少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

86話 作戦会議①

屋敷の扉を開けると、目の前に二階に上がる階段がある。
ここが玄関なのか、1クランの屋敷にしては広くないか?


「ほぅ。中はこの様な造りでしたか。広い…。」
「やはり普通じゃないな。おの方は一体何者なのか。」
「やっぱり?僕も普通より広すぎると思ってるんだ。」


僕達は周りをキョロキョロ見ながら屋敷に入る。
クロイやローゼも僕と同じ印象なんだろう。


「そんな珍しいものはないぞ?何か見つけたか?」
「この屋敷って僕のイメージより、少し広く感じるんだ。」
「そうか?屋敷を持つのもここが初めてだからな。広いとか狭いとかよく分からん。」
「そうなんだ。」
「まぁ王城に行ったことあるが、それよりは狭いぞ?」
「そりゃ比べるところが違うでしょ。」


辺りをキョロキョロ見ていた僕らに、おじさんが声をかけてきた。
クランになり始めての屋敷みたいで、ここがどの程度の屋敷かはよく分からないみたいだ。


階段を上らず、その脇の通路を抜けて1つの部屋に入った。


「どこでも好きな所に座ってくれ。」
「あー、うん。じゃこっち側座ろうか。」


ながーいテーブルで向かい合う様に、椅子が並べてある部屋に来た。
こんな風景は、どこぞの貴族の食事をする部屋しか見たことない。
どこでも座っていいと言われたので、とりあえず向かって右側、席の真ん中に僕は座る。
その横にシー、ナイトという順番で座る。
僕の反対にクロイとローゼが座る。


「じゃ、俺はここに。エッジは俺の横に座れ。」
「はい。」


おじさんが僕の向かいに座り、エッジもその横に座らせる。
レイランさんは入り口で、着いてきていたヤヤさんに何かを伝えると、おじさんの横に座った。


「さてと………何から話せばいいか。」
「門番さんから聞いた大臣の件は、手紙を今ヤヤに頼んでます。その話は後ほどしましょう。」
「そうだな。今後については手紙次第だが、その前にソラヤに聞きたい事があるんだが。」
「どんな事ですか?」
「門番が言っていた、例の称号3つは本当なのか?」
「例の称号?『天空の覇者』とかかな?」
「あぁ。確かあれは『ハーピー・イーグル』討伐条件だったと思うが。」
「倒したね。ギルドカード見る?」
「見せて貰えるなら。」


別に変なこと書いてないし、もともと身分証明するものだし。
一応少しだけ確認してから渡す。


それを渡すと、3人で覗き込む様に見ていた。


「「「え?」」」
「門番の人と同じ反応だね。何か変なのそれ?」
「いや、ギルドカードは変じゃ無いんだが…。」
「さすが師匠っすね。驚きましたよ。」
「ソラヤさん、これを誰かに見せた事は?」
「ん?カードを作った時に、ローゼのお兄さんに見せたよ?」
「お兄さんですか?」
「私の兄は『羊飼いの村』でギルドマスターをしています。」
「ギルドマスターが見ているのですか…。」


驚いた様子の3人。
レイランさんが誰かに見せたか聞かれたので、ローゼのお兄さんと答えた。
そこにローゼがギルドマスターだと言ってくれた。
僕もそう答えれば良かったか?まぁいいか。


「1つだけ言うのであれば、もっと情報は隠すべきです。」
「そうなの?別に見られて困るものでも無いけど。」
「ソラヤさんはそうでも、周りがほっときませんよ?この称号にしろ、スキルにしろです。」
「称号あればアピールになるし、スキルも信頼に繋がるって言われたんだけど。」
「限度がありますよ。『天空の覇者』に関しては、Lv20で倒せる様な相手ではありません。それにスキルもこれだけ数があり、一つ一つ高Lvだと信頼を通り越して恐ろしいくらいです。」


ふむ。確かにレイランさんのいう通りかも知れない。
理解出来ない存在こそ怖いものは無い。
ステータスとか、女神様と龍神のスキル隠すだけじゃダメだったか。


「うーん。他の人とパーティ組む気ないから、全部隠せば良かったか。」
「それをしている人もいますが、信頼を得るにはある程度は記載が必要です。」
「ギルドカードって複雑なんですね。」
「いえ、私は人が複雑と考えます。」
「あー…。」


