって西門よ。」
「まさか、このまま谷に行くのですか?」
「そのつもりだけど?」


考えも無しにあの谷へ行こうとするノインさん…私は魔導師なので武器はいりませんが。
一応、所持している魔力の回復薬を確認する。
十分な量はある。まぁいつも用心している私だから、出来たわけですけど。


「まずは安否の確認でしょう?ギルドに情報を貰うべきでは?」
「そんな寄り道…。」
「狩場を変えていたり、もしかしたらいるかも…。」
「さぁ!ギルドにむかうわよ!」


もしかしてこの子……すっごく素直?
それとも何かを考えていて、瞬時に判断しているとか。
9番隊とは言え、この人も王国騎士団長なのだ。
私には分からない考え方を持っているのかも知れない。


「レイラン!」
「はい、何でしょうか?」
「ギルドってどこ?」
「……着いて来て下さい。」
「ごめんなさい、地図覚えてなくて。」


そう言えばここ数月前に隊長になったばかりと、どこかの情報紙で見た気がするわ。
地図を覚えていない?この人はどうんな経緯で隊長まで上り詰めたのかしら。
掴みようのないこの人に少し興味が湧いて来た。




「ここよ。」


目的地に着いたので、馬を止める。
馬を道の端に寄せて降りようとした。


「とぅ!」


―ガシャ!!


派手な音を立てつつも、しっかり着地を成功させた。


「マスターいますか!!」


そう言って彼女はギルドに入って行く。
一国の隊長が何をしているのか…。
遅れて後に続く。


「ですから。マスターは今不在で…。」
「シーちゃんはいないの?」
「シーちゃん??」
「はいはい。あなたは少し黙ってて。」
「あ。レイランさん。」


困る受付嬢から彼女を離す。
簡単に紹介しして、ここに来た目的を話す。


ソラヤ達が帰っていない事、ギルドに顔を出していないかの確認。
ギルドマスターに用があった訳ではない。


「そういう事でしたか。最後にこちらに来たのは2週前ですね、素材を売りに来ていました。」
「そうか。ありがとう。」
「2週間前……シーちゃん。」
「そう心配するな。彼女は強いし、ソラヤさんと一緒なら大丈夫だろう。」
「そ、そうなの?」
「次行くぞ。西の門番に話を聞いて行こう。」
「う、うん!」


全身鎧で顔は見えないけど。
なんかきっとこんな顔しているんだろうなってくらい感情が外に出る人だ。
心配してそうだから、励まして次に行く。


噂好きな西の門番、最近うちのクランについてよく話を聞きにくる。
彼であれば何か有力な情報がありそうだと思い会いに行く。


「おや?第2席のレイラン様!こんなところで珍しいですね。」
「今日はちょっと人探していてるの。10番達を知らない?」
「それでしたら、西の谷に居るはずですよ。ここの門に帰って来ていませんので。」
「そう。ありがとう。」
「か、帰って来てないのか?」


帰って来ていない事にまた不安になるノインさん。


「はい。ソラヤ様達の事ですから、素材を売りに往復する時間がもったいないとか。それで戻って来てないかと。」
「そ、そうなのか?」
「ん?じゃないんですか?」


ソラヤさん達が戻ってこないのは、何か考えがあっての事。
決して何かあった訳じゃないと、全く考えもしない門番の男の子。
彼女もこれくらい肝が座っていれば良いのに。


「レイラン、でもやっぱり…。」
「ほら、何しているの?行くんでしょ?」
「え?…うん!」


きっと誰に何を言われても、彼女は納得しないであろう。


だから私は彼女と一緒にいるのだろうか?
わざわざ見に行かなくてもいいのではないか。


でも、私の口からは一緒に行くような話し方だった。
何故だか彼女を見ていると、そうした方がいいような。


なんとなくだが、やってあげたくなる。
不思議だ。


「このまま西門を抜け、谷まで走りますよ。ノインさん、大丈夫ですか?」
「ありがとう。それと……私の事はノインでいいわ。レイラン。」
「ノインは初めから呼び捨てよね…。」


別に相手を呼ぶのに、さんも呼び捨てもどっちでもいい気がするけど。


「さんとか様とか仰々しいのは、好きじゃないのよ。」
「私、ノインに様はつけないわよ?」
「む。これでも少しは偉い人なんだぞ〜」
「ノイン様!」
「うっ!ごめんなさい、調子に乗りました。」


なんだか楽しいな。
同世代の女の子ってそう言えばいない。
クランにいる子達は、私を母のような目で見ているし。
私もなんだかんだで、子供のように可愛がっている。


「もうレイラン。何がおかしいの?」
「別になんでもないわー」
「気になるー」
「ほら、喋ると危ないわよ。」


こんな会話を楽しみつつ、私は西の荒野を駆け抜ける。



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