少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

96話 王都デート?1軒目

―カラン。


扉を開けるとカランと鐘がなった。


「ん?客かい?」


奥から出てきたのは、椅子からスッと立ち上がった女性が1人。


「あんたらその仮面…。」
「あ、お邪魔します。」
「邪魔は困るが。十と十一って、仮面のクランかい?」
「はい。最近お世話になる事になりました。」
「あいつのクランにしては、珍しく礼儀がいいね。」


白髪の髪を後ろでまとめ、作業服に汚れたエプロン。
店番って言うより、鍛冶屋の職人みたいだな。


「今日は…デートか?武器屋をチョイスするとは、変わったカップルだな。」
「で、で、で!?」


―メリメリ……
―ゴクゴク。


「ふぅ…。あまりからかわないで下さい。死んじゃいます。」
「死ぬって大袈裟な。」


隣にいるシーは顔を赤くして、今も僕の腕を締め上げる。
メリメリ音がしたので、一応自然回復アップの薬を飲んでおく。


「で、何探してるんだい?大抵のものは揃うから言ってごらん。」
「シーはグローブいる?」
「ん〜これより、頑丈なのがあれば。」


そう言って、今使っているグローブを出す。


「ほう、どれどれ……手の負荷を軽減するのが目的だな。この手の武器はあまり変わらんが……。」


奥に引っ込み、ガサゴソ探し始めた。
何かを見つけたであろう、手には二つのグルーブを持っていた。


「まずこっちだな。」


―ゴトッ。


「ゴトって言ったけど重そうだね。シー持てる?」
「ん?ん〜今のよりは少し重いくらい。別に使えなくないかな。」
「ほぅ…1番頑丈なのを持ってきたが、これを扱えそうか。十一番はSTR重視か。」
「これはどんな武器なんですか?」
「手の動きを阻害しないレザー素材、インパクト時の衝撃吸収に、コレ自体が硬度が高い。」


そう言って、手の甲部分を叩く店主。


「うーん。攻撃力は上がるね。体が硬いやつや、防御自慢には使えるかもしれない無いけど。」
「なんか遅くなりそう。」
「使いどころを選ぶ武器だね。」
「ふむ。では、こちらはどうかな?」


もう一つはなんの特徴もないグローブ。


「見た目が普通って事は…魔法の品かな?」
「ほう、何故そう思う?」
「さっきのもそうだけど、方向が両極端って言うのかな?何が好みか探ってそう。だから普通じゃない何かなら魔法かと。」
「はっは。えらく賢い奴だな。君の言う通り、これはマジックアーム系。これはその代表アンチ魔法だよ。」
「アンチ?」
「簡単に言えば、魔力を殴れる。ただ自身は使わない前提な。」
「ふーん。」


えらい物出てきたな、魔法を殴れるグローブとかずるくないか?
攻撃特化のグローブにアンチ魔法のグローブ、この後シーの反応を見て何を持ってくるのか。
どちらもあまり好感触じゃない。


「って言うのは前座だ。お前さんにはコレのだな。」


そう持ってきたのは、同じくレザーグローブ。
シルバーのアクセサリーが所々に散りばめられていて、十字架が手の甲に刺繍してある。
見た目は少しカッコいい感じだ。


「十一番はおそらくSTR重視で、自分の力でなんとかする能力も高いはず。そしてこいつは見た目がカッコいい。そして……物理系天敵のゴースト種にダメージを与えられる武器だ。」
「ゴースト種?」
「実体がないお化けみたいな魔物かな?大概が物理攻撃無効が多いんだ。」
「コレのがあれば?殴られるの?」
「そー言う事。自分の弱点を減らす事も立派な武器の役割だよ。」
「そっか。うーん。」


さっきとは変わり興味ありそうに、色々と見回している。


「これは装備してみても?」
「構わないよ、試し撃ちとかしなければ。」
「だって、シー。着けてみようか。」
「うん……。」


手に取りグーパーと手を握る。装備した感じも良さそうだな。


「よし、買うよ。いくらします?」
「え?いいの?」
「いいの。これから王都で活動するんだし、そう言う武器も必要でしょう。」
「ありがとう。」
「ふふ。毎度。銀貨5枚だよ。」
「これだけの性能で安いね。」
「ものの価値もわかる子か。ますます気に入った。十番の子は何がご所望だい?」


値切る事もなく、言われた値段を安いと銀貨5枚をすぐに払う。
あの性能だ、素材もそれなりに強度もなければいけない。
騙すような人には見えない人柄を考慮すると、あの価格は安くも高くもないギリギリの値段なんだろう。


そしてやる気満々な顔をして僕に向き直る。
その目は完全に職人のそれだ。
それなら、僕の欲しい物は珍しい品だ。


「僕が扱うのはコイツだ。」


アイテムから取り出したのは、いつも使うスナイパーライフル。


「おぉ!?この世の中で銃をメインで使う奴が、まだいたのか!」
「言っておきますが、趣味や嗜好で持ってるわけじゃないですよ。」
「ははは!舐めるなよ。この使い方に使い込みを見れば分かる。ちなみに弾は何種類ある?」
「店主さん、いける口ですか…これと、この2種類です。」
「通常弾に……こりゃ、懐かしい。これをどこで?」
「羊飼いの村で武器屋の店主に。この銃もそこで買いました。」
「ほほぅ…懐かしい。」


まじまじと銃を手に取り、色んな角度から見られる。


「大体の戦い方が分かった。確かあれは……」


武器を探しに言った店主。


「仮面で顔は見えないけど、ソラヤ楽しそうだね。」
「分かる?シーには仮面で顔隠してもバレちゃうね。」
「ソラヤは分かりやすい。」
「シーもご機嫌だよね。何かあった?」
「ふふ。秘密〜。」


しばらくして店主が戻ってきた。


「出て行くタイミングが難しかった。」
「そんな普通に出てくれば。」
「私だって空気は読む。」
「そうですか。ところで何か持ってきたんですか?」
「あぁ。あんたはこれしかないって持ってきた。探りもなしだ。」


―ゴトッ。ジャラ、ドン。ジャラ、ドン。


「こっちのジャラって音のは銃弾ですね。この黒い銃は…ハンドガン?」
「その通りだ。こっちは聖魔弾の追加で、通常弾だ。火や雷の属性弾もあるんだが、聖魔弾からすると微妙だから置いてきた。そしてこれが、メイン!ボラゾン製のハンドガン!」


ドンって効果音が出てきそうな紹介。
ボラゾン?なんか聞いた事もない名前だが、凄いものなんだろうか…。


自信満々に出した店主。
仮面で顔を隠しているが、はてなが止まらない僕とシー。


しばらくの静寂。
僕とシーはその行方を黙って見守ることしかできない。



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