なんかあったのか…レイランさんの答えが妙に説得力がある気がした。


―コンコン。


「入れ。」
「失礼します。手紙をお持ちしました。」
「レイラン。」
「こういうのはマスターが始めに読むものなんですが?」
「順番なんかどうでもいいだろう。結局レイランが読んで俺に説明するんだからな。」


ノックをして入ってきたのは、手紙を持ってきたヤヤさん。
手紙を受け取ったおじさんは、そのままレイランさんに渡す。
最終的に読んで説明が必要とか、おじさんがクランの代表なんじゃ?


細かい事を突っ込んでもしょうがないので、僕らは黙ってレイランさんが手紙を読み終えるのを待つ。


「いくつか質問、いいかしら?」
「はい、どうぞ。」
「王都の大臣がどういう人か知っていますか?」
「ん〜横暴な人?」
「…それは前々から思ってましたか?」
「前々?その時大臣だぞって、名乗ったから知っただけですよ。」
「そうですか。そうなると…。」


再び手紙に目を落とすレイランさん。


「道を塞ぎ行く手を妨害したと言ってますが?」
「あー僕らが端に避けたのに、避ける事もしないで、真ん中を通ろうとしたやつか。」


「……エッジ。」
「はい?」
「何故にソラヤ達と戦闘したのだ?」
「え?無礼がどうのって、手を弾かれ剣を折られたとか。大臣がやれって言うから。」
「あなたは、やれと言われたらやるんですか?」
「始めての護衛だし、依頼者の命令は基本聞けばいいって団長が。」


キ!
ものすごい目で睨むレイランさんを、全力で目をそらすおじさん。


「はぁ…どいつもこいつも。」
「ま、まぁ無事だったしいいだろう。」
「相手がソラヤさんで良かっただけです。エッジと同格くらいなら殺されていたかも知れません。」
「まぁ、ソラヤは殺しを…。」
「ソラヤさんが手加減をしても勝てるくらい、エッジが弱くて良かったわ。」
「「……。」」


何が良かったのか、微妙な顔をするおじさんとエッジ。




「さて、手紙は目は通しました。結論から言いましょう。」
「うむ。頼む。」
「おじさん偉そうだね…。」
「まぁ団長だし?」
「ん!手紙には大臣の戯言…あ、ん!世迷言……話の真意を教えて欲しいと言う事です。」


戯言とか言われてるあたり、完全に面倒な匂いしかしない。


「その話を私とマスターで、王城に来てくださいとの事。」
「えー王様に会わないとか。」
「遣いを出すから、それまで家にいなければなりません。」
「せっかくソラヤ達が来たのに、じっとここで待つのか?」
「この件が片付くまでです。もちろん皆さまも、顔がバレている可能性があるのでダメですよ。」
「え…それっていつまで?」
「王は忙しい身ですからね。この件で予定を早めても2週間くらいでしょうか。」


2週間何もしないだと!?
それはつまらない。


「なら僕らは王都の外へ…。」
「我々といたから、特に気にされる事なく入れたんですよ?」
「そう言えば、候補生って話でしたっけ。」
「あ、そう言えば。咄嗟とは言え、候補生と言ってすいません。」
「あの場で根掘り聞かれるよりはいいですよ。いい切り返しでしたよ。」


そう王都に入るのも、おじさんやレイランさんが、居たからこその信頼もあるだろう。
もし僕らが単独で出るとなると…遠征から帰って来てまたすぐ出掛けるのも不自然だろうか。


「ねぇ。ソラヤ。」
「ん?どうしたのシー?」
「顔がバレなきゃいいの?」
「簡単に言うとね。」
「誰に?」
「誰って大臣とか探している人に?」
「そうか、そうなんだ。うーん。」


考え込むシーだったが、何かを思いついたようだ。


「そうか!いい事を思いついた。」


今までつまらなそうにしていたシーが、何かを企む楽しそうな顔になっている。
さて、何を思いついたのかな?



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