少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

77話 勝てる糸口は?

聖魔弾の爆発で吹き飛んでいったおじさん。
土煙が晴れていくと、むくりとおきアガット見せた。


「面白くなってきたなぁ〜」
「殺し合いを楽しむのは、やめて欲しいのですが。」
「そうは言ってもな。こんだけ何にも出来ないのは勇者以来だ。」
「おじさん勇者と戦った事あるの?」
「あぁ。勇者がちょうど坊主くらいの時にな。」
「おじさん幾つなの?」
「27だ。」
「………さぁ、第二ラウンド始めようか。」
「歳聞いといて触れないのか、まぁいいいか。」


戦いを楽しむおじさんは、ニヤリと笑い剣を担ぐ。
聖魔弾の爆発によって、上半身裸で剣を担ぐ姿は中々に暑苦しい。
体が弛んでいる箇所が1つもないくらい筋肉が……。


―ピク、ピク。


今なんか動いたように見えた。
肌も黒いし、マッチョだし、笑うとシワができるし、本当に27歳なのだろうか。
なんか勇者と戦ったとか言っているし、この人やっぱり偉い人なのか?


「セブンは最後楽しんだのかねぇ…。」
「最後ねぇ…。」


後ろの馬車をちらっと見る。
シーが手を振ってたので、振り返した。
エッジは出てこないか。


「ふん。彼女が見てんだ、少しはいいとこ見せないとな坊主。」
「ん?彼女?シーは仲間だよ?」
「あれがねぇ……俺が言うのもなんだが、動きは早いのに鈍いんだな。」
「鈍い?そうかな?あんまり接近戦しないし、こんなもんじゃないかな?」
「お前の女は苦労するな。」
「???」


おじさんとちょっと話したけど、根が悪い人でもなさそう。
少し誤解してるみたいだし、なんとか大人しくさせられないかな。


「んじゃ、そろそろ行くぜ!」


振り下ろした剣を地面すれすれで止めて、剣を横に薙ぎ払うのとかどんな筋力してんだか。
その後も右から左から剣を振り続けるおじさん。
上から振り落として地面を叩き割る事もしていた。


そうか。この人VITだけじゃなく、STRにも振っているのか。
見た感じエッジよりはLvが高いだろうから、30〜40くらいか。
そうならどっちのステータスも100は超えているだろう。


あの大剣を力任せに振り続ける筋力。
攻撃をもろともしない防御力。


聖魔弾に爆風で吹き飛ぶが、ノーダメージなのも頷ける。




「困ったな。手持ちのカードじゃ倒せなさそう。」
「がはは!どうした坊主!さっきの勢いはどこへ行った!」


クロイが馬車に戻ったのは見ている。
僕とおじさんの会話は聞いているから、エッジに事情を聞いているんだと思う。


そうなると僕にできることは少ない。
銃も効かないんじゃ、弾の無駄遣い。
銃をしまい刀を再び装備する。


銃弾を弾くし、きっと刀も効かないんだろうな…。


―ギィィン!


「そんな細い腕じゃ傷1つつかんぞ!」
「普通は切れるんだけど?」


刀の切れ味は魔物で実証済み。
足りないものがあるとすれば、筋力であるSTR。
所持アイテム量を増やす目的しか上げてないし、クリティカル出ても突破は出来ない。


「う〜ん。困った。」
「涼しい顔して言われてもなぁ!!」


―ギィィン、チャキ、ギィィィ!


「っほ、それ。せい!」
「ぐ!おっと。いで!」


鍔迫り合いから、力を受け取り流し左腕に刀で当てて…思いっきり引いた。
正直言うと、切り落とせるくらいの力入れたんだけど。


「俺に傷つける奴がいたとはな。」
「こっちは腕切り落とすつもりで斬ったんだけど。」
「おいおい、物騒なこと言う坊主だな。」
「そっちこそ殺す気で来てるじゃん。」
「ん?あーそう言えばそんな事あったな。」


結果、左腕に切り傷。
木の枝に引っかかって擦りむいたレベル。
剣は悪くない、なのに切れない…けど傷は作くのは分かった。


石は壁に当たったみたいに砕けた。
銃弾や刀は弾くし、押し当てて引いても擦り傷。
あと試していない事は………。


僕は刀を鞘に収めて突っ込む。


「刀はやめたか?馬鹿正直に真っ直ぐとは、ふぅん!!」


振り落とされる大剣を刀を使い受け流す。
地面に減り込む大剣。
狙うは一点!剣を持つその手!


―ガツン!


「ぐぅ!」
「ガツン?」


おじさんは剣を離さず、剣を支点に蹴りをしてくる。
僕は距離を取り、その蹴りを難なく回避する。


少し距離を取ったのは疑問が出たからでもある。
攻撃をしてくぐもった声も気になるけど、1番は鞘に収めて叩いた音。
当たった感触が、鉄と木が当たった音では無かった。


「まるで木と木が打ち合った音……。」
「ぬ!」
「……銃弾や刀は鉄だから、鉄と鉄。」
「ぬ!!」
「…おじさん、隠し事苦手でしょ?」
「ぬ!……ぬ?」


音の違いに、おじさんの反応を見ると…。
VITが高くなくて、スキルの類か?


「まだ確信するにはカードが足りないか…。」
「ボソボソ何言っている?来ないならこちらから行くぞ!」


 ―ゴォォン!ドゴォン!!


「だから、そんな大振り当たらないよ。それに手首痛いんでしょ?無理はしない方がいいと思うけど?」
「は!全然余裕だぜ。」
「それなら、同じ箇所に当てたらどうかな?」


僕はわざと同じ場所に攻撃するよう口に出す。
右の手首、剣道で言う小手狙い。


―ビュン!


「っく!」


右手を離して攻撃を避けるおじさん。
宣言してるから避けるのは当然なんだけど、やっぱりさっきの小手は効いている。
そして狙いのもう一つ…。


「言われてれば避けるくらいたやす、っぐふ!?」
「……痛い。」
「っく。俺に1発入れるとはやるじゃねえか。」


これはダメだ。
僕が何をしたか言うと、単純に顔面にグーパンチ。
初めて人を殴ったけど、殴った方も痛いって何かで見たような。
でも、どのバトル漫画もバシバシ殴ってるのにおかしい。


きっと相手のVITが高いか、僕のSTRが低いのか。
いや、確かシーが痛いけどってグローブ買ったんだっけか。
唯一の勝てる糸口を見つけたけど、僕には出来ない戦法だ。


「でも分かった。おじさん自身か周りの物質変えられるんでしょう?」
「な、何故知っている!……あ。」
「本当に素直な人だね。」


理屈は分からないけど。
今の言い方なら何かのスキルで、鉄に変えてる事は分かった。


条件はきっと触れる直前か、当たった時に変わるんだと。
それなら同じ素材ならいけるのかと、殴ってみたんだけど…。
VIT高かった〜!蹴りで足怪我したら嫌だし。


相手のスキルのカラクリを暴いたけど、結局倒すには色々と足りない。
さて、こうなるとクロイを待つしかないな。
僕は回避に専念する事を決めたのであった。



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