少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜
71話 とある戦士の場合。
俺は、今何をしているんだ?
手が…重たい。刀を持っているからか?
息も苦しい…それはきっとこの仮面のせいだ。
かっこいいからって理由で、任務中は着けるように言われている。
目の前の景色が少しずつ掠れていく、だがこんな所で死ねない!
俺は自分の限界を超えて、刀を振り続けている。
「お兄さん大丈夫?そろそろ1時間経つけど、止める?」
声をかけてきたこの子供は、さっきから俺の太刀をずっと回避している。
一撃目は受け止められた。
正直言って、舐めてかかった所があるからしょうがない。
そう思って、2撃目以降は少し早く動いた。
今度は受けずに避けた。何故だ?
そもそもどうしてこんな状況になったのか。
突然依頼主に呼ばれ、来てみれば殺せと言ったけど、正直言って気が進まない。
見た感じきの良さそうな人達だし、どちらかと言うと依頼主の方が悪く見える。
要人警護って初めてだから、勝手が分からず、とりあえず言われた事をやっているけど。
それは良いとしてだ。
無効化しようと刀を振るっているが、何だこれ?
当たる気がしない。
こっちは刀であっちは銃。
あれは依頼主も持っていたが、あれは人を殺す為の武器だ。
依頼主が殺せと命じた時、この子からもの凄い殺気を感じた。
俺がこうして休みなく刀を振るのには、相手に攻撃させないって意味もある。
1発でも貰えば俺は勝てなくなる。
しかも距離を取られれば、勝機はゼロだと思ってもいいだろう。
それくらいこの子は強いと肌で感じた。
「く…なぜ、当たらない?俺は…弱い……のか。」
「そんな事はないですよ。かなり刀を使いこなしてますし。休みなく攻撃するので反撃も出来ない。戦い慣れている証拠です。」
「はは、君に言われると、複雑だよ。」
何となくだが、俺の剣を避ける事を楽しんでいるような。
ギリギリのラインで自分を高めている。そんな気がする。
くそ、戦いに集中しなきゃいけないのに。
「お兄さん、剣が鈍ってきたね。もう疲れたか…違う事考えているのかな?」
「は!そ、そんな事はない!」
心を読まれたのか!?いや、この子の動きはそれとは違う。
俺の剣が鈍る…確かに1時間くらい打ち込めば多少はあるかもだが、子供の体力に負けるわけにはいかない。
意地と根性で立っている感はある。
違う事を考えているのかと言われドキッとした。
頭の中はいろんな事を考えすぎて、俺にすらもう分からなくなっている。
俺は何故ここにいる?
俺は何故この子を殺そうとする?
俺は何故刀を振るっている?
「迷いが見えるね。これ以上は特訓にもならないね。」
「特訓!?何を…」
目の前から少年が消える。
右左を見ていないって…
―ドコッ!
「ぐふぅ!」
背後から蹴りを貰った。全く動きが見えなかった。
体制を崩して前屈みになりつつ、背後にいるであろう少年目掛け刀を振る。
無意識で振ったせいで、つい加減をミスった。
少年の首目掛けて、俺の刀は吸い込まれる……
「さっきよりいいけど、見え見えだよ。」
―ガキン!
渾身の一撃も銃によって防がれる。
しかもただ防いだだけじゃ無い…その銃は俺の顔を捉えていた。
「勉強になりました。ありがとう。」
「はっ。敵に御礼なんて、変わった子供だ……。」
―ドォォン!!
俺が最後に聞こえたのは、銃の発砲音であろう腹に響く重低音だった。
♢
俺は『仮面の騎士団』に所属する一人の戦士。
分配で揉めて、パーティを抜け一人魔物を狩っていた。
今のマスターは宿の酒場で知り合った。
ギルドで仕事もあるし、どうかと。
「組織でやっているから、分配はしっかりしてるぞ。」
「揉めたりしないんですか?」
「あぁ。うちの金銭管理してるのがこえーからな!」
「マスター……それは誰の事ですか?」
「のぁ!!いきなり現れるなよ、ビビるだろう。」
結構前から後ろに近づいているのは見えていた。
口に手を当てて、いたずらしたそうに微笑むから、俺は何も言わず見守っていた。
「ん。マスターの話は別にして、現状6人で稼働しております。給金は働き度合いにより、1日銀貨1枚から、住む場所は提供してます。」
「住むとこ貰えて、銀貨1枚からって結構破格だよな?」
「それ以上に入ってくるからいいんです。なので強い方は大歓迎です。」
「ははは。そう言う事だ!強いやつなら、要人警護とか出来るし助かる!うちは武闘派と知能派が半々で仕事が舞わんないんだわ。」
主な仕事は、緊急の魔物退治に要人警護、計算や管理などの代行。
俺は今まで冒険者で体を動かしてきたから、知能はあんまり自信がない。
だけど、誰かを守ったり戦うのは得意だ。
それによく分からないけど、この人は腹を割って話すタイプだ。
色々ぶっちゃけられるし、何より楽しそうだ。
「よく分からないけど、面白そうだな。」
「おっしゃ!一人確保だ!だから酒場はいいって言ったんだ。」
「ただ飲みたいだけでは?この様な方が毎日のようにいるとは思えません。」
「はは、俺は運がいい。そしてお前も運がいい!よし飲もう!」
「はぁ、仕方がないですね。」
「2人ともよろしく頼むぜ。」
………。
♢
なぜ、こんな事を思い出す?
あーこれが走馬灯ってやつなのか?
あいつらと始めて会ったのが、遠い昔の様だぜ。
うっすら目を開けると満天の星、ここは天国か…凄くきれいなところなんだな。
苦しかった呼吸も、今はすっきりしたものになっている。
あ〜鼻に入るこの美味そうな匂い。
ぐるぅ…。
「はは、死んでも腹は減るんだな。」
「およ?起きた?」
「ここは…?君は…天使なのか?」
「ここはどこか分からないよ。どこかの道。でもって私は、悪魔だよ。」
「そうか……これだけ綺麗な景色に、綺麗な女性がいたんで天国かと思ったが。地獄だったのか。」
「ん?寝ぼけてるの?ここは天国でも地獄でも無いよ?おーい、ソラヤー。」
ソラヤ?どこかで聞いた名だな…どこだったか?
呼ばれた人がこちらに来る。
「あー起きました?ご飯できてますが、食べます?」
「え?あ、これはどう言う状況なのだ?」
「まぁ〜食べながら話しますよ。」
俺は訳も分からず、さっきまで殺し合いをしていた人の食事に誘われる。
よくよく周りをみれば、この草原も見たことある様な…。
ここの空はこんなにも綺麗だったのか……。
俺は改めてこの世界に触れた。そんな事を思わずにはいられない程星が綺麗だった。
手が…重たい。刀を持っているからか?
息も苦しい…それはきっとこの仮面のせいだ。
かっこいいからって理由で、任務中は着けるように言われている。
目の前の景色が少しずつ掠れていく、だがこんな所で死ねない!
俺は自分の限界を超えて、刀を振り続けている。
「お兄さん大丈夫?そろそろ1時間経つけど、止める?」
声をかけてきたこの子供は、さっきから俺の太刀をずっと回避している。
一撃目は受け止められた。
正直言って、舐めてかかった所があるからしょうがない。
そう思って、2撃目以降は少し早く動いた。
今度は受けずに避けた。何故だ?
そもそもどうしてこんな状況になったのか。
突然依頼主に呼ばれ、来てみれば殺せと言ったけど、正直言って気が進まない。
見た感じきの良さそうな人達だし、どちらかと言うと依頼主の方が悪く見える。
要人警護って初めてだから、勝手が分からず、とりあえず言われた事をやっているけど。
それは良いとしてだ。
無効化しようと刀を振るっているが、何だこれ?
当たる気がしない。
こっちは刀であっちは銃。
あれは依頼主も持っていたが、あれは人を殺す為の武器だ。
依頼主が殺せと命じた時、この子からもの凄い殺気を感じた。
俺がこうして休みなく刀を振るのには、相手に攻撃させないって意味もある。
1発でも貰えば俺は勝てなくなる。
しかも距離を取られれば、勝機はゼロだと思ってもいいだろう。
それくらいこの子は強いと肌で感じた。
「く…なぜ、当たらない?俺は…弱い……のか。」
「そんな事はないですよ。かなり刀を使いこなしてますし。休みなく攻撃するので反撃も出来ない。戦い慣れている証拠です。」
「はは、君に言われると、複雑だよ。」
何となくだが、俺の剣を避ける事を楽しんでいるような。
ギリギリのラインで自分を高めている。そんな気がする。
くそ、戦いに集中しなきゃいけないのに。
「お兄さん、剣が鈍ってきたね。もう疲れたか…違う事考えているのかな?」
「は!そ、そんな事はない!」
心を読まれたのか!?いや、この子の動きはそれとは違う。
俺の剣が鈍る…確かに1時間くらい打ち込めば多少はあるかもだが、子供の体力に負けるわけにはいかない。
意地と根性で立っている感はある。
違う事を考えているのかと言われドキッとした。
頭の中はいろんな事を考えすぎて、俺にすらもう分からなくなっている。
俺は何故ここにいる?
俺は何故この子を殺そうとする?
俺は何故刀を振るっている?
「迷いが見えるね。これ以上は特訓にもならないね。」
「特訓!?何を…」
目の前から少年が消える。
右左を見ていないって…
―ドコッ!
「ぐふぅ!」
背後から蹴りを貰った。全く動きが見えなかった。
体制を崩して前屈みになりつつ、背後にいるであろう少年目掛け刀を振る。
無意識で振ったせいで、つい加減をミスった。
少年の首目掛けて、俺の刀は吸い込まれる……
「さっきよりいいけど、見え見えだよ。」
―ガキン!
渾身の一撃も銃によって防がれる。
しかもただ防いだだけじゃ無い…その銃は俺の顔を捉えていた。
「勉強になりました。ありがとう。」
「はっ。敵に御礼なんて、変わった子供だ……。」
―ドォォン!!
俺が最後に聞こえたのは、銃の発砲音であろう腹に響く重低音だった。
♢
俺は『仮面の騎士団』に所属する一人の戦士。
分配で揉めて、パーティを抜け一人魔物を狩っていた。
今のマスターは宿の酒場で知り合った。
ギルドで仕事もあるし、どうかと。
「組織でやっているから、分配はしっかりしてるぞ。」
「揉めたりしないんですか?」
「あぁ。うちの金銭管理してるのがこえーからな!」
「マスター……それは誰の事ですか?」
「のぁ!!いきなり現れるなよ、ビビるだろう。」
結構前から後ろに近づいているのは見えていた。
口に手を当てて、いたずらしたそうに微笑むから、俺は何も言わず見守っていた。
「ん。マスターの話は別にして、現状6人で稼働しております。給金は働き度合いにより、1日銀貨1枚から、住む場所は提供してます。」
「住むとこ貰えて、銀貨1枚からって結構破格だよな?」
「それ以上に入ってくるからいいんです。なので強い方は大歓迎です。」
「ははは。そう言う事だ!強いやつなら、要人警護とか出来るし助かる!うちは武闘派と知能派が半々で仕事が舞わんないんだわ。」
主な仕事は、緊急の魔物退治に要人警護、計算や管理などの代行。
俺は今まで冒険者で体を動かしてきたから、知能はあんまり自信がない。
だけど、誰かを守ったり戦うのは得意だ。
それによく分からないけど、この人は腹を割って話すタイプだ。
色々ぶっちゃけられるし、何より楽しそうだ。
「よく分からないけど、面白そうだな。」
「おっしゃ!一人確保だ!だから酒場はいいって言ったんだ。」
「ただ飲みたいだけでは?この様な方が毎日のようにいるとは思えません。」
「はは、俺は運がいい。そしてお前も運がいい!よし飲もう!」
「はぁ、仕方がないですね。」
「2人ともよろしく頼むぜ。」
………。
♢
なぜ、こんな事を思い出す?
あーこれが走馬灯ってやつなのか?
あいつらと始めて会ったのが、遠い昔の様だぜ。
うっすら目を開けると満天の星、ここは天国か…凄くきれいなところなんだな。
苦しかった呼吸も、今はすっきりしたものになっている。
あ〜鼻に入るこの美味そうな匂い。
ぐるぅ…。
「はは、死んでも腹は減るんだな。」
「およ?起きた?」
「ここは…?君は…天使なのか?」
「ここはどこか分からないよ。どこかの道。でもって私は、悪魔だよ。」
「そうか……これだけ綺麗な景色に、綺麗な女性がいたんで天国かと思ったが。地獄だったのか。」
「ん?寝ぼけてるの?ここは天国でも地獄でも無いよ?おーい、ソラヤー。」
ソラヤ?どこかで聞いた名だな…どこだったか?
呼ばれた人がこちらに来る。
「あー起きました?ご飯できてますが、食べます?」
「え?あ、これはどう言う状況なのだ?」
「まぁ〜食べながら話しますよ。」
俺は訳も分からず、さっきまで殺し合いをしていた人の食事に誘われる。
よくよく周りをみれば、この草原も見たことある様な…。
ここの空はこんなにも綺麗だったのか……。
俺は改めてこの世界に触れた。そんな事を思わずにはいられない程星が綺麗だった。
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